夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『オケ老人!』

2016年11月19日 | 映画(あ行)
『オケ老人!』
監督:細川徹
出演:杏,黒島結菜,坂口健太郎,左とん平,小松政夫,藤田弓子,
   石倉三郎,森下能幸,萩原利久,光石研,笹野高史他

前述の『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』とハシゴ。
TOHOシネマズ梅田の8階から7階へと移動して。

数週間前にどこぞの劇場で本作の予告編を観たとき、
近くに座っていたおばさま二人連れが「杏ちゃんや」「ようがんばってるよねぇ」と、
まるで知り合いのお嬢さんのことのように話していました。
NHK朝の連ドラの威力は職場にいても実感できますが、
外でこうした会話を耳にすると、やっぱり凄いぜ連ドラ、とあらためて思います。

で、劇場へ足を踏み入れてみたら、さらに体感できます。
なんとオジさんオバさんジジにババの多いこと。
何度も書いていることですが、この年齢層の客はマジで共感能力が高い。
みなさん昔からそうだったのか、年を取ってからそうなったのか。

そんなお客さんたちの間にいるだけで可笑しいのなんのって。
「これ仮病やで」「いや、壊れてしもた」「倒れやったで」「どないしたん、風邪か」
「可哀想にぃ」「絶対勘違いやで」……いちいち言わんでも観てたらわかるっちゅうねん(笑)。
一人や二人じゃありませんからね。あちこちでこんな会話や独り言が。ワラける。

梅が岡高校に赴任した数学教師の小山千鶴(杏)。
地元のアマチュアオーケストラの演奏を聴いて感動し、
学生時代にかじったヴァイオリンを再び弾きたいと思う。
ネットで調べてみると、“梅が岡交響楽団”では団員を募集中とある。
さっそく電話を入れてこの感動を伝えると、なんだか妙な反応。
しかし入団希望を受け入れてくれるとのこと。千鶴は大喜び。

高鳴る胸を抑えながら、練習会場である公民館へ。
ところが楽器を携えて次々とやってくるのは、しょぼくれた老人ばかり。
オケどころかカンオケのほうが似合いそう。
これはきっと何かの間違い、退散するのが得策ではと思っていたところへ、
コンマスだという野々村(笹野高史)が現れる。

話を聞けばやっぱり間違い。
千鶴が聴いた演奏は、“梅が岡フィルハーモニー”というエリート楽団。
満面の笑みで歓待ムードの野々村に間違いだったとは言い出せず、
とりあえず第1回の練習に千鶴は参加する。

予想どおり、その演奏は酷いもの。
クラさん(左とん平)、トミー(小松政夫)、マーサ(藤田弓子)、棟梁(石倉三郎)、
真弓センセイ(茅島成美)、しま子さん(喜多道枝)、ラパウルさん(森下能幸)。
いずれも音楽は大好きだが、楽器はテキトーにしか弾けず、
練習なんて二の次で、みんなで集まることだけを楽しみにしている様子。

絶対にやめておくべきだと思うものの、
イケメン年下同僚の坂下(坂口健太郎)から「凄いですね」を連発され、
野々村の孫で生徒の和香(黒島結菜)からもなんとか頼むと言われて断れない。
そうこうしているうちに野々村が心臓発作で倒れ、
復帰するまでコンマスを任せられるはめになってしまい……。

これ、『ちょんまげぷりん』(2010)や『探検隊の栄光』(2015)と同じ原作者なのですね。
いずれも舞台はちがえども楽しい話で、心がほっこりする物語がお得意なようです。
監督は『ぱいかじ南海作戦』(2012)の細川徹で、これまたほっこりがお得意っぽい。

定番の話だから、誤りようもありません。
笑うところはきっちり笑わせ、しんみりさせるところはしんみりと。
野々村電気を潰しにかかるオオサワ電気の社長が梅フィルのコンマスで、この嫌な人役を光石研
だけどツメの甘い嫌な人だから、最後は笑わされてしまいます。

根っからの悪人がいない映画はやはりいいもの。
真木よう子が英語を話すシーンに違和感を抱いた『ぼくのおじさん』に対し、
坂口健太郎が仏語を話す本作はそんな感がこれっぽっちもなく。
何がどうちがうんだか、わかりません。なんでかなぁ。

ジジババみんな、大満足のはず。
本作の出演者の皆さんが長生きしてくれますように。

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