高く評価されるこの映画、私が観たのはNetflixで。パソコンでドラマや映画を楽しむのは午後9時ごろからで、夕食時のアルコールのせいもあって観ているときに居眠りも多い。したがってこの映画も二度観になった。
まずタイトルに迷う。犬の力? 犬は出てくるがさして重要でもない。最初に頭に浮かんだのは、メキシコの麻薬カルテルのお話、ドン・ウィンズロウ著「犬の力」だった。欧米人が「犬の力」という言葉を使うには何か意味があるのではないか。 と思い調べてみた。
聖書では、犬は汚らわしいものとなっていて、旧約聖書に犬の力の表現があるそうな。その意味するところは、汚らわしい犬から転じて、傲慢、意地悪、嫉妬、不埒、聖書の詩篇「私の魂を剣から、私の命を犬の力から救い出して下さい」から採られており「犬」は邪悪を意味していて、その邪悪を演じるのはフィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)。
物語は1925年モンタナの牧場。経営しているのはバーバンク兄弟。兄フィルはイエール大学出で、カリスマ性と威圧的な態度でカウボーイたちをまとめる牧童頭を務める。
弟ジョージ(ジェシー・プレモンス)は口下手ではあるが誠意のある態度を示し、きちっとした服装でいわゆる営業と会計を担っている。
弟のジョージは、街でレストランを経営するローズ(キルスティン・ダンスト)に思いを寄せている。それをフィルは、「あんな女と付き合うな」と一蹴している。それでもジョージはローズと結婚した。
ジョージの大きな家に移り住んだローズと息子のピーター(コディ・スミット=マクフィー)に嫌がらせで攻撃するのがフィルだった。ローズは酒浸りになるし、およそ男らしさに欠け中性的な外科医志望のピーターも、カウボーイから、からかいの対象にもなる。
落ち着かない日々が続くが、フィルがピーターに乗馬を教えはじめてから雰囲気が変わっていく。お互いに信頼を得たとき、フィルは怪我の悪化で死亡する。この怪我は去勢手術の時負ったもので、炭そ菌に感染したものだった。
ローズとジョージは、ほっとした雰囲気だが、ピーターは悲しみに暮れていた。聖書の「剣と犬の力から、わたしの魂を解放したまえ」という文言をじっと見つめるのだった。
第78回(2021年9月)ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に出品され銀獅子賞を受賞した。
監督
ジェーン・カンピオン1954年4月ニュージーランド生まれ。映画界で世界的に成功した女性監督の一人といわれる。
キャスト
ベネディクト・カンバーバッチ1976年7月ロンドン生まれ。
キルスティン・ダンスト1982年4月ニュージャージー州うまれ。
ジェシー・プレモンス1988年4月テキサス州ダラス生まれ。。
コディ・スミット=マクフィー1996年6月オーストラリア・メルボルン生まれ。
追って、ジョージ役を演じたジェシー・プレモンスは「もう終わりにしよう」という映画で賞賛されている。これは難解な映画である。