夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ベン・イズ・バック』

2019年06月04日 | 映画(は行)
『ベン・イズ・バック』(原題:Ben Is Back)
監督:ピーター・ヘッジズ
出演:ジュリア・ロバーツ,ルーカス・ヘッジズ,コートニー・B・ヴァンス,キャスリン・ニュートン他
 
金曜日も土曜日も深夜まで外食、それなり以上にアルコールも摂取している。
日曜日に早起きするのは無理だろうと思っていたのに、
なんでですかね、いつもと同じ朝5時に目覚ましかけずとも起きてしまうのは。
 
目が覚めたら映画に行かなきゃもったいない。
もともと後述の10:25上映開始の作品は絶対観るつもりで数日前に予約済み。
10:25より前にもう1本観ようとしたら、選択肢がとても少ない。
大阪ステーションシティシネマで観られる『小さな恋のうた』と本作で悩み、
『ある少年の告白』を観て以来気になっているルーカス・ヘッジズが出演している本作に決定。
 
監督はそのルーカスの実父ピーター・ヘッジズ。
彼は『ギルバート・グレイプ』(1993)や『アバウト・ア・ボーイ』(2002)の脚本家で、
『エイプリルの七面鳥』(2003)では脚本と監督を務めました。
ほとんどどれもが家族を描いた作品です。
自分の監督作に息子を起用する。この息子の演技力なら使いたくなるのも当然。
 
クリスマスイヴの朝を迎えたバーンズ一家。
本来は5人家族だが、長男ベンは薬物依存症の治療のために施設に入っている。
 
母親ホリー、長女アイヴィー、次女レイシー、次男リーアムが教会から戻ると、
家の前にたたずむベンの姿が。イヴを家族と過ごしたくて、施設を抜け出してきたのだ。
愛息の突然の帰宅を手放しで喜ぶホリーとまだ幼い弟妹たち。
アイヴィーだけは不安を隠せず、ただちに父親ニールに連絡を入れる。
 
ニールはホリーの再婚相手で、ベンとアイヴィーはホリーの連れ子。
実の子どもと変わらぬ愛情をニールはベンにも与えたいが、
治療が済んだと言って過去に何度か帰ってきたことのあるベンは、
その都度なんらかの騒ぎを起こしている。
とても信用することはできず、ただちに施設に戻るように命じる。
 
納得できないホリーとニールが話し合った結果、
実家で過ごすのは1日だけ、翌日は施設に戻ると約束すること、
ホリーの見える範囲に必ずいることなどを条件に、
ベンはクリスマスイヴからクリスマスにかけて家族と過ごすことに。
 
ところが、ベンが薬を断とうとしていることをよく思わない誰かが留守宅に押し入り、
一家の大事なペットの犬を連れ去り……。

ホリー役にジュリア・ロバーツ
息子を愛してやまない母親を熱演。迫真の演技を見せます。
ニール役のコートニー・B・ヴァンスもよかった。
継子に自分ができる最大限のことをしようとする父親の葛藤が見えます。
アイヴィーにはこのところよく見かけるキャスリン・ニュートン
 
弟妹は文句なくカワイイし、
こんなに愛情あふれる家庭にいながらなぜヤク中になるのかと思ったら、
幼い頃に罹ったなんということはない病気の治療で処方された薬のせいなんです。
ショッピングモールで当時の医者を見かけたホリーが、
今は認知症の医者に向かって吐く言葉が凄い。母親の心情そのものでしょう。
 
完治しました、なんてぬるい終わり方はしません。
きっとまだまだ大変な生活が待っている。でも、命あればこそ。
 

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『アメリカン・アニマルズ』

2019年06月02日 | 映画(あ行)
『アメリカン・アニマルズ』(原題:American Animals)
監督:バート・レイトン
出演:エヴァン・ピーターズ ,バリー・キオガン,ブレイク・ジェナー,
   ジャレッド・アブラハムソン,ウド・キア,アン・ダウド他
 
