小学館 PFビックコミックス 昭和57年(1982)7月20日 初版 写真は昭和59年3月30日の 第5刷
同時収録作品 「マリーン」 過去記事はこちら → マンガ「時空を越えて逢いに来る少女」の系譜
同時収録作品 「とってもしあわせモトちゃん」
表題作 「ゴールデンライラック」 初出 1978年 別冊少女コミック連載
萩尾さんのSFで一番好きなのは 「銀の三角」 以前の記事→ 萩尾 望都 「銀の三角」 何で知名度低いの ? ですが、ラブストーリーで一番好きなのは今の所、この 「ゴールデンライラック」 かも知れない。
何かと言うと手に取って読んでしまう。もう何度読み返したことだろう。大きなしみがいくつもあって全体に黄ばんでいるし綺麗な状態ではないが、私には愛着のある本だ。
今回は思い切りネタバレしようと思ってますが、ここにお越しになる皆さんは萩尾 望都ファン率多いので読んでる方多いよね ? と言うことで…
これは幼い子どもの時から多分30歳代までの女の半生記。N○K朝の連続ドラマにしたらちょうど半年分、女優も子ども時代と大人時代の二人で済みそうな波乱万丈の物語。
時代は第一次世界大戦をはさんで自動車、飛行機などの新しい産業機器が飛躍的に技術革新された19世紀末から20世紀の初頭。日本だと明治30年頃から大正を越え、昭和の初めにかけて。
人生に翻弄されながら大切な人たちを守って生き抜き、ついには穏やかな幸せを手に入れる気丈な女性の話。ねっ、N○Kさん好きそうでしょ。
ちょっと待った~ てなお声がかかりそう。ずいぶん日本的な耐える女の話に聞こえるかも知れませんが、これイギリスを舞台に萩尾氏の華麗な筆に乗って描かれる半生にわたったラブストーリーなんだよねぇ~。イメージ違うよ。あーでも舞台を日本にして朝ドラでやって欲しい~~
あらすじ
8歳のビリーが親戚をたらいまわしされた挙句、やって来た家は裕福な銀行家の一人娘として生まれたいとこのヴィクトーリアの家。両親が死に、あちこちで厄介者だったビリーには考えられない豊かな暮らし、学校、友人、そして自分を理解してくれる可愛いヴィー (ヴィクトーリア)。このまま皆でいつまでも幸せに暮らしていけると思っていた。
だが、ヴィーの父が倒れたことで父の銀行は倒産し、一家は豪華な屋敷から下町のアパートに移り住み、13歳のヴィーとビリーも野菜運びなどの仕事をする暮らしになる。突然の引越しで友人達とも連絡が取れないままだ。
もっと良い給料を求めてホテルのメイドとして住み込みで働くヴィーは、どんどん綺麗になってビリーは眩しくてならない。
あるときビリーはヴィーが客とけんかして、ホテルをやめていることに気づく。手がかりを知っていそうなスティーブンス男爵と会員制クラブに行ったビリーは、そこの舞台で化粧をし、しなを作って歌い踊るヴィーを見つけて驚愕する。彼女は寝たきりの父親と介護と手間仕事で疲れきった母親の面倒を見るのに、より割りのいい仕事を見つけただけなのに。
初めは断っていた男爵のプロポーズだったが、ビリーと二人でいくら働いても豊かにならない生活に疲れたヴィーはついに受け入れ、男爵と結婚してしまう。男爵はヴィーが育った家を買い戻したり、両親の面倒を見たりしてヴィーを大切に扱ってくれる。ヴィーも次第に男爵に心を開いていくのだった。
ビリーは長い間のヴィーへの思いをあきらめ、子どもの頃憧れた空を飛ぶ事を夢見て軍隊に入隊するのだった…。
第一次世界大戦が始まり、ビリーの戦死通告が届く。取り乱すヴィーはもともと心臓の弱い夫をいたわることも忘れていた。倒れこむ男爵。
