夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『エクソダス:神と王』

2015年02月09日 | 映画(あ行)
『エクソダス:神と王』(原題:Exodus: Gods and Kings)
監督:リドリー・スコット
出演:クリスチャン・ベイル,ジョエル・エドガートン,ジョン・タトゥーロ,アーロン・ポール,
   ベン・メンデルソーン,シガーニー・ウィーヴァー,ベン・キングズレー他

「来年度に繰越不可分の有休を消化するために取った休み」第3弾は、
レディースデーの水曜日、3本ハシゴすることに。
観たい映画は多くあれど、せっかくレディースデーに休みを取ったのだから、
いつでもメンバーズ料金の設定があるわけではない劇場に行かねばもったいない。
で、テアトル系列やナナゲイ等を除外すると、やっぱりTOHOシネマズに。

真面目に晩ごはんをつくるには、仕事のときと同じぐらいの時間に帰宅しなくちゃ。
TOHOシネマズ西宮で17:00に上映終了する3本目を先に決め、
それに合わせて2本目も確定、1本目だけ決めないまま当日の朝に。

車で西宮北口に向かったら、国道171号線が伊丹付近で渋滞。
もしかしたら本作の上映開始には間に合わないかもと思いましたが、
予告編終了間際になんとか入場することができました。

旧約聖書の1番目の書が『創世記』、2番目の書が『出エジプト記』
その『出エジプト記』を基に、モーゼ率いるヘブライ人がエジプトを脱出する過程を描いた作品。
物議の醸しどころが多々あるようで、白人がどうたら黒人がどうたら、
スフィンクスの鼻がエジプトっぽくないとか、もういろいろ。
そして、エジプトとモロッコでは「歴史的に誤っている」として公開禁止に。
だけどこれは大画面で観るべき作品でしょ。コケてもいいや。

古代エジプト王国の国王の息子ラムセスと兄弟同然に育てられたモーゼ。
あらゆる面でラムセスより優れているモーゼは、
国王セティの信頼も厚く、民からも慕われているが、
ラムセスとの絆はゆるぎないはずだった。

ところが、セティの死後、王位に就いたラムセスに、
実はモーゼはヘブライ人であると密告した者がいた。
ヘブライ人は500年もの間、エジプト人から奴隷としてこき使われてきた。
卑しい出自を隠していたとして、ラムセスはモーゼを直ちに追放する。

過酷な放浪の末、ある村にたどり着いたモーゼは、村人たちから受け入れられ、
ツィポラという美しい娘と出会って結婚、可愛い息子を授かる。
平穏な暮らしを手に入れたモーゼだったが、嵐の夜、神の啓示を受け、
虐げられているヘブライ人を自由に導くべくエジプトへと戻り……。

エンドロールが回りはじめると、「弟トニー・スコットに捧ぐ」の文字が。
トニーが亡くなってから公開されたリドリーの作品を振り返ってみると、
弟への想いがそこここに表れているようにも思えます。
神はいるのか、その神は人の命を絶ってしまうのか、
絶望の淵にいる人間はどうやって気持ちの整理をつければいいのか。
……なんてことは深読みしすぎなのかもしれませんけれども。

なぜかずっと苦手だったクリスチャン・ベイル
演技はとても上手い素晴らしい俳優だとは思っていたのですが、
ツルっとして時にテカっている顔がどうも苦手で。
今回初めてカッコイイと思いました。こきたないほうが私は好き!?

神によってもたらされたはずの「十の災厄」について、
もしかすると自然に起こり得たものかもしれない。
そんなリドリー・スコット監督の解釈はかなり面白かったです。
ナイルの川底の泥を鰐が蹴散らし、魚と人を襲う。
襲われた生き物の血で水が真っ赤に。
そのせいで蛙が水から這い上がり、干上がって虫が湧く。
おかげで疫病が流行って腫れ物だらけに。
おぉぉぉ、なるほどと思ったわけですが、
ここまで行くならやっぱり海も割れてほしかったですねぇ。

迫力は満点、 薄汚れたクリスチャン・ベイル格好良し、
個人的には十分楽しめました。

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打倒、手湿疹の巻〈エールをおくる〉

2015年02月08日 | ほぼ非映画(アトピー)
今でも毎朝、前日の「検索キーワード」を見るのが楽しみです。
笑えるキーワードもいろいろありますが、
相変わらずランクインしていて笑えないのが「手湿疹×脱ステ」、「手湿疹×脱保湿」。
 
