夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ひろしま 石内都・遺されたものたち』

2013年08月16日 | 映画(は行)
『ひろしま 石内都・遺されたものたち』
監督:リンダ・ホーグランド
出演:石内都他

水曜日、節電のために職場のエアコンが全台停止に。
エアコンだけでなく全館停電であっても出勤した年もあるのですが、
その暑さでみんなヨレヨレでろでろ状態に。
今年はどうなるんだろうと思っていたら、
結局有休を使って全員休みたまえ、っちゅうことになりました。

せっかくのレディースデーなので、もちろん映画に。
計画を練りに練り、5本ハシゴできそうな気配。
本作はその1本目、梅田ガーデンシネマにて。今日が上映最終日です。

カナダ・バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)人類学博物館にて、
2011年10月から2012年2月にかけて開催された写真展。
広島の被爆をテーマにしたもので、撮影者は女性写真家の石内都さん。
彼女が2007年から毎年広島を訪れて撮影した写真が展示されたそうです。

本作はその撮影シーンと写真展の様子を収めたドキュメンタリー。
リンダ・ホーグランド監督は、アメリカ人の宣教師の娘として京都に生まれ、
小中学校と山口、愛媛の学校へかよった過去があります。

それにしたって監督はアメリカ人、どうしてカナダで写真展をするのかと思ったら、
カナダの先住民が所有していたウランが原爆に使用されていたとのこと。
自分たちのウランがそんなものに使用されたと知って心を痛め、
のちに彼らは日本に対して詫びたそうです。
カナダが国家として詫びたわけではなく、先住民の彼らのみが自らの意志で謝罪したとのことでした。

写真に撮られた数々の遺品に胸が痛みます。
おおっぴらにおしゃれすることは憚られた時代、
質素な上着の下にこっそり着ていたワンピースやブラウス。
それがずたずたに引き裂かれ、黒く焦げ落ち、
着ていた本人の姿はなく、橋の欄干や河原に残っていたそうです。
背広や眼鏡、七五三にでも着るはずだったかのような可愛い着物。
持ち主のいなくなった人形たち。
カナダ在住の日系人や、日本人の妻を失った軍人が静かに語る当時の様子。

先住民のウランのくだりには、欲に目がくらんだ人々が銀をあさる『ローン・レンジャー』を思い出し、
核兵器の話では東野圭吾の“ガリレオ”シリーズが頭をよぎります。
戦争のドキュメンタリーを観て娯楽映画を思い出すなんてと言われそうですが、
「科学自体に善悪はない、使う人次第」、それが頭から離れません。

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『パシフィック・リム』

2013年08月15日 | 映画(は行)
『パシフィック・リム』(原題:Pacific Rim)
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:チャーリー・ハナム,イドリス・エルバ,菊地凛子,チャーリー・デイ,
   ロブ・カジンスキー,マックス・マーティーニ,芦田愛菜,ロン・パールマン他

夏休みの映画館はさすがに混んでいます。
何が一番人気なのか不明ですが、本作の2D版はがらがら。
3Dで観るべき作品だったかな~と思いつつ、
109シネマズ箕面にて、貯まったポイントで鑑賞しました。

たまにハズレはあるものの、ギレルモ・デル・トロ監督の作品は基本的に好き。
好きになったきっかけは『デビルズ・バックボーン』(2001)。
そのほか製作に回った『永遠のこどもたち』(2007)や『ロスト・アイズ』(2010)など、
ホラーが苦手な私も、この監督の作品は切なさがあって大好きです。

もちろん“ヘルボーイ”シリーズもお気に入り。
本作にはそのヘルボーイ、ロン・パールマンが怪しい役で出演。
監督へのお義理だったのかもしれませんが、めちゃ可笑しい。
ちょっと人間離れした風貌ゆえ(失礼)、こんな役が多いですが、
彼の出演作では『薔薇の名前』(1986)が特に好きです。

