『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』(原題:Der Goldene Handschuh)
監督:ファティ・アキン
出演:ヨナス・ダスラー,マルガレーテ・ティーゼル,カーチャ・シュトゥット,
マルク・ホーゼマン,トリスタン・ゲーベル,ウーヴェ・ローデ,ハーク・ボーム他
シネ・リーブル梅田の同じ席に座って3本目。
これは観たことをちょっと後悔しました。
つまらなかったわけではなく、嫌悪感が湧いてしまってつらかった。
そんな予感はあったのですが、なにしろ監督がファティ・アキン。
今までに観た作品が本当に良くて、大好きだったから。
こんな題材も撮るんだなぁ。引き出し多くて面白いけど、これはもうご勘弁。
フリッツ・ホンカは1970年代に実在した連続殺人鬼。
人の容貌についてあれこれ言うのは駄目だけど、
せむしで斜視で乱杭歯、鼻は交通事故に遭ったとかで砕けて歪んでいます。
これを特殊メイクで再現しているんですね。
たびたび書いていることですが、私は特殊メイクが大の苦手。
妖怪とか怪獣の特殊メイクはいいんです。人間の特殊メイクが駄目。
これは苦手も苦手の極みでした。
1970年代、ドイツのハンブルク。
安アパートの屋根裏に暮らすフリッツ・ホンカは、一応職には就いているものの、
風俗街にあるバー“ゴールデン・グローブ”で毎晩酒をあおっているアル中男。
とにかく女を抱きたくて、店に来ている客に一杯おごろうとするが、
不細工すぎる容貌のせいでまるで相手にされない。
致し方なく、金もないのに店にやってきた中年女ゲルダに声をかけると、
酒と寝る場所がもらえそうだとすぐさまついてくる。
翌日追い返そうとするが、殴りつけてもゲルダは出て行こうとしない。
やがてゲルダには30歳の娘がいると知ったフリッツは、
その娘目当てにゲルダを家に置くことにするのだが……。
フリッツの心情が描かれるシーンはまったくなく、
ドキュメンタリーのように淡々と彼の異常な行動が映し出されるだけ。
それがやけに恐ろしい。
そして、異常な行動というのも、肝心な部分は見えないようになっています。
たとえば冒頭、殺した女性を鋸でぎこぎこと切るシーンは、
骨の砕ける音と血しぶきの飛ぶ音が聞こえるだけ。
目に見えるものだけがグロいわけじゃないんだなぁと実感。
フリッツに殺される女性たちは、入れ歯までしているような年齢で、
五段腹ぐらいの醜い人たちばかり。こんな役を演じるのもお気の毒。
それにしても70年代のこの街の雰囲気が何とも言えない。
バーは昼間からわざとカーテンを閉めて薄暗くされていて、客はたぶんアル中ばかり。
タバコの煙で空気がよどみ、こんな店にいたら病気になりそう。
観ていてひたすらつらい作品でした。
“ゴールデン・グローブ”は現在も営業中。
店の入口には「ホンカの部屋」という看板が掛けられているとのこと。なんと悪趣味。