映画と本にほぼ特化したブログにもかかわらず、
この検索キーワードでここにたどり着かれた方々の多さを知ると、
つらくて仕方なかった頃のことを思い出します。
 
先月、そうした方々のうちのおひとりからメッセージをいただきました。
脱ステと脱保湿を始めて約1カ月半だそうで、お仕事を休職中。
本当にこの方法で治るのか、治るならばどれぐらいの期間を要するのか、
それが不安で送ってこられたメッセージでした。
 
「乾燥ガビガビ療法」を始めてから私はもうじき丸2年。
死んだほうがマシとさえ思っていたはずなのに、今ではそれが嘘だったよう。
でも、その方とメッセージをやりとりしている間にいろいろよみがえります。
 
怖かったものあれこれ。
箸、歯ブラシ、ボールペンなど手で握らねばならぬものはすべて脅威。
トイレットペーパーホルダーに関しては今もトラウマ。
アルミホイルを切るときのギザギザも同様に怖い。
ファスナーの端が当たると痛くて、鞄の中は落屑だらけ。
 
治癒の度合いや速度は人によって異なると思うので、
楽観的な話をしてはいけないのでしょうけれども、
乾燥ガビガビ療法は耐えるだけのことはあると信じています。
 
私に言えるのは、「痒かったら我慢しすぎるな」。
思う存分、掻いて良し。ただし、「ナマ掻き」で。
爪は常に短く切って、服の上からは決して掻かないように。
そして、掻いた後は自己嫌悪に陥らぬこと。
 
暗くならない。ひたすら前向きに。
この状況を笑いのネタにするぐらいのつもりで。
……なんてことは、関西人にしかでけんかもしれませんが。(^^;
 
昨年、少し早めの忘年会の折り、
アラ還のお姉様から高田郁の『みをつくし料理帖』をお借りしました。
このお姉様のおかげで時代小説アレルギーはなくなったというものの、これは全10巻。
いったいいつ読み終われるやろと思いながらお正月に着手。
 
江戸時代後期、大阪で水害に遭い、天涯孤独の身となった少女・澪は、
大阪隋一の料理屋「天満一兆庵」の女将・芳に救われて奉公人に。
料理人として天性の素質ありと主人から見込まれた澪は、一兆庵で腕を磨きます。
ところが今度は火事に遭い、店を持つべく先に江戸に向かった芳の息子・佐兵衛が行方不明に。
澪と芳は一兆庵の再興と佐兵衛探しのために江戸へ。
「つる家」という蕎麦屋から誘われて、澪は料理人として働くことに。
おおまかにはこんな物語です。
 
次巻を読むのが楽しみでたまらず、しかし最終巻を前にすると、読み終わるのが悲しくて。
RPGでラスボスを倒したらこのゲームが終わってしまうと思うと、
寂しくてラスボスをいつまでも倒しに行けずにいるのと似ています。
 
どうして手湿疹の話からこんな時代小説の話になるんだと言いますと、
第7巻の『夏天の虹』に「これ!」という箇所があったから。
実はこの巻はAmazonのレビューで唯一評価が低かった巻。
と言っても、ほかの巻が4.5なのに対し、この巻だけ4.0だという程度なのですけれど。
澪に降りかかる、これでもかという不幸災難。
それにうんざりするというレビューが多く見受けられました。
しかし、私は泣けて泣けて。
 
脳卒中で倒れた知人がろくに食事を摂らなくなり、
食べる気を起こすような旨いものをつくってほしいという依頼が澪のもとへ。
手を使うのが不自由なその人のため、澪は食べやすいものを懸命に考えます。
柔らかいもの、喉を通りやすいもの、匙で食べられるもの。
そうして料理を提供しますが、その人はやはり食べません。
なぜなのかがわからず、信頼できる医師・源斉に相談したときの言葉に涙が。
 
「ひとの身体には、病に打ち勝つ力が潜んでいるように思います。
 あまり手を貸しすぎては駄目なのです」。
 
時間をかければ箸を使って食べることができるのだから。
澪が考えた「鯛の福探し」は、脳卒中の人だけではなく、
病ゆえに食べることに興味を示さなくなっていたの心を捉えるのでした。
 
手湿疹には箸は脅威となるので、やはり匙のほうがいいですけれど(笑)。
人に本来備わっている力を信じること。
 
エールをおくります。

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『マエストロ!』

2015年02月06日 | 映画(ま行)
『マエストロ!』
監督:小林聖太郎
出演:松坂桃李,miwa,西田敏行,古舘寛治,大石吾朗,濱田マリ,河井青葉,池田鉄洋,
   モロ師岡,村杉蝉之介,小林且弥,中村倫也,斉藤暁,嶋田久作,松重豊他