109シネマズの「ポイント会員感謝の日」がちょうど日曜日だったので、
これ1本だけ観に109シネマズ大阪エキスポシティへ。
できれば2本観たいところなのですけれど、休日にエキスポシティへ行くときは、
早めに帰るようにしないと万博外周道路が混みそうで嫌だから。
 
バート・レイトン監督はドキュメンタリーを撮り続けてきた人とのこと。
冒頭、これは「真実に基づく作品」ではなく、「真実そのもの」との言葉。
実話に基づく本作の中に、犯人だった本人4名のインタビューが織り交ぜられています。
長編劇映画を撮るのはこれが初めてだそうですが、
ドキュメンタリー出身監督らしい非常に面白い構成。
 
美術の才能があるスペンサーとスポーツに秀でているウォーレン。
それぞれ大学から請われて、トランシルヴァニア大学とケンタッキー大学に入学。
ふたりとも中流階級の家庭に生まれ、特に良くも悪くもない生活を送っているが、
あまりに平凡な日常に苛立ちと焦りを募らせている。
 
そんな折、スペンサーは自分がかよう大学図書館に稀覯本が所蔵されていることを知る。
それはジェームズ・オーデュボンの画集『アメリカの鳥類』。その価値1200万ドル。
司書が張りつく鍵のついた部屋の中に保管され、予約者しか見ることはできない。
 
スペンサーからその話を聞いたウォーレンは、目を輝かせる。
その本を盗み出そう。そうすれば、人生が何か特別なものになるはず。
さっそく図書館の詳細について調べ始めたスペンサーとウォーレンだったが、
2人で盗み出すには無理があることに気づく。
 
問題点を挙げて解決策を考えられる者とそれを実現するための金を持つ者。
ウォーレンは秀才エリックと青年実業家チャズをリクルート。
こうして4人は決行日に向けて綿密な計画を練るのだが……。
 
2004年に起きた事件です。
実話だとは言ってもドキュメンタリーではなく、俳優が演じる部分と、
7年の刑期を終えて出所した犯人たちがカメラに向かって話す部分と。
犯人たち以外にもその親や教師、司書などがカメラに向かって話します。
 
彼らが参考にする犯罪映画の名前がいくつも出てきて、映画好きにはとても楽しい。
『現金に体を張れ』(1956)とか『レザボア・ドッグス』(1991)とか、
『スナッチ』(2000)とか『オーシャンズ11』(2011)とか。
「捕まったときに『ショーシャンクの空に』(1994)みたいな最後ならいいけど
あれは映画だから」というようなやりとりもあります。
『レザボア・ドッグス』のことを本物のエリックが
タランティーノの作品の中でいちばん嫌い」と苦笑いする顔、可笑しい。
 
犯行は鮮やかには行きません。
誰も傷つけたくはなかったのに、傷つけてしまう。
イレギュラーなことが起きると、ついつい間抜けなことをしてしまう。
完璧には程遠い犯行計画で、浅はかとしか言いようがありません。
 
4人のうち何人かは本気で反省しているように見えますが、
インタビューは素人と思えないほど演技っぽい。
実際のところはこうして映画化されてほくほくなのかもと邪推。
 
真相はウォーレンのみぞ知る。
映像制作の道に進んだという彼、そのうち真相を映像化するのかしらん。

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2019年5月に読んだ本まとめ

2019年06月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2019年5月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3587ページ
ナイス数:1020ナイス
 
■慈雨 (集英社文庫)
「平成最後の」って皆うるさいねんと思いつつも念入りに選んで1冊読んだ後は、「令和最初の」ってまた皆うるさいねんと思いながら店頭でこれを手に取る。実際に昭和と平成の世を騒がせた事件の話がちらりと出てきたり、DNA鑑定の不確かさを問うたり、『殺人犯はそこにいる』と併せて読みたい。『孤狼の血』の男臭さに心が躍った者としては、妻や娘の描き方があまりに女性そのもので少々退屈にすら感じてしまいましたが、犯人が明らかになる終盤100頁は白熱。「清濁併せ呑む覚悟で刑事を続ける」という言葉に目が潤む。諦めなければ報われる。
読了日:05月03日 著者:柚月 裕子

