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『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』

2025年02月22日 | 映画(さ行)
『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(原題:The Room Next Door)
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ティルダ・スウィントン,ジュリアン・ムーア,ジョン・タートゥーロ,アレッサンドロ・ニヴォラ他
 
大阪ステーションシティシネマにて3本ハシゴの〆。
 
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督による、長編としては初の全編英語作品。
アルモドバル監督作品といえばスペイン語だと思い込んでいたので、英語が聞こえてくるのが不思議な感じ。
昔からアルモドバル作品に出演していたとしても違和感がない名女優ふたりです。
前者は同監督の短編の全編英語作品に出演していますから、違和感ないのも当たり前か。
 
第81回ヴェネチア国際映画祭では金獅子賞を受賞しました。
 
人気作家のイングリット(ジュリアン・ムーア)は、自著のサイン会にやってきた旧友から、
かつて同じ雑誌社で働いていたマーサ(ティルダ・スウィントン)が入院中だと聞き、病院に駆けつける。
 
マーサはステージ3の子宮頸がんで、実験的な化学療法を承諾して治療を受ける身らしい。
10代で未婚のまま母親となった彼女は、父親のことを知りたがる一人娘のミシェルと折り合いが悪く、
母親がこんな状態になっても娘はいたって冷ややからしい。
 
イングリットにとってマーサは親友といえる存在だが、この再会まではずいぶん時間が空いた。
ふたりの空白の日々を埋めるかのように、イングリットは毎日病院に彼女を見舞う。
戦場ジャーナリストだったマーサはかつての現場に思いを馳せ、ふたりは来る日も来る日も話をする。
 
やがて安楽死を決意するマーサ。
死を迎える瞬間に隣の部屋に誰かにいてほしいという望みを打ち明け、イングリッドはそれを引き受けることにするのだが……。
 
いつもながらの美しい映像。音楽もぴったりです。
マーサが死に場所に選ぶのは森の中の一軒家。
安楽死を手伝ってほしいというわけではなくて、そのとき隣の部屋にいてほしい、それだけ。
正確にはイングリットがいるのは下の階の部屋なのですが、マーサは自分が死ぬときは扉を閉めておくからと言います。
毎朝起きて、おそるおそる階段を上がるイングリット。扉が閉まっていたらどうしようと思うから。
 
一度、マーサが開けるのを忘れていたことがあって、てっきり死んでしまったと思ったイングリッドが悲しみに沈むシーンがあります。
起きてきたマーサから「どうしたの」と聞かれたイングリットがえらく怒りだし、
「ごめんごめん、うっかりしてた。けど、生きていたから怒られるってどうよ」とマーサが言うのには笑ってしまいました。
 
人の死に立ち会うということ。
その重みを感じるけれど、これはマーサが望んだ理想的な死だったのだろう思うと軽やかにも思えます。
ただ、隣の部屋にいてほしいと頼まれた人が自分よりも前にいたと思うと私は微妙な気持ちになります。
えっ!?立ち会ってくれるなら誰でもよかったの!?と思わなくもない。
これは自分がその人にとって特別だったと思いたいという傲慢な気持ちなのですかね。

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