COM 1970年4月号掲載
今、気が付いた、4月号だから 「巣立ち」 がテーマなのね。(いまさら) あすな氏 のその後の作風がCOM誌上で初めて見られた記念すべき作品。
あらすじ
俺とあんちゃんの生活はけんかの連続だ。味噌汁の味が薄いといっては取っ組み合い、バイトしてあんちゃんの欲しがっていたカフスボタンを買ってあげては、そんな金があったら貯金せぇとしかられ、大家さんや同じアパートの人たちも呆れ顔だ。
ある日、俺は就職が決まって戸籍謄本を貰ってきたら---兄貴は35歳、俺は15、20も違う兄弟なんておかしいと思うとった ! ほんとの兄貴じゃない、よう調べたらあんちゃんは俺の死んだ親父の弟じゃないか
くってかかる俺に、
「血迷うな、黙って俺の話も聞け !」
というあんちゃんだが、俺は悔しいんや、本当のあんちゃんだとだまされていたことが・・・本当のあんちゃんだと思って甘えていたそんな甘ったれの俺が悔しい !
俺たちは本気で殴り合った。
「俺たち はぁはぁ 本気でけんかしたの初めてじゃないか」
「ああ・・ぜぃぜぃ」
茂よ-おれとおまえの生活はけんかの連続だった、けどそれは俺たちにとってほんの遊びだったんだ。けれど初めて本気で向かってくるお前に-俺はおとなになったお前を感じた。あんな ちび がよぅ。
茂が赤ん坊の時からの思い出が蘇る。背負って仕事した日々、けんかしてブタ箱に入れられても茂の世話を人に任せなかったっけ。
俺の兄は女房に死なれ仕事も失敗して、まだ赤ん坊の茂を俺に託す電話をした後自殺してしまったのだ。
死んでいる兄に思わず殴りかかり、あんたが生き返ろうともこの子は決して渡さんと叫んだあの日。
「おこっとるんか ? まだ」 (茂)
「・・・・ん ?」
茂は泣いているようだ。俺は後ろを振り向けない。
後の 「哀しい人々」シリーズ の原型となる趣 (おもむき) の作品です。それまで あすな氏 のリリカル少女マンガばかり見ていた私には意外な作品でした。大体オトコしか出てこないし。
でも、当時のCOMにはこういった叙情的人情的作品は結構多くて、それは私は知らないけれど ある時期の文学青年の書く小説 のようなものなんでしょうか。自分のアイデンティティーを表すのに、小説や音楽や絵画とともにマンガもその表現の一つに成り得るとやっと考えられるようになった時代でした。
あすな氏はずっと前からこういったものを描きたかったんだろうか、と今見ると感慨深いです。
いや、少女マンガだって好きで描きたかったはずです。堂々たる体躯に似合わず繊細な神経と驚異的な絵画表現力を持っていた あすなひろし氏 だもの。でも、この頃から少年誌や青年誌、女性週刊誌への掲載も増えて、純粋な少女マンガ誌に掲載される作品が少なくなってきています。
COMの時代 (あすな作品は1968年~1971年に掲載) はあすな氏にとっても転換の時期だったのでしょうか。
なお、この号には 「漫画家70人アンケート」 (本当は60人) として当時30歳のあすな氏の回答も載っています。が、特徴的な筆文字で書かれている答えは簡単であっさり、(あんまり真面目に答えていないとも言う) 余人にはよく分かりません・・・。
今、気が付いた、4月号だから 「巣立ち」 がテーマなのね。(いまさら) あすな氏 のその後の作風がCOM誌上で初めて見られた記念すべき作品。
あらすじ
俺とあんちゃんの生活はけんかの連続だ。味噌汁の味が薄いといっては取っ組み合い、バイトしてあんちゃんの欲しがっていたカフスボタンを買ってあげては、そんな金があったら貯金せぇとしかられ、大家さんや同じアパートの人たちも呆れ顔だ。
ある日、俺は就職が決まって戸籍謄本を貰ってきたら---兄貴は35歳、俺は15、20も違う兄弟なんておかしいと思うとった ! ほんとの兄貴じゃない、よう調べたらあんちゃんは俺の死んだ親父の弟じゃないか
くってかかる俺に、
「血迷うな、黙って俺の話も聞け !」
というあんちゃんだが、俺は悔しいんや、本当のあんちゃんだとだまされていたことが・・・本当のあんちゃんだと思って甘えていたそんな甘ったれの俺が悔しい !
俺たちは本気で殴り合った。
「俺たち はぁはぁ 本気でけんかしたの初めてじゃないか」
「ああ・・ぜぃぜぃ」
茂よ-おれとおまえの生活はけんかの連続だった、けどそれは俺たちにとってほんの遊びだったんだ。けれど初めて本気で向かってくるお前に-俺はおとなになったお前を感じた。あんな ちび がよぅ。
茂が赤ん坊の時からの思い出が蘇る。背負って仕事した日々、けんかしてブタ箱に入れられても茂の世話を人に任せなかったっけ。
俺の兄は女房に死なれ仕事も失敗して、まだ赤ん坊の茂を俺に託す電話をした後自殺してしまったのだ。
死んでいる兄に思わず殴りかかり、あんたが生き返ろうともこの子は決して渡さんと叫んだあの日。
「おこっとるんか ? まだ」 (茂)
「・・・・ん ?」
茂は泣いているようだ。俺は後ろを振り向けない。
後の 「哀しい人々」シリーズ の原型となる趣 (おもむき) の作品です。それまで あすな氏 のリリカル少女マンガばかり見ていた私には意外な作品でした。大体オトコしか出てこないし。
でも、当時のCOMにはこういった叙情的人情的作品は結構多くて、それは私は知らないけれど ある時期の文学青年の書く小説 のようなものなんでしょうか。自分のアイデンティティーを表すのに、小説や音楽や絵画とともにマンガもその表現の一つに成り得るとやっと考えられるようになった時代でした。
あすな氏はずっと前からこういったものを描きたかったんだろうか、と今見ると感慨深いです。
いや、少女マンガだって好きで描きたかったはずです。堂々たる体躯に似合わず繊細な神経と驚異的な絵画表現力を持っていた あすなひろし氏 だもの。でも、この頃から少年誌や青年誌、女性週刊誌への掲載も増えて、純粋な少女マンガ誌に掲載される作品が少なくなってきています。
COMの時代 (あすな作品は1968年~1971年に掲載) はあすな氏にとっても転換の時期だったのでしょうか。
なお、この号には 「漫画家70人アンケート」 (本当は60人) として当時30歳のあすな氏の回答も載っています。が、特徴的な筆文字で書かれている答えは簡単であっさり、(あんまり真面目に答えていないとも言う) 余人にはよく分かりません・・・。