「映画の日」に前述の『ミルカ』とハシゴ。満席でした。

さそうあきらの同名コミックの映画化。
『かぞくのひけつ』(2006)も超オススメ、大阪市城東区出身の小林聖太郎監督。
監督自身のご指導なのか、「大阪弁ならまかしとき」でしょう。
関西出身ではない西田敏行miwaの大阪弁&神戸弁、完璧。

さてさて、私の弱いもの。
「野球×映画」もそうですが、「音楽×映画」にもめちゃめちゃ弱い。
点数が甘くなってしまうのはもちろんですが、必ず泣きます(笑)。
予告編を観た感じでは『リトル・マエストラ』(2012)に激似、
でも、指揮者が西田敏行と有村架純ではちゃうの当たり前か。

スポンサーの倒産で解散を余儀なくされた中央交響楽団。
歴代最年少コンサートマスターを務めた若きヴァイオリニストの香坂(松坂桃李)は、
ミュンヘン交響楽団に応募するも不採用の通知が届く。
途方に暮れる香坂のもとへ、中央交響楽団再結成の知らせが。
指定された練習場に向かってみれば、なんとそこは廃工場。

集まった面々は、香坂と同じく移籍先の見つからなかった団員ばかり。
再び職業として演奏できることが嬉しくてたまらない。
ヴィオラの阿久津(古舘寛治)、ヴァイオリンのゆきえ(濱田マリ)、
チェロの涼子(河井青葉)、コントラバスの今泉(池田鉄洋)、
フルートの鈴木(モロ師岡)、クラリネットの可部(村杉蝉之介)、
オーボエの伊丹(小林且弥)、ティンパニの丹下(中村倫也),ホルンの島岡(嶋田久作)などなど。
中にはヴァイオリンの村上(大石吾朗)やホルンの一丁田(斉藤暁)という、
いまさら要らないと思われていた団員もいるが、
誰かがその2人にも声をかけてしまったらしく、帰れとも言えない。

廃工場の表に貼られているチラシによれば、復活コンサートは1カ月後。
指揮者は天道徹三郎(西田敏行)とあるが、これはいったい誰なのか。
香坂が団員を仕切って練習を始めようとすると、
廃工場の作業員にしか見えなかった男が、自分が天道だと言うではないか。

練習に遅れて入ってきたのは橘あまね(miwa)と名乗るアマチュアのフルート奏者。
プロの楽団にアマチュアなんてあり得ないと皆は不満を口にするが、
天道があまねをスカウトしてきたらしく、
しかもそのあまねがアルバイトとして皆に再結成の電話をかけたのだと言う。

薄汚れた風体で、不遜な態度を取る天道に誰もが苛立つが、
再結成を仕掛けたのは天道で、天道に集められた中央交響楽団。
不満ながらも練習を重ねるうち、天道の凄さを感じるようになって……。

演奏されるのはベートーヴェンの『運命』とシューベルトの『未完成』。
演奏を聴けるのはちょっとだけという音楽映画も多いなか、これはたっぷり。
指揮指導は佐渡裕氏、エンディング曲は辻井伸行氏の書き下ろしです。

いろいろ、心に染み込む台詞があります。

復活コンサートの開催が危うくなったとき、
プロなんだから報酬なしで演奏はできないと言う香坂に対し、
金で支払われるギャラだけが報酬なのか、
自分たちの音楽を多くの人に聴いてもらえることこそ報酬なのではないかと言う村上と一丁田。
いずれも団員からは見放されていたのに、天道の登場によって2人は変わります。
楽器の手入れを怠っていたという根本的なことに気づかされたり、
気持ちの問題でもあったり、さまざまですが、音楽をやるうえで大事なこと。

オペラハウスのマネージャー役で登場する松重豊は、
相変わらずあんな顔つきなのに(←失礼。)のほほんとして良い感じ。
天道の若かりし頃の役を演じていたのが木下半太だとエンドロールで知ってビックリ。
改造バイクを手がける町工場のおっちゃん役にでんでんと、オイシイ役どころの人いっぱい。

音楽って切ないね。
確かにそこに存在していたのに、一瞬でなくなってしまう。
だけど、誰かと響き合うことができれば、一瞬は永遠になる。
音楽は、美しい。

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『ミルカ』

2015年02月04日 | 映画(ま行)
『ミルカ』(原題:Bhaag Milkha Bhaag)
監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ
出演:ファルハーン・アクタル,ソーナム・カプール,ディヴィヤ・ダッタ,アート・マリク,
   ジャプテージ・シン,パヴァン・マルホトラ,プラカーシュ・ラージ,ヨグラージ・シン他

