夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『EIKEN BOOGIE 涙のリターンマッチ』

2015年08月11日 | 映画(あ行)
『EIKEN BOOGIE 涙のリターンマッチ』
監督:中村公彦
出演:安川純平,神永圭佑,吉岡佑,石渡真修,塩田康平,
   天野博一,玉城裕規,馬場良馬他

シネマート心斎橋で午後から3本ハシゴの2本目。
前述の『共犯』が凄くよかったので、この2本目でスベることを覚悟。
着席してから、劇場スタッフのお姉さんが「入場者特典をお渡しするのを忘れていました」と、
2種類のピンナップを持ってきてくださいました。
「どちらがいいでしょう」と尋ねられても、どっちも要らんし。
でもせっかくなので、出演者ほぼ全員が写っているほうを選択。
客は私を含めて2人だけ、もう1人の方もそちらのピンナップを選ばれたようです。

大学の映画研究部に所属する大木一徹、箕輪俊彦、北浦文哉、伊賀鷹史。
2年生の彼らは、まだ一度もまともに映画を撮ったことがない。
部室に集まってもうだうだしているだけの彼らに愛想を尽かし、
新入部員で1年生の野崎雄司は退部届を提出するが、誰も気にしない。
しかし、数々のコンクールで必ず入賞を果たしてきた偉大な先輩たちのことを思うと、
このままではいけないと一徹は感じはじめる。

そんな折り、高校時代の同級生・相田春樹が入院中であることを一徹は知る。
春樹は高校卒業後すぐにボクシングのプロテストに合格。
順調に勝利を重ねていた矢先、大腿骨骨肉腫に冒されていることが判明して手術を受けたばかり。
転移もなく、完治する見込みなのに、リハビリへの意欲がまるで見られない。
春樹にやる気を起こさせるにはどうしたらいいのか。

そこで、高校時代に春樹を追ったドキュメンタリー作品を撮ったことがある一徹は、
あのとき春樹にとって最も大事だった試合の再現フィルムをつくることを思いつく。
試合を再現するには、当時の相手選手・梶原大牙の協力が不可欠。
大牙に出演を依頼しに行く一徹ら映研部員だったが、
すでにボクシングから離れていた大牙はとりつくしまもなく……。

スベるにちがいねぇと思っていた本作ですが、不覚にも笑ったりグッと来たり。
いや、ギャグは寒いし、間(ま)も良いとは言えず、
真面目くさった顔で交わされる『GODZILLA ゴジラ』(2014)や
『パシフィック・リム』(2013)の話もなんだか気恥ずかしい。
定価の1,800円でこれを観るのはあり得ないし、メンバー料金の1,500円でもちと高い。
そうは思うのですけれど、本作に関わった人たちみんな、本当に映画が好きで、
がんばって撮ったであろうことが想像でき、冷たくできません。

春樹の父親役で登場しているのがいまおかしんじ監督であることに気づいたときは、
「途中で挫折した映画」でほぼトラウマになっているため、青ざめましたが(笑)。
偉大な先輩・大門龍平を含む映研部員たちは、
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』よりよほど魅力あるキャラです。

タイプの子はいないし、やっぱりピンナップは要らないけど、
彼らのことは猛烈に応援したい。

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『共犯』

2015年08月10日 | 映画(か行)
『共犯』(原題:共犯)
監督:チャン・ロンジー
出演:ウー・チエンホー,チェン・カイユアン,トン・ユィカイ,ヤオ・アイニン,
   ウェン・チェンリン,サニー・ホン,リー・リエ,アリス・クー他

ダンナの帰りが遅くなることがわかっていた先週月曜日、
午前中は普通に出勤し、午後から休みを取って心斎橋へ。
映画のハシゴにはいろんな選択肢があったけれど、
この暑さでは劇場のハシゴが体にこたえそうで、
劇場は移動せずにシネマート心斎橋で3本観ることに。

13時すぎにはシネマートに到着したので、4本ハシゴも可能だったんです。
だけど、13時半から上映されるのは『犬どろぼう完全計画』
もう一度観ようかと思うほど好きな作品だったので相当迷いましたが、
15時半からの3本にとどめて、劇場1階下のインド料理店でひとりランチ。

