『雪の花 ともに在りて』
監督:小泉堯史
出演:松坂桃李,芳根京子,役所広司,三浦貴大,宇野祥平,沖原一生,坂東龍汰,
三木理紗子,新井美羽,串田和美,矢島健一,渡辺哲,益岡徹,山本學,吉岡秀隆他
イオンシネマ茨木にて。
前述の『メイクアガール』の上映終了時刻と本作の開始時刻が10分重なっていたのですが、
予告編を飛ばせばきっちり間に合いました。
数カ月前に主演の松坂桃李が「久しぶりに時代劇をやらさせていただくことになりました」とコメントしている映像を観て、
だからぁ、「さ入れ」はバカっぽく見えるんやてばと思い、
何にでも「させていただく」と言うといたら丁寧やと思っている風潮を憂えております。
この映像を観たせいで公開直後には行く気せず、1週間後になりました。(^^;
江戸時代末期。福井藩の町医者で漢方医の笠原良策は(松坂桃李)は、民衆が突然の発疹に苦しんでいると聞いて駆けつける。
病状を診た良策はそれが疱瘡(=天然痘)だとわかって愕然。
日本国中で猛威を振るっている疱瘡は死に至る病として恐れられていたが、その治療法はない。
罹患した者を隔離して時が過ぎ去るのを待つしかないのだ。
医者でありながらその場を逃げ去るしかないことを苦しく思う良策は、蘭方医の大武了玄(吉岡秀隆)と出会う。
漢方こそが一番だと思っていたのに、蘭方も学ぶべきだと言われて最初はムッとしたものの、
あらためて了玄の話を聴くうち、疱瘡を治す手立ては蘭方にならあるのではないかと思いはじめる。
妻の千穂(芳根京子)に留守を頼み、京都まで出向いた良策は鼎哉に教えを請う。
蔵書の中に疱瘡に関する図を見つけ、その治療法の有無について問うてみると、
鼎哉が言うには、異国に種痘(=予防接種)という方法があるが、
鎖国の日本では種痘の「苗」を手に入れることができず、この方法を用いるのは無理とのこと。
疱瘡を防ぐには種痘しかないと、良策は嘆願書を作成し、なんとか藩主の協力を仰ごうとするのだが……。
「さ入れ」でつまずきはしたものの、観てみればとても良い作品。スルーしなくてよかったと思いました。
検討すると言いながら何もしないのがお役人の仕事だという台詞には笑ってしまいました。
今のお役人もそうだと侮辱するつもりはないけれど、同じような人、いっぱいいませんか。
良策と思いを共にする医者は多くいて、皆がこの病をなくすために協力を惜しまず、奔走します。
そのおかげでなんとか種痘の苗を手に入れることには成功しても、歩いて持ち帰るしかなかった時代。
長崎で入手した苗を一刻も早く福井藩へ持ち帰らねば、苗そのものが死んで役に立ちません。
苗を生かしたまま持ち帰るには、良策の話を信じてくれる民衆に種痘を施し、それを引き継ぎながら歩くしかない。
しかも、種痘は大人ではなく子どもの時分に施してこそ効果のあること。
引き受けてくれた子どものいる家族と一緒に吹雪の中を歩き、やっと福井へと戻ったら、
今度は古いアタマしかない漢方医が、仕事をしないお役人とグルになって邪魔をする。
どこまでが事実に基づいた話かはわからないけれど、奴らがギャフンと言わされるシーンは痛快です。
ワクチンのルーツを見た思い。