荷風は海外生活が長かった。晩年の「断腸亭日乗」にある、本八幡でのカツ丼 ( http://www7.ocn.ne.jp/~daik88/kafuu.html )とえらい違いだ。<o:p></o:p>
作者はフランスの経験も長いが、都市計画の専門ではなさそうで、一部、都市計画の歴史の記述と解釈には首をかしげるところもある。<o:p></o:p>
荷風の経歴と当時の建築、西洋の真似っこのような煉瓦街を描写している。景観論のようで「ルートマップ」(行きかた)と「サーベイマップ」(視点と感性か)に分けてとりまとめようとしている。そのなかで、空間は時間(歴史)を背負う4次元とあるが、新しい観点だろうか。荷風の目を通しての観点は小林秀雄に、「あるものが真実そうであるより、いま大勢の人にそういわれているという事実が大事だ」という一文に通じるものがある。いわゆる、シニフィアン(記号)とシニフェ(実体)の関係だ。<o:p></o:p>
荷風の残したい古樹、寺院、濠、渡し舟を今の景観にどう残すのかについても提案が薄い。都市を考えるなら、景観ならリンチの「都市のイメージ」くらいは考え、生活なら今和二郎先生の考現学でも取り入れたらどうか。<o:p></o:p>
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荷風の研究としては面白いけれど、都市計画の方にはちょっとお奨めできません。