大きなナンとカレー2種、サラダがセットになっているものを注文。
アルコールの1杯も飲みたいところですが、週末に飲みすぎているので我慢。
100円追加すればおかわり無料のソフトドリンクを頼み、
1杯目だけラッシーの注文も可能だというので、1杯目にはラッシーを。

料理をたいらげてからアイスコーヒーを頼んだら、
グラスになみなみ注がれたアイスコーヒーを持ってきてくれましたが、ストローが付いていない。
「これはストローなしなのかな」と思ったら、
インド人のウェイターさんが、下げようとしているラッシーのグラスを顎で指し、クイッ。
おおっ、このラッシーで使ったストローを再利用せよということなのね。
私がラッシーのグラスからストローを抜き取ると、ウェイターさん無言で頷く。
これ、日本人がやると横柄かもしれませんが、そうじゃないとなんか楽しい。

このアイスコーヒーをいただきながら、ヒキタクニオの『原宿団地物語』を読みました。
ヒキタクニオの『消し屋A』は面白かったけど、残念ながらこれはイマイチ。
残り50頁ほどになったところで1階上がって劇場へ。

『光にふれる』(2012)で注目を集めた台湾の新鋭、チャン・ロンジー監督の2作目。
1作目と趣を異にする青春ミステリー。これも非常に良かったです。

男子高校生ホアンは、ある朝、路地裏で同校の上級生女子シャーの死体を発見する。
呆然と死体を見つめているときに通りかかったのが同校同学年の男子イエとリン。
リンが警察に通報、3人は死体発見者として警察へ。
現場の状況から事件の可能性はなく、シャーの飛び降り自殺と断定される。

ホアンはいじめられっ子、イエは不良、リンは優等生。
同じ高校にかよう生徒ながら、それまで言葉を交わしたこともなかった3人だが、
このような尋常ではない体験を共有したことで急速に親しくなる。

ホアンの提案により、3人はシャーの後輩として葬儀に参列。
面識のなかったシャーのことを知りたくなり、彼女の自宅マンションを訪れる。
母親が出かけていたのをいいことに、3人は彼女の部屋へ忍び込むと、
なぜ彼女が死ななければならなかったのか、手がかりを掴もうと調べはじめる。
やがて、彼女が同級生によって死に追い込まれたのだとホアンが言いだして……。

死体発見後も普通に通学する3人の姿に、さして動揺の色は見えません。
学校側はおざなりなカウンセリングを受けさせるだけ。
それを笑い飛ばす3人は余裕すら持っているように見えましたが、
観客は彼らの心に巣くう闇を徐々に感じるように。

ネタバレですが、主人公と思われていたホアンが早々と事故死して事態も急展開。
イエとリンに出会うまでは友人がいなかったホアン。
ホアンの死によってイエとリンが置かれる苦境と、明らかになる真相。
心がギュッと絞られるようでした。悲惨なのに切ない。
『光にふれる』同様、この監督は光の取り込み方が素晴らしい。

いい加減、時間の隙間を見つけて映画を観るのもしんどいなぁと思うのですが、
こういう優れた作品に当たるから、やっぱり映画を観るのはやめられない。

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『チャイルド44』を読みました。

2015年08月09日 | 映画(番外編:映画と読み物)
7月に観た『チャイルド44 森に消えた子供たち』
サスペンスフルでとても面白かったけれど、
主人公の行動は説得力に欠け、犯人もただのイカレたオッサン。
ミステリーとしてはイマイチでしたから、
トム・ロブ・スミスの原作ではどうなっているのだろうと興味津々。
いまや積み上げた未読本が200冊になっているというのに、
通りすがりの鶴橋の老舗・高坂書店にて文庫上下巻を購入。

『このミス』にランクインしたときに読んだという友人は、
かなりとっつきにくかったと教えてくれました。
確かに、『卵をめぐる祖父の戦争』といい、
旧ソ連が舞台の話は重苦しくてとっつきにくい。
上巻は冒頭シーンが大きく異なるものの、まぁまぁ映画に忠実と言ってもよく、
こりゃ映画を先に観ていなければ、読み進めるのに苦労しただろうと思いました。