夫が横たわるベッドの横で、
「あなたを一番愛していないのに結婚したわ」 と涙ながらに言うヴィーに、
「いいんだ。私の方は一番愛していたんだから」 と答える男爵。
くぅ~~。 女なら一生一度は言われてみたいお言葉。
娘コニーも生まれ、幸せいっぱいのヴィーのところにビリーが死なずに帰ってきた。二人は喜びはするが、もちろんそれ以上に踏み込む気はない。
コニーの喘息がきっかけとなって男爵が事故死し、飛行機に乗せて慰めるビリー。ヴィーが落ち着いた頃、ビリーは飛行機の先進国アメリカで技術を磨こうと渡米する。
何年か後だろうか、ビリーが懐かしいあの家に戻ってきた。そこにはヴィーそっくりのコニーがビリーとヴィーが初めて出会ったときと同じく、ライラックの咲き乱れる茂みに立っていた。
長くなってしまいましたね~。もっと手短にしたいと思っていたのに。その後の幸せを予感させるラストって好きです。あらすじでは端折りましたが、友人達のエピソードも味わい深いのですよ。幼馴染 男3人女2人の物語 でもあるのです。
ヴィーは積極的で行動的な女の子。いや当時としてはエネルギュッシュな方だ。逆境でもどうすれば抜け出せるか自分で考えて行動していく。現実を見据えて優等生過ぎてもいないし、卑屈にもなっていない。このラブストーリーがと言うより、私はヴィーの性格が好きなんです。同じ女性として共感できるのです。
男爵との結婚もはっきりと
「男爵はおとなだから愛してるわ、お金持ちだから愛してるわ、」と言ってます。
対して男爵は後に
「あるものは金持ちだが年寄りだ、あるものは若いがカネがない、だから私もずるいのさ…」
ああ、大人だわ。
その時10代のビリーにはヴィーを幸せにするには時期があまりにも早過ぎたのね。それはどうしようもないこと。せめて、この後は二人+コニーで幸せになって欲しい。そんな暖かなラストです。
同時収録作品 「マリーン」 過去記事はこちら → マンガ「時空を越えて逢いに来る少女」の系譜
同時収録作品 「とってもしあわせモトちゃん」
表題作 「ゴールデンライラック」 初出 1978年 別冊少女コミック連載
萩尾さんのSFで一番好きなのは 「銀の三角」 以前の記事→ 萩尾 望都 「銀の三角」 何で知名度低いの ? ですが、ラブストーリーで一番好きなのは今の所、この 「ゴールデンライラック」 かも知れない。
何かと言うと手に取って読んでしまう。もう何度読み返したことだろう。大きなしみがいくつもあって全体に黄ばんでいるし綺麗な状態ではないが、私には愛着のある本だ。
今回は思い切りネタバレしようと思ってますが、ここにお越しになる皆さんは萩尾 望都ファン率多いので読んでる方多いよね ? と言うことで…
これは幼い子どもの時から多分30歳代までの女の半生記。N○K朝の連続ドラマにしたらちょうど半年分、女優も子ども時代と大人時代の二人で済みそうな波乱万丈の物語。
時代は第一次世界大戦をはさんで自動車、飛行機などの新しい産業機器が飛躍的に技術革新された19世紀末から20世紀の初頭。日本だと明治30年頃から大正を越え、昭和の初めにかけて。
人生に翻弄されながら大切な人たちを守って生き抜き、ついには穏やかな幸せを手に入れる気丈な女性の話。ねっ、N○Kさん好きそうでしょ。
ちょっと待った~ てなお声がかかりそう。ずいぶん日本的な耐える女の話に聞こえるかも知れませんが、これイギリスを舞台に萩尾氏の華麗な筆に乗って描かれる半生にわたったラブストーリーなんだよねぇ~。イメージ違うよ。あーでも舞台を日本にして朝ドラでやって欲しい~~
あらすじ