『ホビット 思いがけない冒険』(2012)では脚本も担当したデル・トロ監督、
今回はこんな怪獣とロボット映画の脚本も書いちゃいました。

時は近未来、2020年(ホンマにこんな時代が来るとは思えませんが)。
太平洋の深海から巨大な生命体が出現する。
“カイジュウ”と呼ばれるその生命体に世界各国の主要都市が次々と襲われ、
人類は滅亡の危機に瀕する。

国際的軍事組織である環太平洋防衛軍は、巨大ロボット“イェーガー”を開発。
これは、パイロットと神経を接続して起動する人型のロボット。
1人ではあまりに負担が大きいため、2人のパイロットを必要とする。
しかし、この2人の息が合わなければ力を発揮することはできない。

優秀かつ無謀なパイロット、ローリーは、兄のヤンシーと最強のペアを組み、
カイジュウをことごとく倒してきたが、
ある日、油断したすきに攻撃を受け、兄を失ってしまう。
ローリーはなんとか生還するが、もうパイロットではいられない。

その後も学習を重ねたカイジュウは、ますます凶悪になって人類を襲う。
もはやイェーガーでは防ぎきれないと各国政府が判断するが、
防衛軍の司令官スタッカーは総力を挙げて戦いに臨むと決める。

スタッカーはローリーの居所を探し当て、復帰を命令。
防衛軍にはマコという日本人女性が。
彼女はパイロット志望で、誰よりも資質があるのに、なぜかスタッカーから許可が下りない。
しかし、その彼女とローリーの相性の良さが認められ、
2人は一緒に旧式イェーガー“ジプシー・デンジャー”に乗ることになるのだが……。

ロボット機内に人間が入って操縦、これだけで十分おもしろい。
怪獣にもチープ感はなく、結構な迫力で魅せてくれます。
ロシアのロボットの名前が“チェルノ・アルファ”というのは酷いけど。(--;

死亡した怪獣の臓器等を売買する闇商人に、上記のロン・パールマン。
彼をはじめとして、防衛軍に所属する2名の博士など、脇役のキャラが光っています。
ローリーにライバル心を燃やすパイロットと彼の父親とのやりとりや、
スタッカーとマコの絆など、かなりクサくて見ているほうが恥ずかしいですが、
娯楽映画のポイントを押さえているんだから仕方ないですね。(^^;
日本語字幕担当が聞き慣れない人だったので、
もしかしてこなれた人ならばクサさももう少し抜けたかもと思ったりして。

きっと、監督その他、映画づくりに関わった人はみんな楽しかったろうと思われます。
そらツッコミどころはなんぼでもありますが、それは放置、ワクワクしながら観ましょう。

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『ローン・レンジャー』

2013年08月13日 | 映画(ら行)
『ローン・レンジャー』(原題:The Lone Ranger)
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ジョニー・デップ,アーミー・ハマー,トム・ウィルキンソン,ウィリアム・フィクトナー,
   バリー・ペッパー,ヘレナ・ボナム=カーター,ルース・ウィルソン他

笑われるんですけど、ダンナがいるときは、私は「カゴの鳥」なんです。
別に遊びに行ってはいけないと言われているわけではありません。
でも、ダンナが家にいるときに私ひとりで出かけて「借り」を作りたくない。(^^;
だから、ダンナの出張中や宴会時以外はまっすぐ帰るようにしています。
「借りを作りたくないねん」と言ったら、友人に笑われましたけれど。

てなわけで、ダンナが宴会に行くのは大歓迎です。
そんな日は大手を振って映画を観に行けますもん。
これは先週の金曜日、仕事帰りにTOHOシネマズ伊丹にて。
この手のジョニー、もうええわと思っていたのですが、
今週に入ると仕事帰りに観られそうな時間帯には上映がなく、
ならば観るチャンスが先週限りのこれを観ておこうと。