「ふ~ん、フツー」と思いながら下巻へ。
そうしたら、冒頭シーンの意味がわかる後半から、もう怒濤の面白さ。

完全ネタバレなので、原作をお読みになるご予定の方はご注意を。

原作の冒頭では、まだ少年の兄弟が森へ出かけます。
飢餓の時代、猫の鳴き声を聞いた兄のパーヴェルは、
弟のアンドレイを連れて、猫を捕らえるために森へ。
暗闇で猫を捕獲したかに思えたそのとき、パーヴェルの姿が見えなくなります。
実はパーヴェルはある夫婦に襲われて連れ去られたのです。

その夫婦は飢え死にしかけている自分の息子を助けるために、
パーヴェルを殺して息子に食べさせようとしていました。
しかし、意識を失ったパーヴェルを袋に詰め込んで帰ったときには息子はすでに死亡。
パーヴェルを殺す必要がなくなった夫婦は、パーヴェルに食糧を与え、
「帰ってもよいし、自分たちと一緒に来てもよい」と告げるのです。
以後、パーヴェルは夫婦の息子だったレオの名前で生きます。

大好きだった兄に見捨てられたと思ったアンドレイは、
パーヴェルのことを片時も忘れませんでした。
あるとき、戦争の英雄としてパーヴェルが掲載された新聞記事を目にします。
兄が軍の重要機関に勤めていることを知り、
アンドレイはパーヴェルにメッセージを送ることに。
そのメッセージというのが数々の猟奇殺人でした。

映画を観たときに原作は決してこうではなかったはずと感じたとおり、
犯人はただのイカレたオッサンではなかったし、
遺体の様子を見たレオが何かに突き動かされて、
事件に異様な執着を見せることも、原作を読めば納得。

レオとライーサの逃走劇に何の見返りもなく手を貸す人々。
このくだりには胸が熱くなります。
あきらかな狂人ながら、兄が気づいてくれるのをひたすら待つ弟、
その弟を自らの手で殺さなければならなくなった兄。

本作はロシアでは発禁処分になっているそうです。
理想国家では殺人事件など起こらない。
そう人々に言わせていたゆえに実際に起きたアンドレイ・チカチーロ事件。
著者はチカチーロ事件に着想を得たとのこと。
犯人の名前もここから来たものだったのですね。

下巻途中からはかなり興奮しました。
『このミス』も海外編のランキング1位は侮れず。

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『ボヴァリー夫人とパン屋』

2015年08月08日 | 映画(は行)
『ボヴァリー夫人とパン屋』(原題:Gemma Bovery)
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ファブリス・ルキーニ,ジェマ・アータートン,ジェイソン・フレミング,
   イザベル・カンディエ,ニールス・シュナイダー,メル・レイド他

TOHOシネマズ梅田で『ミニオンズ』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』を観て、
テアトル梅田へ移動。この日いちばん面白かったのはこれでした。

フランスのノルマンディー地方。
熟年のマルタンは、長らく勤めていたパリの出版社を退職、
故郷であるこの地に戻って、父親のパン屋を継ぐ。

穏やかだが単調な毎日がすぎてゆくなか、マルタンの唯一の楽しみは読書。
特にギュスターヴ・フローベールの『ボヴァリー夫人』が大のお気に入り。
19世紀半ばに発表されたこの小説は、
田舎で平凡な結婚生活を送る若い女主人公エマ・ボヴァリーが、
不倫と借金の末に追い詰められて自殺するまでを描いた作品だ。
飼い犬にギュスという名前を付けるほど、
マルタンは『ボヴァリー夫人』をこよなく愛している。

そんなある日、向かいの家にイギリス人夫婦が引っ越してくる。
彼らの姓はボヴァリーで、夫はチャーリー、妻の名前はジェマ。
小説のボヴァリー夫人と一字違いの、向かいに住むボヴァリー夫人。
なんという偶然かとひとり興奮するマルタン。
しかも近所づきあいを始めてみると、ジェマはエマさながらの奔放さ。
マルタンはすっかりジェマから目が離せなくなる。

やがてジェマの前に、勉学のための避暑に訪れた美青年エルヴェが現れる。
チャーリーの目を盗み、ジェマとエルヴェは情事を重ねるように。
このままでは彼女が小説と同じ運命をたどってしまう。
そう思うと気が気でないマルタンは、なんとかふたりを引き離そうと画策するのだが……。

