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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『サントメール ある被告』

2023年07月26日 | 映画(さ行)
『サントメール ある被告』(原題:Saint Omer)
監督:アリス・ディオップ
出演:カイジ・カガメ,グスラジ・マランダ,ヴァレリー・ドレヴィル,オレリア・プティ,
   グザヴィエ・マリー,ロベール・カンタレラ,サリマタ・カマテ,トマ・ドゥ・プルクエリ他
 
肥後橋で飲み会の前に、なんばパークスシネマで3本ハシゴ。
 
セネガル系フランス人の女性監督アリス・ディオップの長編デビュー作。
初監督作品でありながら第79回ヴェネチア映画祭銀獅子賞(審査員大賞)を受賞。
2016年に実際にあった事件とその裁判をモチーフにしたフィクションです。
 
サントメールとは、ドーバー海峡を渡ればイギリスというフランスの北部も北部、
パ=ド=カレー県に属する町なのだそうです。
ドーバー海峡って、フランスではカレー海峡というのですね。知らなんだ。
 
大学で文学の教鞭を執る女性ラマは作家でもある。
若い母親が不倫相手との間に生まれた娘を殺した罪に問われている事件について
次の著作で取り上げようと、裁判を傍聴することに。
 
被告のロランス・コリーは24歳の大学生。
セネガルからフランスに留学し、57歳の既婚男性リュック・デュモンテと恋仲に。
その後、妊娠、出産。生後15カ月だった娘リリーを浜辺に置き去りにし、
潮に流されたリリーは亡くなってしまった。
 
ロランスはその事実を認めてはいるものの、なぜこんなことになったのかわからないと述べる。
裁判を通じてその理由を知りたいと、まるで他人事のよう。
一方のリュックも同様に、わからないと言うばかりで……。
 
法廷劇だと思っていたので、まず主人公がロランスではなくラマであることに戸惑います。
大学での仕事も安定していて、作家としても人気がある。
夫のアドリアンは優しくて理解のある男性で、夫婦仲にも問題なし。
なのになぜラマがこんなにも不安げなのかと思ったら、実母との関係がいびつらしい。
 
身体的に虐待を受けていたわけではないが、母親に無視されていたラマ。
母親の視界には自分がいないかのような扱いを受けていながら、
成績優秀でいることを求められていたのか、実際ラマは優秀。
実家に行けば、ラマの写真が誇らしげに飾られていて、複雑な心境にならざるを得ません。
 
ロランスの境遇に自分と似たものを感じて、この裁判を傍聴しはじめたラマは、
その場にいたロランスの母親とも知り合い、平静ではいられなくなります。
 
面白い題材のはずなのですが、睡魔に襲われたところがかなりあります。
これは言っちゃいけないことかと思うけど、私はロランスに魅力を感じられません。
田舎で勉強を頑張って都会に出てきた美人でもない姉ちゃんが都会で不倫。
相手もホンマに50代なのかと思うようなしょぼくれた爺さんだし。
申し訳なくも「見た目」で引いてしまって、話にのめり込むことができませんでした。
 
いちばん驚いたのは裁判そのもののおこなわれ方
陪審員じゃなくて参審員というのですね。
裁判が始まってからその場で参審員候補者の名前と経歴を挙げて、検事弁護士が却下するかどうかを答える。
そして裁判は裁判長自らが進行して、被告や証人にすべて聴く。
裁判長が尋ねるのは事実そのもののみではなくて、裁判長の思いも語られるから、
「どういうつもりやねん」みたいな責めの言葉も含まれていたりします。
 
移民の問題は私には理解しがたい、共感しづらい部分だらけです。

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『君たちはどう生きるか』

2023年07月25日 | 映画(か行)
『君たちはどう生きるか』
監督:宮崎駿
声の出演:山時聡真,菅田将暉,柴咲コウ,あいみょん,木村佳乃,竹下景子,風吹ジュン,阿川佐和子,
     大竹しのぶ,ヒコロヒー,滝沢カレン,カンヤダ,小林薫,國村隼,火野正平,木村拓哉他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて鑑賞しました。
 
宮崎駿監督が『風立ちぬ』(2013)以来10年ぶりに手がけた作品だというのに、宣伝いっさいなし。
劇場やテレビで予告編を目にすることもなければ、声のキャストも主人公役の山時聡真しかわからない。
これだけ情報があふれている時代に宣伝皆無だとどうなるのかという実験的な部分があったようで、
この状態がすでにエンターテインメントだとおっしゃる。
しかし本作に関わったすべての人が黙っているのも大変だったでしょうね。口かたいわ(笑)。
さて、この目論見は当たったかどうか。興行収入はどうなっていますか。
 
