夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『AIR/エア』

2023年04月15日 | 映画(あ行)
『AIR/エア』(原題:Air)
監督:ベン・アフレック
出演:マット・デイモン,ベン・アフレック,ジェイソン・ベイトマン,クリス・メッシーナ,
   マーロン・ウェイアンズ,クリス・タッカー,ヴィオラ・デイヴィス他
 
109シネマズ箕面にて仕事帰りに2本ハシゴの2本目。
前述の『仕掛人・藤枝梅安』を観たあと、スタバで時間を潰してから。
 
久しぶりではないでしょうか。ベン・アフレックマット・デイモンのコンビ。
ふたりは別々の道を歩みはじめたように思っていましたが、
こうしてふたりがまた同じ作品に関わるのはちょっと嬉しいですね。
 
バスケットボールといえばナイキのシューズだと思っていましたが、
知りませんでした。1980年代、3番手に甘んじていたことを。
1番はコンバース、2番がアディダス、そこから大差をつけられてナイキだったとは。
業績不振だったナイキから伝説のシューズ“エアジョーダン”が誕生するまでの逸話です。
 
1984年、シューズメーカーのナイキは人気がなくて低迷。
CEOのフィル・ナイトは、バスケットボール部門の立て直しをソニー・ヴァッカロに命じる。
ソニーは全米の高校バスケオールスターゲームを設立した人物で、
バスケを知る者であれば誰でも一目置く存在だったが、
なにしろカネのないナイキでは、引っ張りたい選手も引っ張れない。
 
25万ドルで3人採ろうという話が進むなか、
数々の選手のビデオを見まくっていたソニーが絶対にこれだと感じたのは、
まだNBAの試合に出た経験すらない無名の新人選手マイケル・ジョーダン
 
無名とはいえ、その資質にはコンバースもアディダスも目をつけており、
最低でも25万ドルを提示するだろうと代理人は言う。
ソニーは「3人は要らない。マイケル・ジョーダンひとりに25万ドル」とフィルに直訴。
そんなリスクは冒せないとフィルから拒否されるが、ソニーはあきらめず……。
 
ナイキが善良な企業なのかどうか私は知りませんけれど、こういう逸話は楽しい。
黒人選手を口説くなら、本人よりもオカンを落とすべきだとか。
代理人が取り次いでくれないから、オトンとオカンに直接会いに行くソニー。
やっとこぎつけたプレゼンの様子なども面白いです。
 
どんな賛辞を並べようとも、心が入っていなければ響かない。
キング牧師のスピーチについてなど、ソニーがここに至るまでの話には
いちいち「へ~」「ほ~」と感心してしまいました。
 
話自体も面白いのですが、当時の音楽と映像がてんこ盛り。
オープニングはダイアー・ストレイツの“Money for Nothing”でそこからもうウキウキ。
1980年代の洋楽が次から次へと流れます。
実際の映像もいろいろと映し出され、興味を惹かれること限りなし。
 
それまでシューズの最高収益が300万ドルだったナイキ。
この年“エアジョーダン”で1億何千万ドルもの収益を上げ、現在毎年40億ドル売り上げるとか。
すごすぎて想像でけん。
 
良いおこないには、自然と収益がついてくるそうです。

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『仕掛人・藤枝梅安2』

2023年04月14日 | 映画(さ行)
『仕掛人・藤枝梅安2』
監督:河毛俊作
出演:豊川悦司,片岡愛之助,菅野美穂,小野了,高畑淳子,小林薫,一ノ瀬颯,
   椎名桔平,佐藤浩市,篠原ゆき子,石橋蓮司,金井勇太,高橋ひとみ他
 
109シネマズ箕面にて、仕事帰りに2本ハシゴの1本目。
 
池波正太郎の生誕100年を記念してまず公開されたのが前作『仕掛人・藤枝梅安』でした。
とても面白くて、心待ちにしていた2作目。
前作に引き続き、河毛俊作監督がメガホンを取っています。
 
前作の最後で京に旅に出た藤枝梅安(豊川悦司)と彦次郎(片岡愛之助)。
梅安の目的は、幼い頃に彼を拾って鍼医に育ててくれた恩人・津山悦堂(小林薫)の墓に参ること。
ところがそこへ向かう途中、ある侍の顔を見た彦次郎が血相を変える。
 