「映画の日」だった日曜日にTOHOシネマズ西宮にて。
毎週土曜日の恒例で、外食でお酒を適量以上に飲み、
日付が変わってから帰宅することが多いため、
ほぼ毎週日曜日、朝は残ったお酒と眠気との戦い。
この日も同じく、レッドブルの力を借りて這うように出発。

前夜のちらつく雪で凍りついた、最寄り駅へ向かう坂道。
気をつけてゆっくりゆっくり歩いていたのに、下りでツルっと滑って転び、
立ち上がってもういっぺん転び。痛いがな。
尻餅をついただけだったので、いつぞやのように血まみれの惨事にはならず。
そのまま駅へそろりそろりと歩いて無事到着したのでした。

ミルカ・シンは“空飛ぶシク教徒”の異名を持つ実在の陸上選手。
インドでは国民的英雄として知られているそうですが、
本作を観るに当たってウィキペディアで調べようとしたら、日本語頁は無し。
もっと知りたい。そのうち誰かが書いてくれることに期待。

1930年頃にイギリス領インドのゴーヴィンドプラ村に生まれたミルカ。
温かい家族と友人に恵まれて過ごしていたが、1947年の印パ分離独立のさい、
パキスタン側に位置するゴーヴィンドプラ村に残ることを家族は選択。
自分たちの住む場所を守ろうとした結果、惨殺されてしまう。
ミルカに「逃げろ、ミルカ、逃げろ。後ろを振り返るな」と言い残して。

生き延びたミルカは、難民キャンプへたどり着く。
姉のイシュリは既婚者で、夫に従って先にゴーヴィンドプラ村から離れていて無事。
優しい姉と再会を果たしたものの、なんとなく義兄が好きになれない。
キャンプでの生活は貧しく苦しく、ミルカは悪友を得ると盗みを働くように。

ごろつきのまま成人したミルカは、それでも子どもたちの人気者。
子どもたちを笑わせようと芸を披露しているときに、ひとりの女性と出会う。
ビーローというその女性に一目惚れ、
彼女と結婚したい一心でまともな職業に就こうと決める。

陸軍に入隊するミルカ。
競走で上位10人に入れば雑役が免除されると知り、兵士みんなが色めき立つ。
しかし、ミルカが惹かれたのは雑役免除よりも牛乳。
足の速い者には牛乳と玉子が配られると聞いて、
幼い頃から牛乳が大好物のミルカは発奮、1位となる。

軍でコーチを務めるグルデーウは、ミルカの才能を確信し、指導に当たる。
やがてインド代表に選ばれたミルカは、代表コーチのランヴィールのもと、
オリンピックで輝かしい成績を残すようになるのだが……。

物語は1960年のローマ・オリンピック決勝シーンから。
途中まで金メダル確実の走りを見せておきながら、
ゴール直前でなぜか後ろを振り返ったミルカは4位に終わります。
その後すぐ、パキスタンとの友好親善陸上大会が企画され、
インド側団長を命じられたミルカは固辞。
パキスタンに行くのは絶対に無理だというミルカを説得するため、
首相の言いつけでミルカのもとへ向かう大臣とランヴィール。
そして、ランヴィールが「彼ならミルカを説得できるかも」と呼び寄せたグルデーウが、
列車の中でミルカの数奇な人生を大臣に語って聞かせる形で進められます。

明るく生きているように見えても、家族を殺された光景に支配され続けていたミルカ。
どうにかパキスタンへ行くことを承諾し、
むかし暮らしていた場所を訪れたのは気持ちの整理をつけるためだったのか。
そのくだりは涙があふれて仕方ありませんでした。

歌や踊りは無しかと思いきや、上手い具合にそれが当てはめられて束の間のボリウッド
相当重い話ながら、ニッコリしてしまうこともたびたび。
原題の“Bhaag Milkha Bhaag”(英題は“Run Milkha Run”)が
最初は「逃げろ」としか聞こえないのに、最後は「走れ、飛べ」に聞こえます。

インド人俳優は、いくら本国で人気でも、タイプじゃないなぁと思う人がほとんどですが、
本作のファルハーン・アクタルはカッコイイ。しかも体も韓流顔負け
ほかにどんな作品に出ているのかと思ったら、俳優よりも監督として活躍。
なんと『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』(2011)の監督さん。
いやいや、アナタ、その顔にその体で、自分で出なきゃもったいないでしょ。

まだ2月に入ったばかりだというのに、今年の個人的1位かもと思う作品が多すぎる。
『百円の恋』『トラッシュ! この街が輝く日まで』、『KANO 1931 海の向こうの甲子園』
そして本作と、いい映画いっぱいで嬉し。