まったく期待していなかったおかげなのか、かなり楽しめました。
『白雪姫と鏡の女王』(2012)のアーミー・ハマーは、この顔貌でコメディつづき。
シリアスなドラマに戻れるのか心配です。

19世紀後半、西部開拓時代のアメリカ。
郡検事のジョン(アーミー・ハマー)は故郷に赴任、ひさびさに帰郷する。
かつて密かに想いを寄せていたレベッカは、今はテキサス・レンジャーである兄ダンの妻。
レベッカへの気持ちを隠したまま、ジョンはダンとともに出かける。
極悪非道なブッチをボスとする無法者一味を捕らえるためだ。

ところが、一味の待ち伏せ奇襲に遭い、レンジャーたちは惨殺される。
かろうじて息をしていたジョンを見つけたのが、先住民の男トント(ジョニー・デップ)。
トントは自称悪霊ハンターで、悪霊と目したブッチをかねてから追っていた。
はからずも同じ相手を敵とみなすこととなったジョンとトント。
到底ウマが合うとは思えないふたりが共に旅に出て……。

正義感には溢れているものの鈍臭そうなジョン。
トントとしてはこんな奴よりもダンのほうを旅の連れ合いにしたかったのですが、
神のごとき存在の“魂の馬”、白馬は死に瀕しているジョンの前へ。
白馬に対するトントの言いぐさがとても楽しいです。
ジョニー・デップの台詞の間合いや表情は絶妙で、
もうええといえどもこの手のジョニーはやっぱり可笑しい。

『ナイトミュージアム』(2006)仕立ての演出は子ども向きかもしれませんが、
如何せん149分は子どもには長すぎます。
ディズニーらしい悪党に、予想外に残虐なシーンもちらほらで、
ディズニーだけどジェリー・ブラッカイマーというところでしょうか。
トントが悪霊ハンターを名乗るようになった理由は悲しいもの。
子ども時代に心に負った傷の話に、大人のディズニー映画を感じました。

西部劇は日本ではウケないそうですが、
こんな西部劇ならとっつきやすいんじゃないでしょか。

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打倒、手湿疹の巻〈その後のその後のその後のその後〉

2013年08月11日 | ほぼ非映画(アトピー)
いちばん最近書いた〈その後のその後のその後〉がほぼ2カ月前。
まだ完治のご報告はできないのですが、
前回は「凝視しなければわからない程度」だったのが、
いまは「話している相手が忘れるぐらい」になりました。
 
この間までは、悲惨だった時期を知っている人と会うと、
その人の視線が自然と私の手に向き、
「うわぁ、よくなったねぇ」と言われていました。
それがいまは視線が向かないぐらい普通になったということです。
レジで財布を出す手を見てギョッとされることはもうありません。
 
手の甲は見た目は普通、だけど、触るとちょっとざらざら。
色素の沈着があるため、なんだかズズ黒いです。
爪はまともな数本を除いてボコボコ、早く綺麗な爪に生え変わってほしい。
 
いまだに夜中に掻きむしってしまう指もあります。
おもしろいのはそれがあまり意識したことのない指ばかりだということ。
特に重症なのは右手の薬指で、この指のせいで憂鬱になるほど。
あまり使わない指だと思っていたのに、この指が使えないと、
お箸を使うとき、物を書くとき、とにかく不便です。
その指も含めて、特に酷かった数本の指は、第2関節の部分がしわしわで可愛くない。(--;
 
こんなふうにまだまだではあるのですが、あの悲惨だった時期のことを思えば、
いまの状態はなんちゅうことありません。
「死んだほうがマシ」だなんて、軽々しく言ってはいけないとわかっていても、
いちばん酷かったときには夜な夜なそう思っていましたから。
 