彦次郎によれば、かつて彼が妻子とつましくも幸せに暮らしていた頃、
通りすがりのごろつきに妻が犯され、そのせいで気がおかしくなった妻は、
まだ乳飲み子だった我が子を道連れに首を吊った。
あのごろつきがいま目の前を歩いている侍だと言うのだ。
 
今にも侍に襲いかかろうとする彦次郎を制し、梅安が侍のあとをつけると、
なんとその侍も悦堂の墓参りにやってきたではないか。
 
梅安が侍に話しかけたところ、彼は松平甲斐守の家臣・峯山又十郎(椎名桔平)。
又十郎の父親が悦堂の患者だったらしく、梅安に丁寧に挨拶する。
彦次郎が殺したがっているごろつきが又十郎だとは思えずさらに探ると、
又十郎には双子の弟がいることがわかる。
 
その晩、裏稼業の元締め・白子屋菊右衛門(石橋蓮司)が、
又十郎から彼の弟・井坂惣一(椎名桔平)率いる無頼の浪人集団を殺してほしいと頼まれていた。
菊右衛門は井上半十郎(佐藤浩市)と佐々木八蔵(一ノ瀬颯)に仕掛を依頼するが、
報酬のあまりの安さに半十郎たちは断る。
 
入れ違いで菊右衛門のもとを訪れた梅安はこの仕掛を引き受けるのだが……。
 
前作より生々しいシーンが多くて、ちょっと引き気味で観ました。
善人と悪人を一人二役で演じる椎名桔平が腰を振っているときの顔がキモくて(笑)。
ああいうシーンは女性にはかなりキツイですね。
 
しかし話はやっぱり面白い。
このキモかったごろつきどもがバッタバッタと殺されるのは痛快。
奴ら相手に梅安と彦次郎が圧勝を見せてくれるのは嬉しい。
 
梅安と半十郎の因縁にはなかなか考えさせられます。
妻(篠原ゆき子)を寝取られ、殺された半十郎は梅安が憎くてたまらない。
梅安に想いを寄せる女中・おもん(菅野美穂)が半十郎に詰め寄られたとき、
あの人が私をなんとも思っていないことなんてわかっている、
それでも、あの人を好きでいることが私を救う、みたいなことを言うのがよかった。
相変わらず豪快なお手伝いさん・おせき(高畑淳子)には笑わされます。
 
2作で終わりかと思っていたら、次作もありそうですね。楽しみ!

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『ワタシの中の彼女』

2023年04月13日 | 映画(わ行)
『ワタシの中の彼女』
監督:中村真夕
出演:菜葉菜,占部房子,好井まさお,草野康太,上村侑,浅田美代子他
 
甲子園と映画のハシゴでへろへろになった翌日、おとなくしているべきところ、
晩は道頓堀まで笑福亭笑利さんのトークライブに行く予定だったから、
せっかく大阪市内へ出るのに映画を1本も観ないのはもったいない。
母を選挙に連れて行ったあと、十三の第七藝術劇場へと向かいました。
 
短編映画4本をひとつにした作品なのだそうです。
ちょうどいい時間だったから選んだだけですが、
大阪アジアン映画祭では本作の1つめの作品が“Japan Cuts Award”を受賞。
……と聞いてもどういう賞だかわかっていません。ごめんなさい。
 
監督は中村真夕、4本とも主演は菜葉菜
彼女が年齢も職業も異なる4人の女性を演じています。
 
第1話『4人のあいだで』。
コロナ禍、20年ぶりに連絡を取り合った大学の同級生3人がオンライン飲み会。
専業主婦のナナエ(菜葉菜)、パートナーと同棲中のフサエ(占部房子)、貧乏役者のコウジ(草野康太)。
ここには不在の女優サヨコの名前が出ると……。
 
第2話『ワタシを見ている誰か』。
写真家のカズヤ(好井まさお)はフードデリバリーのバイトもしている。
ある晩の配達先は、リモートワーク中のOLで30代後半のメイ(菜葉菜)の部屋。
ところがメイは自分で注文した料理なのにカズヤに食べてほしいと言い……。
 
第3話『ゴーストさん』。
20代後半の風俗嬢サチ(菜葉菜)は、帰宅途中のバス停でいつも同じホームレス女性を見かける。
彼女は60代のカヨコ(浅田美代子)で、サチはひそかに「ゴーストさん」と呼んでいた。
ある晩、言葉を交わしたふたりは、かつて同じ夢を抱いていたことを知り……。
 
