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シドニー・ルメットの最初の映画1957年「十二人の怒れる男」は、あまりにも有名で名作だ。私の子供が中学生の頃、テレビでこれを観て感動したと言っているくらいだから。陪審員控え室だけのドラマに緊迫感を盛り上げるのは容易ではない。そのシドニー・ルメットが82歳のときに制作したのがこの映画だ。
「十二人の怒れる男」ほどの出来栄えではないが、特異なキャラクター、ニュージャージーでは名の売れたルッケーゼ・ファミリーの一員ジャコモ“ジャッキー・ディー”・ディノーシオ(ヴィン・ディーゼル)が自ら弁護をすると言う異色の法廷になった。これは実話に基づいたもので、法廷でのやり取りは実際のものだという字幕が入る。
このジャッキーという男、どこか憎めないところがあって、判事にたしなめられるが程好い下ネタも交えて陪審員の心に食い込み始めていた。検察側も陪審員の様子を見て危機感を抱く。検察は、明確な証拠を示さないといけないが、弁護側はそれに対して合理的な疑いを明らかにすればいい。
検察は、潜入捜査官やFBI、マフィアから寝返った男を証人に立てた。しかし、ジャッキーや顧問弁護士のベン(ピーター・ディンクレイジ)のユーモアを交えた追求に形勢はあやしくなる。評決はどうなるんだろうか? 長期の裁判が終わろうとしていた。
この映画のオープニングでは、ジャッキーがベッドで縁戚の男に撃たれる場面がある。そのバックに流れるのが、Louis Primaの「When you're smiling」で、これは洒落のつもりなんだろうか。殺されても微笑みなさい、なんてね。
普通は荘重なオーケストラのBGMだろうけど、このスィングするジャズ・ヴォーカルも画面に合っているような気がする。ともかく眠くならなかった映画ではある。
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その「When you're smiling」をどうぞ!
Louis Prima - WHEN YOU'RE SMILING
監督
シドニー・ルメット1924年6月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。2011年4月没。
キャスト
ヴィン・ディーゼル1967年7月ニューヨーク生まれ。
ピーター・ディンクレイジ1969年6月ニュージャージー州モリスタウン生まれ。