友人の知り合いが最近脱ステ・脱保湿をはじめたそうです。
スタートの状態は私よりはマシらしい。
友人が当時の私の手を振り返って言うには、「あんなに酷い手の人は初めて見た」。
だもんで、友人は知り合いに「すっごかった人(=私のこと)がおるねん。
長いことかかってたけど、治りやったで」と言うてはるらしく、これは私もめちゃ嬉しい。
だって、薬を何も使わず保湿もせずに治るなんて、
実際にチャレンジした者とそれを見ていた人しか信じられないでしょうから、
私のことを見ていた人が、チャレンジしようとしている人に話して、
それでいつか治ると信じられるのであれば嬉しいですもんね。
 
がんばる。がんばれ。

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夏休みに読みたい本

2013年08月09日 | 映画(番外編:映画と読み物)
シャンシャンやかましい蝉の声を聞くと、夏を描いた児童文学が読みたくなります。
私が子どもだったころは、シャンシャンよりもミンミンだった気はしますけれども。

数年前に読んだ湯本香樹実の『夏の庭 The Friends』が大のお気に入りですが、
今年も何冊か、小学校時代の夏休みが恋しくなる本に出会いました。

1冊目は笹生陽子の『ぼくらのサイテーの夏』。
小学6年生のぼく(桃井)らは、1学期の終業式の日、「階段落ち」ゲームで他クラスと対決。
ぼくが負傷したせいで、危険なゲームが先生にバレ、こっぴどく叱られる。

罰として夏休み中のプール掃除をさせられることに。
仲良しの同級生はなんだかんだと言い訳を並べて逃げ出してしまい、
結局一緒にプール掃除をしてもいいと挙手したのは、他クラスの栗田。

先生の「モモクリ3年と言うし」などというアホな冗談にげんなりしながら、
ぼくは仕方なくプール掃除にかよいはじめるのだが……。

同級生が噂好きの母親から仕入れてきた話によれば、栗田の家庭はホーカイ中。
ホーカイの意味もわからないのに、掃除から逃げた奴らは言いたい放題。
それをちょっと冷めた目で見つつ、でもなんとなく栗田に話しかけられずにいるぼく。

そんなぼくも、実はいつホーカイしてもおかしくない家庭にいます。
エリートコースまっしぐらだったはずの兄がひきこもり、たまに暴れる。
母親は落ち着きをなくしておろおろ、父親は単身赴任中。
誰かにぼやきたくとも噂の的にはなりたくありません。

ぼくが栗田のことを信用できるかもと思ったそもそものきっかけは、
栗田が時間を守るやつだとわかったから。
のちに栗田が笑って語る、父親からの教え。
「世間に信用されたかったら、まず約束を守ること、人の時間を盗まないこと。
 時間は目に見えないけど、でも、ぜったい盗んじゃダメだって」。

栗田の妹は心の病にかかっていますが、ぼくの兄が彼女の絵の才能を見いだします。
ぼくが兄を遊園地へ連れ出して過ごす時間にも胸がキュンキュン。

終始一人称でぼくの心情を可笑しくも細やかに描く、サイコーの夏の物語です。

2冊目は佐藤多佳子の『サマータイム』。
小学5年生のぼく、進は、1つ上の姉、佳奈とふたり姉弟。
夏休み、今にも雨が降りそうな天気の日、進はプールへ。
案の定どしゃぶりの雨に遭い、そのなかでもがくように泳ぐ男子を見かける。

彼は事故で左腕をなくした2つ上の広一。
進と同じ団地内に住んでいるとわかり、プールからより近い広一の家で服を借りることに。
ピアニストの母親と暮らす広一は、右手だけで力強い“サマータイム”を弾いてみせる。

後日、服を返しに広一宅へ向かうと、なぜか佳奈までついてくる。
自転車に乗ることをあきらめていた広一に、佳奈は乗り方を教えると言い出し……。

ぼくの夏の話ではじまりますが、季節は移り変わり、主人公も佳奈や広一へ。
語り手が変わるたびに明かされるあんな出来事こんな気持ちに切なさも。

どちらも夏が来るたびに読みたくなりそうな本でした。

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