第4話『だましてください、やさしいことばで』。
40代前半の盲目の女性トモコ(菜葉菜)は、ある日、母にかかってきた電話に応対。
弟の同僚を騙ってやってきた青年タケオ(上村侑)に金を渡す。
なりすまし詐欺だとわかっていながらタケオに話しかけるトモコは……。
 
いずれもコロナ禍での出来事を描いていて、孤独だったり希望だったり、
コロナ禍じゃなくてもあり得ただろうけどコロナ禍だからこそ、そんな気がします。
しかし私の場合、そもそもコロナに寄せた作品があまり好きではないため、
没頭できないまま話が進んでしまうのでした。

たとえば配達に来た男性がかねてから自分のことを撮影していたとか、怖いやん。
だいたい、配達人を家に上げて一緒に食事するなんていうこと自体、ないし。
 
思い返すと、私が菜葉菜を知ったのはやはりこのナナゲイで、
『どんずまり便器』(2012)を観たときでした。
あれからもう10年が経ったと思うとなんだか感慨深いものがあります。
普通の役を演じることが多くなった彼女を見ると、西田尚美とかぶる。
今のような普通の役じゃなくて、『ひみつの花園』(1997)のときの彼女が好きだったから。
 
などと思いつつ、本作ではちょっと居眠り気味で。申し訳ありません。

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『ノック 終末の訪問者』

2023年04月12日 | 映画(な行)
『ノック 終末の訪問者』(原題:Knock at the Cabin)
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:デイヴ・バウティスタ,ジョナサン・グロフ,ベン・オルドリッジ,
   ニキ・アムカ=バード,クリステン・ツイ,アビー・クイン,ルパート・グリント他
 
前述の『生きる LIVING』の後、同じくTOHOシネマズ梅田にて。
 
M・ナイト・シャマラン監督って凄いですよねぇ。
どんな評価を受けようともワケのわからないものをコンスタントに撮り続ける。
なんだかとっても楽しんでいらっしゃることはわかります。
だから、『シックス・センス』(1999)以降、必ず観てしまう監督です。
 
本作もワケわからん。
原作はポール・G・トレンブレイのベストセラー小説『終末の訪問者』だそうですが、
その映画化であることをなぜか伏せたまま製作が進められ、
発表時には小説と酷似していると盗作騒ぎになったとか。
原作を伏せておく必要があるとも思えず、そこからしてワケわからん(笑)。
 
人里離れた山小屋でのんびりと休暇を楽しむ家族は、
ゲイのカップル、アンドリューとエリックとその養子ウェン。
生まれたときに彼らに引き取られたウェンは、父親ふたりの存在を頼もしく思っている。
 
ウェンが表でバッタを捕まえていたところ、見知らぬ男が声をかけてくる。
いかついその姿にウェンが警戒する様子を見せると、
男はレナードと名乗り、一緒にバッタを捕って見せる。
少し警戒を緩めたウェンだったが、ほかに武装した男女3人も現れたものだから仰天。
 
話をしたいから家の中に入れてくれというレナードたち。
アンドリューとエリックは彼らの侵入を阻止しようとするが無理。
押し入られて縛り上げられてしまう。
 
レナードが言うには、彼ら4人はもともとの知り合いではなく、
終末のビジョンをそれぞれが見て自然に集まったらしい。
そして世界を終末から救うためには、アンドリュー、エリック、ウェンの中から1人、
犠牲となる者をアンドリューたち自身が選んだうえで、
これまたアンドリューたち3人のうちの誰かの手によって殺されなければならないと。
 
荒唐無稽な話としか思えず、アンドリューらはその要求を拒絶。
すると4人が順番に死ぬことを受け入れる様子を見せられるはめに陥り、
1人死ぬたびに世界中で津波や飛行機の墜落事故などが起きて……。
 
原作を読んでいれば、もう少しわかりやすいのかもしれませんが、
読んでいない私にとっては、そりゃもう目が点になるしかない話。
 
眠くはなりません。つまらなかったかと聞かれたらそんなこともない。
ただ、アンドリューやエリックが感じたとおり、「荒唐無稽」。
 
4人それぞれが何を表す人だったのかは最後に教えてもらえるけれど、
人類を救うためにゲイのカップルと養子のうちの誰かが犠牲にならなきゃいけない理由は何?
教えてくれないと全然納得できません。ここでLGBTを持ち出されても、私には理解不能。
そして、終末をもたらすのは誰なんですか。神なのか何なのか。
 