少年・牧眞人の母親・久子は、太平洋戦争のさなかにを命を落とす。
軍需工場を経営する父親・正一は、久子の妹・ナツコと再婚。
正一は工場もろとも久子とナツコの実家に疎開することに決める。
 
疎開先の屋敷で見かけるアオサギがいるのだが、ただの鳥とは思えない。
眞人に攻撃的な態度を取るアオサギを追いかけてみると、洋館にたどり着く。
中へ入ろうとしたところを屋敷に仕えるばあやたちに止められ、事情を聴くと、
洋館を建てた大叔父は本の読み過ぎで頭がおかしくなり、この地に籠もった後、忽然と姿を消したのだと言う。
 
ある日、妊娠中のナツコが屋敷からいなくなって大騒ぎに。
それより前に彼女が森の中へ入るところを見た眞人は、
ばあやのうちのひとり、キリコと共に、ナツコを探しに森へと足を踏み入れる。
 
アオサギに先導されて着いたのは「下の世界」。
いつしか見えなくなったばあやのキリコに代わり、現れた若いキリコが眞人を助けてくれる。
また、火を操る少女・ヒミと知り合い、彼女の案内でナツコの居場所を探し当てるのだが……。
 
と書いてみましたけれど、さっぱり意味がわかりません。
タイトルにあるのは吉野源三郎が1937(昭和12)年に上梓した小説で、
だからといってこれが原作というわけではなく、久子が眞人に残した小説がこれでした。
 
宮崎駿の絵だなぁという感じだし、意味がわからないからといって退屈でもない。
でも、ヒミが実は眞人の母親だったりするし、「上の世界」と「下の世界」が何を象徴しているのかもわかりません。
だって、宮崎監督ご自身が試写の後に「自分でも訳がわからないところがあった」と発言したという噂ですから、
撮った本人がわからないものをこっちがわかるはずもなく。
 
好きに解釈すればいいのでしょうが、好きに解釈するために何度も観ようとは思わない。
私はこの1回きりでいいです。
 
声を担当している俳優は誰なのか、すぐにわかるのはナツコ役の木村佳乃
大叔父役の火野正平もわかります。父親役がキムタクだというのもわりとすぐわかる。
けれど、アオサギ役の菅田将暉はイメージ違いすぎてわかりませんでした。
キリコの声もいわれてみれば柴咲コウ。気づかなかったけど。
ヒミの声を担当しているのがあいみょんだというのだけは明記されていますが、意外です。
声だけ聞いていてもわからんもんだなぁ。
 
私が観たのは何の割引もない平日の夕刻の回。
言うほど客は入っていなかったけど、興収ランキングは『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を抜いたのですね。
最終的にはどこまで数字が伸びるのか。難解でも宮崎駿は宮崎駿、客は入るか。

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『マッド・ハイジ』

2023年07月24日 | 映画(ま行)
『マッド・ハイジ』(原題:Mad Heidi)
監督:ヨハネス・ハートマン
出演:アリス・ルーシー,キャスパー・ヴァン・ディーン,マックス・リュートリンガー,
   デヴィッド・スコフィールド,アルマル・G・サトー,ケル・マツェナ他
 
シネ・リーブル梅田にて3本ハシゴの3本目は、ぶっ飛びのスイス作品。
 
世界中で愛される児童書をモチーフにしたB級作品といえば、
先日観た『プー あくまのくまさん』が記憶に新しい。
あっちはどんな口コミが広がっているのだか、高校生が連れもって観に来ていましたが、
こっちはもう少しオトナな感じ、もともとの映画好きが集っているようです。
あ、そっか。R18+指定なのか。ならば高校生が群がるのは無理ですね。(^^;
 
『アイアン・スカイ』(2021)のプロデューサー、テロ・カウコマーが手がけています。
『アルプスの少女ハイジ』をモチーフにしたバイオレンスアクションって、どないやねん。
字幕版と吹替版が公開されておりまして、私は字幕版を鑑賞。
ドイツ語かなと思ったら英語ではないですか。驚いた。
 
スイスの大統領マイリはチーズ製造会社の社長でもある。
自社のチーズ以外を食べることは許さず、独裁者として君臨しつづけているが、
楯突けば即殺されることが確実なため、民衆は誰も反抗しない。
 
