高齢の俳優によるコメディ・タッチの涙ボロボロのロマンス映画。クロード(ブルース・ダーン)は年寄りの特権、自由気ままを親友シェーン(ブライアン・コックス)と謳歌していた。そこに飛び込んできたのは、娘セルマ(シェンナ・ギロリー)の夫カリフォルニア州副知事アディソンが辞任するというニュース。理由が腹立たしい買春ときた。
そこへ更にかつて演劇評論の記事を提供していたモントレー新聞から、元副知事の情報が欲しいと言ってくる。なんだかんだのやり取りのうち、電子版の話になり記事をスクロールしているとき、舞台女優リリー(カロリーヌ・シロン)がアルツハイマー病の記事にクロードが目を止める。編集長の話など馬耳東風、そそくさと帰宅。クローゼットの棚から段ボール箱を取り出し、かつて愛し合った頃のリリーとのツーショットの写真に手を触れる。「今でも愛しているよ」と呟く。
リリーが老人ホーム「ロングウッド」で暮らしているのがわかる。クロードはアルツハイマー病患者と偽って、その老人ホームに入る。リリーに近づくが、当然クロードとは判らない。大学生の孫タニヤ(セレナ・ケネディ)は、父親アディソン元副知事のスキャンダルに嫌気がさし父親を軽蔑している。父親の低俗な冗談を嫌い家出をして、クロードの家にやってくる。
老人ホーム側の入所者の娯楽として劇団を招く計画を変えさせ、タニヤ所属の大学演劇部が登場することになる。演目は、シェイクスピアの「冬物語」。勿論タニアも演じる一人。セリフを意識的に棒読みして、リリーの舞台女優としてのプライドを刺激する。案の定リリーは感情を込めて往年の姿を再現する。盛大な拍手とともに、クロードを認識する。喜びに震え、かつてリリーと踊った曲ジョージ・ガーシュインの「Embraceable you抱きしめたい」が部屋中に満ちる中、リリーの手を取った。しかも、わが娘セルマと孫のタニヤもクロードの家に移り住むことになる二重の喜びを味わう。ハピーでジンとくる映画だった。それでは「Embraceable you抱きしめたい」をエラ・フィッツジェラルドで聴きましょう。
キャスト
ブルース・ダーン 1936年シカゴ生まれ。演技派で重宝される。娘に力のあるローラ・ダーンがいる。
カロリーヌ・シロル 1949年パリ生まれ。2007年「エディット・ピアフ愛の讃歌」でマレーネ・ディートリッヒを演じた。
ブライアン・コックス 1946年スコットランド生まれ。
セレナ・ケネディ アイルランド生まれ。2017年から演劇活動。
シェンナ・ギロリー 1975年イングランド、ノーサンプトンシャー生まれ。