皮肉なユーモアに満ちていますが、悪意は感じられず、痛快。
あれこれ妄想するマルタンの頭の中が目だけで表現されているかのようで、
その豆鉄砲を喰らったようなまんまるお目々が可笑しいです。
そういえば、先日の女子会で「鳩が豆鉄砲を食ったような目って言うけど、
日常で使うことはない言い回しだよね」という話になりましたが、
マルタンの目はまさにそんな感じ。

ここ数年、オッサンやオバハンの妄想系作品には辟易気味の私ですが、
本作の妄想は自分がどうにかなろうという妄想ではないのがいいところ。
彼女にひそかに欲情はするし、嫉妬に駆られはするものの、
自分が彼女の相手になるという妄想ではないのです。
分をわきまえた妄想とでも言いましょうか、そこがさらに面白い。

ジェマ役のジェマ・アータートンは、『アンコール!!』(2012)で歌の指導に当たるエリザベス役、
『ランナーランナー』(2013)の秘書レベッカ役も印象に残っている女優さん。
ものすごい美人というわけでもフェロモン全開というわけでもないのが逆にイイ。
そばかすが似合う、適度に官能的な女性で、男性陣が骨抜きにされるのも納得。

終盤、その骨抜きにされた男性たちが並んで歩く後ろ姿の寂しいことよ。
それでも性懲りもなく……というオチがまた可笑しくて。
パンもめちゃめちゃ美味しそう。

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『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

2015年08月07日 | 映画(さ行)
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
監督:樋口真嗣
出演:三浦春馬,長谷川博己,水原希子,本郷奏多,三浦貴大,
   桜庭ななみ,石原さとみ,ピエール瀧,國村隼他

TOHOシネマズ梅田にて、前述の『ミニオンズ』のすぐあとに。

アニメ版は特に前編がめっぽう面白かった“進撃の巨人”
実写版はすべりそうな気配ありありでしたが、
「東宝11番組共通前売券」に含まれていることだし、観ておくかと。
そうしたら、期待せずにいったにもかかわらず、それ以下だぁ。

かつて、謎の巨人たちが突如出現し、人類の大半が食い殺された。
なんとか生き残った者たちが巨大な壁を築き、
その内側で平和な生活を維持して100年が経過。

何事もなく暮らしてきたせいで、巨人の存在を訝る者がいる。
エレン(三浦春馬)もそのひとり。
このまま壁の内側で一生過ごすつもりか、俺は外に出たいと、
幼なじみのミカサ(水原希子)とアルミン(本郷奏多)に訴える。
ちょうどそのとき、100年ぶりに巨人が現れ、街は壊滅状態に。
路上に取り残されたミカサは巨人に食われてしまっただろう。
彼女の手を放したエレンは自責の念に駆られる。

2年後、巨人を倒すべく結成された武装調査兵団。
エレンとアルミンも団員となり、決死の覚悟で外壁修復作戦に臨むのだが……。

こうしてあらすじを書いてみるとアニメ版とさほど変わらないのに、何が駄目だったのか。

原作未読なので、あくまでアニメ版と比べてのこと。
まず、最初から強い強いミカサにアニメ版では惚れ惚れ。
ところが実写版ではあくまでミカサはエレンの恋愛対象の守ってあげたい少女。
こんな健気で可愛い少女の設定はそもそもつまらない。

そのミカサは死んでしまったと思われていたのに、
エレンとアルミンの前に強い女性となって登場。
しかも団長シキシマ(長谷川博己)とデキているらしい。
最近お気に入りの長谷川博己ですが、これもキャラが同じだからキショイ。

武装調査兵団は戦術に長けたエリートと思いきや、
実写版では貧しい暮らしの口減らしのために参加した者がほとんど。
弱っちい夫婦がふたりで肩を寄せ合っている姿なんて要らない。
子どもを預けて参加したヒアナ(水崎綾女)が「子持ちの女は嫌?」と
エレンに色仕掛けで迫る場面は呆気にとられます。
ここにエロを入れる必要はまったくないでしょう。
ハンジ役の石原さとみは、こんな弾け方もできるんだと感心しましたが、
アニメ版では面白いと思えたキャラが実写版になると浮きまくり。

巨人に食われるシーンは不必要に残虐で、ホラー並み。
登場人物それぞれに全然魅力が感じられないから、パニック映画としてもつまらない。
もう後編は要らんけど~と思いつつ、前編だけというのは気持ち悪いので、
やはり「東宝14番組共通前売券」で観に行ってしまうのでしょうねぇ。

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