密かに極上のヤギチーズを造っていたヤギ飼いのペーター。
ある日それがバレて、司令官のクノールに処刑される。
ペーターの恋人であるアルプスの女子ハイジはショックで暴れて刑務所送りに。
 
同日に収監された見るからにひ弱そうなクララと同房に放り込まれたハイジ。
そこにはプロレスラー顔負けの女性囚人がいて、ハイジを痛めつける。
囚人からの虐めと看守からの拷問により意識が朦朧とするハイジだったが、
それでも毎食提供されるマイリのチーズに手を出そうとしない。
 
あるとき、看守長のロットワイラーが気を抜いた隙に反撃に出たハイジ。
見事ロットワイラーの喉を掻き切って脱獄に成功。
ペーターを殺され、祖父が住む山小屋を焼かれたハイジは、
民衆をチーズで洗脳するマイリを倒すと決め、修行を開始するのだが……。
 
なんでR18+かって、そりゃもう冒頭からハイジとペーターは裸でベッドにいるし。
しかもペーターは黒人なんです。
人魚姫が黒人であるよりも、アルプスのヤギ飼いが黒人であるほうが斬新かも。
 
まぁとにかくグロくて下品(笑)。
指名手配されたハイジの顔写真を見た兵士が、「俺の下半身がヨーデルを歌うぜ」とか言って、
そこへ登場したハイジは下半身を槍でひと突き、「歌ってみな」。ワロた。
クノール役のマックス・リュートリンガーなる俳優は、よくもこんな役を引き受けましたね。
もともとコメディアンか何かなのでしょうか。
ロットワイラー女史に串刺しのソーセージをケツの穴に突っ込まれて喜んでいます。
 
こんな描写てんこ盛りなので、普通の人には鑑賞をお勧めできません。
しかし、意外と脚本がしっかりしていると思うのです。
B級ではあるけれど、『プー あくまのくまさん』とは比較にならないぐらい面白い。
モチーフとはもはやどういうことかわからなかったプーさんに比べ、ちゃんとモチーフ。
「クララ、立て!」のシーンなんて、オイっ、今かよっと思って笑いました。
 
マイリに裸でお茶を出す召使いを演じているのは誰なのか気にも止めていませんでしたが、
ミロ・アモレという裸体パフォーマンスアーティストのようですね。
と書いてみたところで、「へ~」というしかありませんが。(^^;
 
なんだかんだで面白かった。ご興味おありの方はどうぞ。

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『CLOSE/クロース』

2023年07月23日 | 映画(か行)
『CLOSE/クロース』(原題:Close)
監督:ルーカス・ドン
出演:エデン・ダンブリン,グスタフ・ドゥ・ヴァール,エミリー・ドゥケンヌ,レア・ドリュッケール,
   イゴール・ファン・デッセル,ケヴィン・ヤンセンス,イゴール・ファン・デッセル他
 
シネ・リーブル梅田にて、3本ハシゴの2本目。
 
予告編を観てから気になっていたベルギー・オランダ/フランス作品。
ルーカス・ドン監督による第75回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作とのこと。
カンヌってそもそも小難しいイメージがありますから、
そこに惹かれて観に行くことは私にはないのですけれど、これはよかった。
 
レオとレミは幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた大親友。
家族ぐるみのつきあいで、友だちというよりは兄弟に近い仲。
 
中学校に入学したふたりは仲が良すぎるのを同級生から指摘され、
まるでつきあっている恋人同士のようだとからかわれる。
 
そう言われてもまるで気にしないレミだったが、レオは次第に距離を置きはじめ、
ほかの同級生たちと話し込んだり、アイスホッケーチームに加入したり。
ふたりきりのときはこれまでと変わらぬように努めるものの、人前ではレミを避ける。
 
ある朝の登校時、レオはいつもより早く出かけてレミに待ちぼうけを食らわせる。
避けられていることを知ったレミはレオに怒り、取っ組み合いの喧嘩に。
やがて、毎晩レミの家に泊まりに行って同じベッドで寝ていたのもやめるようになるのだが……。
 
レオ役のエデン・ダンブリンとレミ役のグスタフ・ドゥ・ヴァールは
いずれも本作が映画デビュー作らしいですが、透明感が凄い。
 
当たり前のように一緒に過ごしてきたし、それを意識したこともなかったのに、
同級生たちから好奇の目で見られて耐えられないレオ。
レミのことは大好きなのに、つれない態度を取ってしまいます。
 
