戦争映画で国に逃げ帰る軍隊を描いたのを観た記憶がない。負け戦の様子なんて誰も観たくない。それでも撤退は人間の本性が現れる場面でもある。イギリス軍兵士が「フランス兵はダメだぞ」と乗船をさせないとか。
フランスのダンケルクに追い詰められたイギリスとフランスの軍隊。姿が見えないドイツ軍からの銃撃。空からの爆弾投下。Uボートが狙う帰国兵満載の駆逐艦。ドイツ軍から見ればまるでゲーム。射撃練習とも言える。
イギリスの軍隊は、猫以下の集団になり下がる。猫は激しく威嚇するが、この軍隊はなにもしない。唯一空軍3機の編隊がドイツ軍機を撃ち落とすが。兵士の救出には民間のボート軍団が向かう。軍団と言っても10隻に満たない。この映画、本当に迫力がない。
IMAXで見ると迫力があるという人もいるが、迫力のある映画は自宅のテレビで見ても感じるものだ。テレビ界出身の若手のフィオン・ホワイトヘッドが、右往左往しているにすぎない。
フランスをのけものにする場面を作ったせいか、最後にはボルトン中佐(ケネス・ブラナー)がフランス軍を待つために残るという場面も作るはめになった。
愛機も被弾してエンジン・ストップのファリアー(トム・ハーディ)は、グライダーのように滑空して浜辺に着陸。火を放ってドイツ軍に投降。
ダンケルクの実際のところはどうだったのか。1940年ドイツ軍の戦車や航空機などの機動力と80万人の勢力で、フランス本土最北端のダンケルクに英仏軍を追い詰める。英仏軍40万人のうち36万人が帰還成功。撤退作戦としては成功したと言える。
残り4万人の内訳は、戦死者1万人、捕虜3万人だった。日本の天皇直属の最高統帥機関だった大本営ならどうしたのかと思ってしまう。アッツ島で米軍の総攻撃に敗れた日本守備隊の全滅を「玉砕」と美化するような大本営だから「全員玉砕せよ」なんて言いかねない。さきの戦争で戦死者310万人のうち玉砕で死んだのは2百数10万人とも言われるからだ。
イギリスのチャーチル首相は、全員救助を敢行した。当時ドイツは航空機を101機を持っていたが、英仏軍は177機の保有だった。映画の場面ではドイツ軍は映らないし、英軍の飛行機も3,4機で迫力ないことおびただしい。まあ、製作費をけちったとしか思えない。
監督
クリストファー・ノーラン1970年7月イギリス、ロンドン生まれ。
音楽
ハンス・ジマー1957年9月ドイツ、フランクフルト生まれ。1994年「ライオン・キング」でアカデミー作曲賞を受賞。
キャスト
フィオン・ホアワイトヘッドイギリス生まれ。テレビ界の出身。
ケネス・ブラナー1960年12月イギリス、北アイルランド、ベルファスト生まれ。
トム・ハーディ1977年9月イギリス、ロンドン生まれ。