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『ANNIE/アニー』

2015年02月02日 | 映画(あ行)
『ANNIE/アニー』(原題:Annie)
監督:ウィル・グラック
出演:ジェイミー・フォックス,クヮヴェンジャネ・ウォレス,ローズ・バーン,ボビー・カナヴェイル,
   アドウェール・アキノエ=アグバエ,デヴィッド・ザヤス,キャメロン・ディアス他

TOHOシネマズ西宮にて、『KANO 1931 海の向こうの甲子園』とハシゴ。
12月封切りだったアメリカでの評判は散々の大コケ、これは期待せずに観にいきました。
ハードルをものすごく下げていたおかげで、思ったよりは楽しかったですが、
上映時間の185分の『KANO』が一瞬たりとも眠くならなかったのに対し、
118分の本作は一瞬寝たこと三度ほど。

1977年初演のブロードウェイミュージカルの『ANNIE』が映画化されるのは3回目。
1回目は1982年、ジョン・ヒューストン監督によって(別監督による続編あり)。
2回目は1999年、ディズニーがTV映画として。
3回目となる今回は、もともとの舞台である1930年代を現代に置き換えて。

ニューヨーク。
4歳のときに両親にレストランで置き去りにされた10歳の少女アニーは、
里子としてミス・ハニガンに引き取られる。
ハニガンの目当ては里親になれば支給される週157ドル。
同じようにハニガンに引き取られた少女4人とともに暮らす。

ある日、アニーは犬を追いかけていて、車の前に飛び出してしまう。
轢かれそうになったところを助けたのがスタックス。
彼は携帯電話会社のCEOで、市長選に出馬することが決まっていた。
支持率の伸び悩みに悩んでいたスタックスは、
側近のガイの入れ知恵により、アニーを利用することに。

早速アニーを食事に招待すると、賢いアニーはスタックスの狙いをずばり当てる。
招待を断ることもできたが、もしも自分が有名になれば、
両親が会いに来てくれるかもしれないと話に便乗。
スタックスの好感度がアップするように一緒に写真に収まって見せる。
アニーを一時引き取ればより支持率が上がるとガイに言われ、
子ども嫌いで潔癖症のスタックスは渋々アニーと暮らしはじめる。

陽気に見えても子ども、戸惑ったり寂しがったりするアニーに、
スタックスの秘書グレースは優しく接する。
彼女のおかげで日々を楽しく過ごすアニー。
しかし両親と再会する夢はあきらめきれず、
金曜日の夜は必ずあのレストランの前で待っていたのだが……。

昔の『アニー』にはありえない携帯やネットの駆使。
ツイッターではアニーのフォロワー多数。
アニーの危機もそのおかげで回避できます。思いっきり現代風。

それなりに笑えるシーンもありますが、私はこれでは泣けない。
いい話にしようという魂胆が透けて見えるからでしょうかねぇ。
だけど、もともとの『アニー』だって、見え見えのいい話だからみんな好きなわけで、
だったらこれに文句をつけるほうがひねくれているのか。

よかったのはハニガン役のキャメロン・ディアス。
強欲女のキレキレっぷりは、『海月姫』の片瀬那奈の上を行きます。
そんな彼女なのに、心根はいい人で良心に目覚めるというオチで。

アニー役のクヮヴェンジャネ・ウォレスは上手すぎて引いてしまうほど。(^^;
『ハッシュパピー バスタブ島の少女』(2012)では普通の女の子に見えましたが、
この『アニー』を見ると過剰な演技のほうが似合いそう。
ミュージカルなどの舞台向きに思えます。
本作のプロデュースを務めたのがウィル・スミスで、
当初はアニー役を彼の娘のウィロウ・スミスが演じるはずだった模様。
降板理由は知りませんが、なんぼ愛娘に主演させたくても、
クヮヴェンジャネ・ウォレスには敵わんと思ったか。

ウィル・グラック監督を知ったのは『小悪魔はなぜモテる?!』(2010)でした。
これは残念ながら日本では未公開、DVDにて鑑賞しましたが、
主演はエマ・ストーンでその後ブレイク。
処女なのにヤリマンと噂されて、開き直った彼女が噂のイメージを貫くという、
かなり面白い1本でした。
私的にはそっちのほうがこの『アニー』よりずっと、普通じゃなくて○。

アメリカで大コケ、日本ではレビューサイトの評価わりと高し。
日本人のほうが素直だということでいいですか。

ちなみにアニーが毎週金曜日にレストランからお裾分けしてもらうお菓子は
あのカンノーリ(カンノーロ)です。

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