■女子的生活 (新潮文庫)
生まれ変わっても女子がいい。そう思っていますが、おしゃれには縁遠く、こんなファッション用語がバンバン飛び交う女子の話はチョー苦手。あかん無理やわと思ったのは束の間。主人公がトランスジェンダーであることがすぐに明かされて、こっちの気持ちも変わる。映画『ある少年の告白』を観たところだったから、意地の悪い兄のせいで両親が知るくだり、こんな親ばかりならば、友達が後藤みたいな奴ばかりならば、どれほど楽だろうと考える。生きづらいよね。普通に接しようと思う時点で特別視しているのだから。著者の性別、もうどっちでもいっか。
読了日:05月04日 著者:坂木 司
https://bookmeter.com/books/13612861

■恐怖小説キリカ (講談社文庫)
第二章を開けて、ひょえ〜。ネタバレはせずにおきますが、面白いやんか。講談社から出版して、主人公が受賞するのはKADOKAWAのホラー大賞。審査員も実名で、遊び心満点。『ボヘミアン・ラプソディ』の歌詞について人はいろいろ解釈したがるけれど、フレディ自身は言ってます、「ただ、曲を楽しんで」と。しかし、そんなつもりで書いたのではないといくら作家が否定したところで、周りは何かあると思いたい。新米作家にその内幕を見せられて、誰が面白いと思うのか。いや、面白いって。で、澤村さんはほんとにそんなつもりはないんですね!?
読了日:05月06日 著者:澤村 伊智
https://bookmeter.com/books/13616564

■女神のタクト (講談社文庫)
関西弁全開の作品を読むといつも、関西人以外の感想が気になります。内容以前に関西弁がひっかかって読みづらくはないのだろうかと心配に。生粋の関西人としては、こりゃもうたまらん。稀にある、読むに耐えない関西弁ではなく、正しい関西弁。『拳に聞け!』で魂を射抜かれ、過去の作品に遡り。パンチパーマのオッサンを漆黒のブロッコリーに例えるセンスにもう脱帽(笑)。自信を失ったマエストロが破天荒な女に引きずられてステージに戻る。前半はさんざん笑わされ、『天城越え』で涙腺ゆるみ、オーケストラの演奏を文字で読んで完全に涙。好き。
読了日:05月12日 著者:塩田 武士
https://bookmeter.com/books/8344821

■七不思議のつくりかた (集英社オレンジ文庫)
飲酒しながら読み、たいして怖くもないはずが、プールで足をひっぱられるとか、冷めるとそれなりに怖い。切ない怪談を期待して読みはじめたのに、最終章にたどり着くまでは切ないというよりも虚しい印象。それが最後にがらりと変わる。私が勤めているのは学校ではないけれど、それなりに怪談の要素がある職場ゆえに取材を受け、怖くもなんともなかった自分の体験談が、本に書かれると立派な怪談になっていて苦笑したことがあります。スリッパを捨てたら、私の休みの日にペタペタとそこを走る音が聞こえていたとか(笑)。怪談はこうしてつくられる。
読了日:05月14日 著者:長谷川 夕
https://bookmeter.com/books/13063695

■我が心の底の光 (双葉文庫)
暗い。光を感じるシーンなんてひとつもない。ネグレクトを受けて餓死する寸前、父親が母親を殴殺する現場を見てしまった子どもの一生は、こんなふうになってもきっと不思議じゃない。彼の復讐相手がしたことを振り返ると、いくぶん逆恨みの要素も入っているように思えます。それでも誰かに復讐せずにはいられない。そこにしか生き甲斐を見いだせないから。主人公の心の動きについてまったく書かれず淡々としているのに、心を揺さぶられます。貫井さんにはここ数年の何冊かでガッカリさせられましたが、久しぶりに読み応えがありました。映画化希望。
読了日:05月17日 著者:貫井 徳郎
https://bookmeter.com/books/12752438

