著者はMITのサミュエルソンの弟子で2001年「情報の経済学」でノーベル銀行賞受賞。もちろんマネタリズムや新古典派とは違っている。公共経済学の権威で、著作からお教えを受けている。<o:p></o:p>
痛快で示唆に富む。素晴らしい著作だが、碩学で力もあるのに大いに世の中を大いに憂い嘆いている。後知恵のようなところもあるが。論点は整理すると下記になる。(まとめきれないので原本をお読み下さい)<o:p></o:p>
金融の利益確保とそのシステム: 大きすぎてつぶせない 儲かるとボーナス、潰れそうになると税金、代理人問題と外部性:儲かるならつぶれてもいい、影響範囲の拡大(グラス・スティーガル法:投資銀行と商業銀行の垣根が撤廃)、モラル問題<o:p></o:p>
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だまし金融:金融工学、格付け、特にトランシェのコンピューターモデルは透明性に問題がある<o:p></o:p>
カウンター・リスク(保証した企業が破綻して保証にならない)、デリバティブの利益(手数料)、嘘つきローン(返せる訳がないし金利が上がる仕組み)、不動産鑑定士の迎合、 金融は一部で儲かるとその他にツケが回る、複雑な商品を作り、リスク増大と情報の不完全性がある、<o:p></o:p>
搾取と役員給与: レーガン時代のサプライサイド経済学のラッファー・カーブ(限界税率の低減)の問題と累進課税の復活、倫理の赤字<o:p></o:p>
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トリクル・アップ経済:適正なローン政策(デンマークの事例)→トリクル・ダウン(富裕層からの経済波及効果)の逆を提唱<o:p></o:p>
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マネタリズムやワシントン・コンセンサス、ワルラスの均衡の陥穽 : 金余り 金利ゼロのデフレ経済 供給が需要を上回る 今までにない経済、短期的なインフレと失業率のトレード・オフ、情報の完全性・不完全なリスク市場、イノベーションの不在を重ねて問題としている<o:p></o:p>
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さらに、経済と幸福の問題で、コミュニティ崩壊(パットナム:孤独なボウリング)に幅広く言及している。これからの景気対策のなかに投資と公平(中産階級の負担軽減)があり賛同する。<o:p></o:p>
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それにしても幅広く面白い内容だ。お奨めできる。<o:p></o:p>
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(余談)ケインズのAnimal Spirit の訳を「動物精気」としているが如何なものであろうか。(和訳で経済学用語は「限界効用」(Marginal Utility :要はUtility 関数の微分だ)など何のことが分からないものが多いが)<o:p></o:p>