『マイ・ブロークン・マリコ』
監督:タナダユキ
出演:永野芽郁,奈緒,窪田正孝,尾美としのり,吉田羊他
109シネマズ箕面にて。
原作は平庫ワカの同名コミック。
第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作品なのだそうです。
タナダユキ監督はたぶん私、わりと好き。
親友のイカガワマリコ(奈緒)が自殺したというニュースを目にする。
幼い頃から実父(尾美としのり)による虐待を受け、
高校生のときには強姦までされていたマリコ。
仕事を放り出して彼女が一人暮らししていた部屋を訪ねると、管理人が清掃中。
葬儀は執りおこなわれることなく直葬され、遺骨は実家にあるらしい。
あんな父親に弔われてマリコが喜ぶわけがない。
シイノがマリコの実家に乗り込むと、そこには遺影を見つめる父親と、
その再婚相手のタムラキョウコ(吉田羊)がいた。
シイノはマリコの遺骨を掴み、もう片方の手には包丁を握りしめ、
遺骨を奪い返そうとする父親に凄んでその場から飛び出す。
今からでもマリコのためにできることはないかと考えたシイノは、
マリコが行きたがっていた岬へと旅に出るのだが……。
面白いのは、登場人物のバックグラウンドがほとんど描かれていないこと。
マリコがどういう目に遭ってきたのかはわかるけど、
主人公のシイノの両親やマリコ以外の友だちはまったく出てこないし、
こんなブラック企業に勤めることになった理由もわかりません。
すべて想像するしかありません。そこが面白い。
マリコの父親も、彼と再婚したキョウコも、どういう人なのかまるでわからず。
ただ、キョウコがいい人だったことはわかる。
あの人がもっと早くマリコの母親になっていれば。どんだけいい人なんだおばさん。
そんなシイノの台詞がありますから。
旅先でひったくりに遭ったシイノを助ける青年マキオ(窪田正孝)も可笑しい。
「大丈夫ですか」(マキオ)「大丈夫なわけねぇだろ」(口が悪いけどこっちがシイノの台詞)
「大丈夫に見えますけど」(マキオ)。大丈夫に見えてほしくないものなんですね、人って。
人は自分が思うよりも大丈夫なものなのかなぁなんて。
マキオもなんだかワケありで、死にたくなるほどの過去があったようですが、
それについては何の説明もないから、想像するしかない。
何があったかわからなくとも、何かとても大変なことがあったのがわかる。それだけでじゅうぶん。
「もういない人に会うには、自分が生きているしかないんじゃないでしょうか」。
自分の中の思い出と、自分を大切に。