8歳のビリーが親戚をたらいまわしされた挙句、やって来た家は裕福な銀行家の一人娘として生まれたいとこのヴィクトーリアの家。両親が死に、あちこちで厄介者だったビリーには考えられない豊かな暮らし、学校、友人、そして自分を理解してくれる可愛いヴィー (ヴィクトーリア)。このまま皆でいつまでも幸せに暮らしていけると思っていた。
だが、ヴィーの父が倒れたことで父の銀行は倒産し、一家は豪華な屋敷から下町のアパートに移り住み、13歳のヴィーとビリーも野菜運びなどの仕事をする暮らしになる。突然の引越しで友人達とも連絡が取れないままだ。
もっと良い給料を求めてホテルのメイドとして住み込みで働くヴィーは、どんどん綺麗になってビリーは眩しくてならない。
あるときビリーはヴィーが客とけんかして、ホテルをやめていることに気づく。手がかりを知っていそうなスティーブンス男爵と会員制クラブに行ったビリーは、そこの舞台で化粧をし、しなを作って歌い踊るヴィーを見つけて驚愕する。彼女は寝たきりの父親と介護と手間仕事で疲れきった母親の面倒を見るのに、より割りのいい仕事を見つけただけなのに。
初めは断っていた男爵のプロポーズだったが、ビリーと二人でいくら働いても豊かにならない生活に疲れたヴィーはついに受け入れ、男爵と結婚してしまう。男爵はヴィーが育った家を買い戻したり、両親の面倒を見たりしてヴィーを大切に扱ってくれる。ヴィーも次第に男爵に心を開いていくのだった。
ビリーは長い間のヴィーへの思いをあきらめ、子どもの頃憧れた空を飛ぶ事を夢見て軍隊に入隊するのだった…。
第一次世界大戦が始まり、ビリーの戦死通告が届く。取り乱すヴィーはもともと心臓の弱い夫をいたわることも忘れていた。倒れこむ男爵。
夫が横たわるベッドの横で、
「あなたを一番愛していないのに結婚したわ」 と涙ながらに言うヴィーに、
「いいんだ。私の方は一番愛していたんだから」 と答える男爵。
くぅ~~。 女なら一生一度は言われてみたいお言葉。
娘コニーも生まれ、幸せいっぱいのヴィーのところにビリーが死なずに帰ってきた。二人は喜びはするが、もちろんそれ以上に踏み込む気はない。
コニーの喘息がきっかけとなって男爵が事故死し、飛行機に乗せて慰めるビリー。ヴィーが落ち着いた頃、ビリーは飛行機の先進国アメリカで技術を磨こうと渡米する。
何年か後だろうか、ビリーが懐かしいあの家に戻ってきた。そこにはヴィーそっくりのコニーがビリーとヴィーが初めて出会ったときと同じく、ライラックの咲き乱れる茂みに立っていた。
長くなってしまいましたね~。もっと手短にしたいと思っていたのに。その後の幸せを予感させるラストって好きです。あらすじでは端折りましたが、友人達のエピソードも味わい深いのですよ。幼馴染 男3人女2人の物語 でもあるのです。
ヴィーは積極的で行動的な女の子。いや当時としてはエネルギュッシュな方だ。逆境でもどうすれば抜け出せるか自分で考えて行動していく。現実を見据えて優等生過ぎてもいないし、卑屈にもなっていない。このラブストーリーがと言うより、私はヴィーの性格が好きなんです。同じ女性として共感できるのです。
男爵との結婚もはっきりと
「男爵はおとなだから愛してるわ、お金持ちだから愛してるわ、」と言ってます。
対して男爵は後に
「あるものは金持ちだが年寄りだ、あるものは若いがカネがない、だから私もずるいのさ…」
ああ、大人だわ。
その時10代のビリーにはヴィーを幸せにするには時期があまりにも早過ぎたのね。それはどうしようもないこと。せめて、この後は二人+コニーで幸せになって欲しい。そんな暖かなラストです。