『怪物』のふたりに少し似ているようにも思いますが、
『怪物』のふたりがお互いに恋愛感情を抱いていることを匂わせていたのに対して、
本作のレオとレミがどうだったのかはわかりません。
でも、お互いをかけがえのない存在だと思っていたのは確か。
 
レミが自殺して、自分のせいだと思い詰めるレオ。でもそれを口に出すことはできません。
悔いる気持ちのみなのかと思われたけど、レミが何か残したかどうかを聞くシーンでは、
自分が責められる証拠となるものを残したかどうか確認したかったように見えなくもない。
 
レミのことを理解しているのは自分だけ。
自分が彼を死に追いやったのに、誰かがレミのことを偲ぶと、わかっていないくせにと腹が立つ。
台詞にはないレオの気持ちが十二分以上に感じられる表情がつらい。
 
息子がなぜ亡くなったのかわからない両親が息子を想うシーンも悲しすぎます。
時にまかせて心が癒えるときを待っているのに、息子を思い出す事柄がありすぎる。
 
意を決してレミの母親に打ち明けに行くことにしたレオ。
一瞬、許せないと思ったであろう母親の表情とその後のシーンには胸を打たれます。
 
「珠玉」という言葉が似合う作品です。

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『小説家の映画』

2023年07月22日 | 映画(さ行)
『小説家の映画』(英題:The Novelist's Film)
監督:ホン・サンス
出演:イ・ヘヨン,キム・ミニ,ソ・ヨンファ,クォン・ヘヒョ,
   パク・ミソ,チョ・ユニ,キ・ジュボン他
 
観た順番にUPするのが常ですが、
 
で、その前に戻って連休最終日、シネ・リーブル梅田にて、3本ハシゴの1本目。
 
はっきり言って嫌いです、ホン・サンス監督。大嫌いと言ってもいいかも。
世間的には評価が高くて、カンヌやらベルリンやらの国際映画祭の常連。
でも私は嫌いだな。名前を聞いた瞬間に顔をしかめてしまうぐらい。
なのになぜ観に行くのか。観なきゃ文句も言えないから(笑)。
 
本作も第72回ベルリン国際映画祭で審査員大賞に当たる銀熊賞を受賞しています。
あ、そう。
 
著名な小説家ジュニは、しばらく何も書いていない。書けないのだ。
疎遠になっていた後輩がカフェ併設の書店を開いていると聞きつけて訪ねる。
 
ひとしきり話した後、後輩に見送られて出かけた観光タワーで、
因縁めいた関係にある映画監督とその妻とばったり会う。
さらにその夫婦と散歩に出かけた公園で、人気女優ギルスを見かける。
 
ジュニはギルスのことをかねてから良い女優だと思っていた。
監督がギルスに声をかけると、ギルスのほうもジュニのことを知っていて意気投合。
監督夫婦が帰途につき、あとに残ってもう少し話をすることにしたジュニとギルス。
 
ジュニはギルスを起用して短編映画を撮ってみたいと言う。
ギルスの夫の甥が映像学校で学んでいるらしく、彼がカメラを回すことになるのだが……。
 
その会話が特に面白いとは思えなくて、気がつけば寝ていることもよくあります。
 
それ以上に嫌なのは、実生活での不倫相手を起用しつづけていること。
私は不倫断罪派ではないので、不倫自体については何とも思いません。
だけど、作品の中で「彼女は綺麗」だとか「彼女は純粋だから」とか、
よくも臆面もなく彼女に対する台詞を言わせつづけられるなぁと呆れる。
 
でも作品の中でこんなことを毎度聞かされるのはうんざりするし、
それを受け入れているキム・ミニにもガッカリ。
 
不倫相手を主演に起用して撮った作品ですぐに思い出すのは平野勝之監督の『由美香』(1997)です。
サンス監督はAV(アダルトビデオ)と一緒にするなと言うかもしれないけれど、
私はサンス監督作品よりもそっちのほうに心を動かされます。
 
ただ、取り繕った会話というのは実際こういうものだろうなと思うし、
この辺りも評価される要因なのかなという気はします。
 
また、本作を見て「もったいない」という言葉については考えさせられました。
自分でもったいないと思うのも言うのもいい。
でも、他人が「人生休憩中」の誰かのことを見て「もったいない」と言うのはどうなんだか。
その人の生き方が間違っているかどうか、あなたが口出しすべきではない。

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