先に読んだ著者の「千姫狂乱」で淀君を馬鹿呼ばわりしていたので、この本を読んでみたくなった。この本では一言で言えば、勝気で闘争心が強く気位の高い女で可愛げがない。性的に成熟する淀君をベースにして、秀吉の幼少の秀頼を思う気持ちから驚くべき残虐行為も平然と行うというお話。
秀吉は十数人の側女を持ちながら、横恋慕した信長の妹お市の方に生き写しの淀君も手に入れた。好色では人後に落ちなかった秀吉は、最初の房事の折、淀君の肌を撫でながら感激を味わう。
一方、淀君の男関係は、意外に地味なようだった。姫育ちで秀吉の庇護を受けると男との接触も少ない。好色な男も一杯いるが手が出せないし、淀君の気位の高さからも無理な話。
淀君が最初に男を知ったのは、元の名お茶々のときだった。北ノ庄城落城のとき両親の柴田勝家とお市の方の自刃を知り、その悲しみの中、秀吉の庇護を求めて落ちる途中小用に立って草むらにしゃがんでいた時だった。
筋肉質の屈強な男が現れ 裾がはだけたままの尻に指を入れられ、おまけに男の怒張したものを握らされた。そのときは、侍女の呼ぶ声で男は貫くことを断念した。
しかし、男に貫かれる夜は意外に早くやってきた。秀吉の北国遠征からの帰還に合わせて、お茶々は侍女たちに念入りに体を洗われて柔らかい夜具に横たわった。
そのとき謎の男が現れた。執拗な指や舌の愛撫を受けながら、遂にお茶々は痛みを伴って男のものを受け入れた。こういう数行の描写ではリアリティに欠けて実感が伴わないが、本の中ではかなり詳細に淫靡に表現してある。
しかし、秀吉が帰還するというのに図々しくも忍び込んでくるとは大胆な男だった。それもそのはず、秀吉が帰還途中どこからか矢が飛んできて馬の尻に突き刺さり馬が暴走した。秀吉は落馬。医者から安静を求められた。多分、下手人はこの謎の男なのだろう。
秀吉は戦仕事で忙しい。お茶々を抱きたくても抱けない日が続く。お茶々のほうも謎の男の性の手ほどきで、体の疼きを溜め込んでいた。
前田玄以の屋敷で閑居の慰めに「閨房秘事」とか「京景色十二月」というタイトルの枕絵を眺めていた。夢中になっていたのか背後の人物に気がつかなかった。背後の人物もその枕絵を覗いたのだろう、はっとした気配を感じたのか、お茶々は振り返った。乳母の倅、治長だった。
爾後、治長はお茶々の犬となって、お茶々の秘所を舐める役割になる。お茶々は決して治長に体を許さなかったが、秀吉の死後治長は念願を遂げた。
淀君はどんどん淫乱になって行くが、秀吉はこれまたどんどん年をとっていく。晩年の秀吉は悪魔になったみたいだ。秀頼の将来のためには養子の秀次が邪魔。淀君との寝物語にそそのかされたのか、秀次を切腹させ罪もない女子供三十八人を処刑した。子種がなかったといわれる秀吉に秀頼が生まれたのが不思議だという説もあるらしい。この本では、秀吉との房事のあと、例の謎の男が現れて種付けしていったように書いてある。スケベ男がスケベ女に翻弄されたという印象で、女は強いなあと思わざるを得ない。