二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

「逝きし世の面影」

2011年10月12日 | 歴史・民俗・人類学


2010年1月6日に、イザベラ・バードの「日本奥地紀行」を読んだ。
しかし、おそらく、それが決定的な引き金になったというわけではない。五十代半ばをすぎ、両親の「老い」、あるいは、自分自身の「老い」と、いやおうなく向き合う日常の中から、少しずつ変化はあらわれてきたのである。

「日本奥地紀行」へのレビュー
(mixiおよび、gooブログの内容は同一)
http://mixi.jp/view_item.pl?id=15820&reviewer_id=4279073
http://blog.goo.ne.jp/nikonhp/e/b02ffee7423b1356f99d3a57695cdcdb

トップにあげたのは、秋田県立図書館が公開している菅江真澄の関連書籍から引用。
つぎに掲げる二枚も、同じところからお借りしてきた画像である。






■秋田県立図書館
<菅江真澄>
http://jpg1.apl.pref.akita.jp/kicho/masumi/118.html
(貴重な原本からの写真=J-pegがたくさん置いてあり、とても1、2時間では見きれないほど)

わたしは、自分にもし「黄金時代」があったとしたら、それは小学生時代であろうという、ある種の思いこみがある。
日本がまだ貧しかった、昭和三十年代半ばころから、四十年代半ばにかけてのおよそ十年。わたしよりやや上の世代たる「団塊世代」の人たちにとっては、とくに昭和三十年代は、最高になつかしい「逝きし世の面影」をやどしているのではないだろうか?
雑誌やMOOKで昭和三十年代特集をやると、売上げが伸びるという話を聞いたことがある。
日本の社会は、戦後の高度成長期にそれほど急激に変貌したのである。

わたしが詩を書きながら、そのテーマのひとつに選んでいるのが、いわば「昭和ロマン」の探索。しかし、個人史の中だけで、昭和ロマンしていても、それはどう考えても、限られた時空の範囲内の堂々巡りとなってしまい、長期間的には孤立化にむすびつく。

殻にこもりがちな、求心力の強い「個人史」という考えの枠組みをいったん壊し、その殻から出て、より広い地域と、時代に関心を向けていかないと、ゆきづまりはすぐにやってくる。
この日本を舞台とした、時空の散歩。時空探索の旅。

・・・というわけで、「土左日記」や「徒然草」に関心が向かい、「利根川図誌」や「菅江真澄遊覧記」を、精読してみたいと思っているのである。
菅江真澄《すがえますみ、宝暦4年(1754年) - 文政12年7月19日(1829年8月18日)》は、江戸時代後期の旅行家で博物学者。一方、イギリスの旅行家、イザベラ・バードが日本に滞在したのは、1878年(明治11年)6月から10月にかけてといわれている。

歴史家網野善彦さんは、日本中世の歴史を塗り替えた人物として知られていて、いま、わたしは「海と列島の中世」を読んでいる。このひとこそ日本の中世像を、ダイナミックな可能性に満ちたフレキシブルな時代として描きなおし、われわれの歴史認識に大きな楔を打ち込んだのであるが、この網野さん的な発想と観点から、わたしなりに日本近世までを、さらに昭和までを、たどっていきたいのである。

むろんいまさら学者をめざす、あるいは、特色ある郷土史家をめざすわけではなく、わたし自身を起点とした「時空の散歩」なのだから、興のおもむくまま、マイペースですすんでいこうとしていて、「昭和ロマン」を、「近世ロマン」、あるいは「中世ロマン」にまで拡大して、時空をさかのぼっていきたいというもくろみもある。

そういった関心のゆらぎの中で、ことしのはじめ買ったまま放置してある一冊の本を思い出した。それが、渡辺京二さんの「逝きし世の面影」(平凡社ライブラリー)である。
この日記のタイトルは、そこからお借りしたもの(^^;)

ひとつの時代と文化が、この日本において、たしかに滅んだのである。
・・・それをたしかめるために、その面影をしのぶために、何台かのデジカメと、ここに掲げたような本を鞄につめて、東北への旅に出る。
できることなら、一週間、あるいはもっと長く、岩手、秋田、青森の地を、撮影しながら歩きまわってみたいというのは、わたしのこころの奥底に潜む衝動にも似た「切なる願望」といっていいのではあるまいか?
この日記を書きながら、そんな「遙かなもの」へのおもいが、ますます鮮明に、夢のようなイメージとなって、胸をしめつける。


※「逝きし世の面影」千夜千冊/松岡正剛
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1203.html
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