加えて、アンドリューが相当暴力的なため、気の毒だと思い切れなくて。
養子のウェンがアジア系というところも、最近の映画の傾向のように思えます。
いいんですけど、そこはハリウッド映画なんだから別に白人でいいのではという気が。
いろんな人種が共に平和に生きる世界を目指すということなのでしょうか。
 
お茶目なM・ナイト・シャマラン監督は、本作にも一瞬登場しています。
こういうところは好きなんですけどね。
いやまぁ、なんじゃこりゃと思いながらも全作観ているから、好きなんでしょ。(^^;

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『生きる LIVING』

2023年04月11日 | 映画(あ行)
『生きる LIVING』(原題:Living)
監督:オリヴァー・ヘルマヌス
出演:ビル・ナイ,エイミー・ルー・ウッド,アレックス・シャープ,トム・バーク,
   エイドリアン・ローリンズ,ヒューバート・バートンオリヴァー・クリス他
 
今季初の子園で勝ち試合を観たあと、TOHOシネマズ梅田で2本ハシゴ。
野球観戦中に飲酒しているから、また爆睡するかと思いましたが、大丈夫でした。
 
黒澤明監督の『生きる』(1952)をイギリスでリメイク。
脚本を担当したのは、ノーベル賞作家カズオ・イシグロ
なんか凄そうだけど、実は私はオリジナル未見です。
未見でこれを観ると、まるで最初からイギリス作品のように思えます。
 
1953年のイギリス・ロンドン
役所の市民課に初出勤した新人ピーター・ウェイクリングは、課長ロドニー・ウィリアムズのもと、
ピリピリとした空気の中で淡々と進められる事務処理にしばし呆然とする。
冗談などひとつも口にしてはいけない雰囲気だが、
紅一点のマーガレット・ハリスだけは軽口でピーターを和ませようとしてくれる。
 
英国紳士そのもののミスター・ウィリアムズは仕事一筋で何の面白みもない人間。
妻に先立たれたものの、慣れ親しんだ自宅に今は息子夫婦と同居している。
しかし息子の妻はこの辛気くさい暮らしに辟易している模様。
 
ある日、彼は末期癌に冒されていて余命半年、長くても9カ月だろうと宣告される。
数日間欠勤した彼を皆が心配していた折、マーガレットに遭遇して……。
 
鑑賞後にオリジナルのあらすじなどを調べました。
舞台が日本からイギリスに移っているだけで、忠実なリメイクに思えます。
カズオ・イシグロの脚本もおそらく素晴らしく、
それに基づいた映像は21世紀の映画とは思えないほど「昔の映画」風。
 
ビル・ナイが良いですよねぇ。彼以上にウィリアムズに適役だった人はいないでしょう。
生きることにさほど執着しているとは思えないような毎日を送っていた彼ですが、
余命を宣告されてひどく落ち込む。なのにそれを息子に打ち明けられない。
息子には息子の生活があり、きっと悩みもあるだろうから、迷惑はかけられないと。
病を患う人がこんな気持ちなのかと思うと、弟のことを思い出してつらくなります。
 
放置された土地に子どもたちが遊べる公園をつくってほしいと言いに来るご婦人方。
典型的なお役所仕事をしていたウィリアムズですが、どこの課もそれは同じこと。
ウチの担当じゃないよとか、あっちの課に話をするのが先だろうよとか、
とにかく自分の課から遠ざけようとあちこちの課をたらい回しにします。
だけど、余生をどのように過ごすべきか考えたウィリアムズが乗り出す最後の仕事。
 
彼が亡くなってから、彼の生き方、仕事の仕方に学ぼう、
二度と仕事を先送りにしない、よそへ回したりしないとそのときは誓ったのに、
人はすぐに忘れてしまう。覚えていても忘れたふりをする。
実際にはそんなことできるかと思ってしまうものなのでしょうね。
そこが悲しくもあり、でも公園で遊びまわる子どもたちの姿を見れば救われる。
 
急にポックリ死ぬのがいいと思っていましたが、弟の姿を見たり、本作を観たりすると、
人生の終わり方を考える時間があるほうがやはりいいのかもしれないと思う。

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