『CLOSE/クロース』(原題:Close)
監督:ルーカス・ドン
出演:エデン・ダンブリン,グスタフ・ドゥ・ヴァール,エミリー・ドゥケンヌ,レア・ドリュッケール,
イゴール・ファン・デッセル,ケヴィン・ヤンセンス,イゴール・ファン・デッセル他
シネ・リーブル梅田にて、3本ハシゴの2本目。
予告編を観てから気になっていたベルギー・オランダ/フランス作品。
ルーカス・ドン監督による第75回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作とのこと。
カンヌってそもそも小難しいイメージがありますから、
そこに惹かれて観に行くことは私にはないのですけれど、これはよかった。
レオとレミは幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた大親友。
家族ぐるみのつきあいで、友だちというよりは兄弟に近い仲。
中学校に入学したふたりは仲が良すぎるのを同級生から指摘され、
まるでつきあっている恋人同士のようだとからかわれる。
そう言われてもまるで気にしないレミだったが、レオは次第に距離を置きはじめ、
ほかの同級生たちと話し込んだり、アイスホッケーチームに加入したり。
ふたりきりのときはこれまでと変わらぬように努めるものの、人前ではレミを避ける。
ある朝の登校時、レオはいつもより早く出かけてレミに待ちぼうけを食らわせる。
避けられていることを知ったレミはレオに怒り、取っ組み合いの喧嘩に。
やがて、毎晩レミの家に泊まりに行って同じベッドで寝ていたのもやめるようになるのだが……。
レオ役のエデン・ダンブリンとレミ役のグスタフ・ドゥ・ヴァールは
いずれも本作が映画デビュー作らしいですが、透明感が凄い。
当たり前のように一緒に過ごしてきたし、それを意識したこともなかったのに、
同級生たちから好奇の目で見られて耐えられないレオ。
レミのことは大好きなのに、つれない態度を取ってしまいます。
『怪物』のふたりに少し似ているようにも思いますが、
『怪物』のふたりがお互いに恋愛感情を抱いていることを匂わせていたのに対して、
本作のレオとレミがどうだったのかはわかりません。
でも、お互いをかけがえのない存在だと思っていたのは確か。
レミが自殺して、自分のせいだと思い詰めるレオ。でもそれを口に出すことはできません。
悔いる気持ちのみなのかと思われたけど、レミが何か残したかどうかを聞くシーンでは、
自分が責められる証拠となるものを残したかどうか確認したかったように見えなくもない。
レミのことを理解しているのは自分だけ。
自分が彼を死に追いやったのに、誰かがレミのことを偲ぶと、わかっていないくせにと腹が立つ。
台詞にはないレオの気持ちが十二分以上に感じられる表情がつらい。
息子がなぜ亡くなったのかわからない両親が息子を想うシーンも悲しすぎます。
時にまかせて心が癒えるときを待っているのに、息子を思い出す事柄がありすぎる。
意を決してレミの母親に打ち明けに行くことにしたレオ。
一瞬、許せないと思ったであろう母親の表情とその後のシーンには胸を打たれます。
「珠玉」という言葉が似合う作品です。