■ボヘミニャン・ラプソディ フレディと猫に捧ぐ
これを「読んだ本」に加えるなんて詐欺みたいと思いながら。『ボヘミアン・ラプソディ』を劇場で28回観た私に職場の人が貸してくれました。面構えやしぐさがあんなときこんなときのフレディに似ている猫を集めてみましたという写真集。無理くりもええとこ(笑)、シンコーミュージックさん、儲けるなら今とばかりに出しはったんやなと思うものの、『ボ・ラプ』をこんだけ観て、しかも猫も大好きなのだから、ニヤけずにはいられません。貸してくれた人に返したら、間違いなく買ってしまうであろう私がいます。すっかり商売に乗せられとる。(^^;
読了日:05月20日 著者:
https://bookmeter.com/books/13679526

■サンティアゴの東 渋谷の西 (講談社文庫)
「元気の出ないときには瀬尾まいこ」が私の基本ですが、そういえば瀧羽麻子に頼っていたこともありました。サンティアゴ、津軽、上海、瀬戸内海、アントワープ、渋谷での一日が描かれる、連作ではない短編集。瀧羽さんに頼っていた頃、『うさぎパン』『株式会社ネバーラ』に救われたのを思い出します。高校生や新入社員が主人公だったそれらと比べると、本作に出てくるのはもう少し上の女性が多い。著者も歳を取ったんだなぁと結構しんみり。私同様に瀬尾まいこや宮下奈都をお好きな方ならそこそこ気に入るはず。ただ、私は長編のほうが好みかも。
読了日:05月21日 著者:瀧羽 麻子
https://bookmeter.com/books/13716921

■贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)
中山センセの著作はまだ数冊しか読んだことがないため、免疫がありません。なんですと?この弁護士、14歳のときに女児を殺しているサイコ?まずその設定に驚愕。サイコは更生も更正も無理だと思い続けてきました。でも本作を読むとその考えに疑念が生じる。フィクションなのに、そんなおぞましい事件の犯人であっても変われるのかもしれないと思ってしまう。後悔するな、償え。少年院の教官からそう説かれるシーンには胸を衝かれました。読み終える頃には御子柴さんを追いかけたくてたまらなくなっちゃって。噂に聞く中山センセ、やっぱりすげぇ。
読了日:05月26日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/7498077

■追憶の夜想曲 (講談社文庫)
マイ・ルール「同じ作家は続けて読まない」をいとも簡単に破って第2弾。前作で皆のツッコミどころだった死体遺棄の件も最初にクリア。どんでん返しの帝王だから、きっとあいつがこいつがこんなことと推理すれば小さくは当たるけど、ここまでは無理。もしも完璧に当てた人がいるならば、頭キレすぎでお友達にはなりたくない(笑)。前作読了後に、少年時代に殺人を犯して弁護士になった人が実在すると知りました。その人に償いの気持ちはなかったようだから、遺族のことを思うと本作を読むのもつらくなる。事実は悲しい。御子柴のようであったなら。
読了日:05月28日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/10554323

■心にナイフをしのばせて (文春文庫)
中山七里の『贖罪の奏鳴曲』読了後に本書の存在を知りました。少年時代に猟奇殺人を犯して弁護士になった人が実在するとは。被害者の母親が記憶障害を起こしたり、名前の似た登場人物が居たり、この事件をモチーフにしていることが明白ゆえ、御子柴弁護士シリーズを娯楽作として楽しむことを申し訳なく思ったりも。第11章の「少年Aの行方」と文庫版あとがきを読むと頭に血がのぼる。御子柴があんなふうであるのは、償いの意識が皆無だった実在の元弁護士への戒めが込められているのかもしれないと思えます。更生するのはフィクションの中だけか。
読了日:05月31日 著者:奥野 修司
https://bookmeter.com/books/560992


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