『サントメール ある被告』(原題:Saint Omer)
監督:アリス・ディオップ
出演:カイジ・カガメ,グスラジ・マランダ,ヴァレリー・ドレヴィル,オレリア・プティ,
グザヴィエ・マリー,ロベール・カンタレラ,サリマタ・カマテ,トマ・ドゥ・プルクエリ他
肥後橋で飲み会の前に、なんばパークスシネマで3本ハシゴ。
セネガル系フランス人の女性監督アリス・ディオップの長編デビュー作。
初監督作品でありながら第79回ヴェネチア映画祭銀獅子賞(審査員大賞)を受賞。
2016年に実際にあった事件とその裁判をモチーフにしたフィクションです。
サントメールとは、ドーバー海峡を渡ればイギリスというフランスの北部も北部、
パ=ド=カレー県に属する町なのだそうです。
ドーバー海峡って、フランスではカレー海峡というのですね。知らなんだ。
若い母親が不倫相手との間に生まれた娘を殺した罪に問われている事件について
次の著作で取り上げようと、裁判を傍聴することに。
被告のロランス・コリーは24歳の大学生。
セネガルからフランスに留学し、57歳の既婚男性リュック・デュモンテと恋仲に。
その後、妊娠、出産。生後15カ月だった娘リリーを浜辺に置き去りにし、
潮に流されたリリーは亡くなってしまった。
ロランスはその事実を認めてはいるものの、なぜこんなことになったのかわからないと述べる。
裁判を通じてその理由を知りたいと、まるで他人事のよう。
一方のリュックも同様に、わからないと言うばかりで……。
法廷劇だと思っていたので、まず主人公がロランスではなくラマであることに戸惑います。
大学での仕事も安定していて、作家としても人気がある。
夫のアドリアンは優しくて理解のある男性で、夫婦仲にも問題なし。
なのになぜラマがこんなにも不安げなのかと思ったら、実母との関係がいびつらしい。
身体的に虐待を受けていたわけではないが、母親に無視されていたラマ。
母親の視界には自分がいないかのような扱いを受けていながら、
成績優秀でいることを求められていたのか、実際ラマは優秀。
実家に行けば、ラマの写真が誇らしげに飾られていて、複雑な心境にならざるを得ません。
ロランスの境遇に自分と似たものを感じて、この裁判を傍聴しはじめたラマは、
その場にいたロランスの母親とも知り合い、平静ではいられなくなります。
面白い題材のはずなのですが、睡魔に襲われたところがかなりあります。
これは言っちゃいけないことかと思うけど、私はロランスに魅力を感じられません。
田舎で勉強を頑張って都会に出てきた美人でもない姉ちゃんが都会で不倫。
相手もホンマに50代なのかと思うようなしょぼくれた爺さんだし。
申し訳なくも「見た目」で引いてしまって、話にのめり込むことができませんでした。
いちばん驚いたのは裁判そのもののおこなわれ方。
陪審員じゃなくて参審員というのですね。
そして裁判は裁判長自らが進行して、被告や証人にすべて聴く。
裁判長が尋ねるのは事実そのもののみではなくて、裁判長の思いも語られるから、
「どういうつもりやねん」みたいな責めの言葉も含まれていたりします。
移民の問題は私には理解しがたい、共感しづらい部分だらけです。