脳の伝達物質はアミノ酸
又はそれらの代謝産物です
言い換えればアミノ酸
(蛋白質=肉)がないと
巨大な脳は働きません
肉を取るには暑い中を
何時間も動物を追いかけて
捕まえる必要があります
マラソンの原点です
だから汗腺が多くて
効率的に皮膚を冷やせる
アフリカの黒人はマラソンには有利です
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なぜヒトは「裸」なの…?
皮膚をゲノム解析したらわかった「サルとの決定的な違い」
椛島 健治
京都大学大学院医学研究科教授
人間のもっとも身近にありながら、そのスゴさが意識される機会がなかなかない「皮膚」という臓器。皮膚には様々な機能・役割があることが最新の研究によって明らかになってきました。また、ヒトの皮膚は、他の動物と大きく異なる特徴を備えています。
前編では、エクリン汗腺の多いヒトの皮膚の特徴を見ながら、どうしてこのような皮膚になったのかを、近縁の霊長類とも比較しながら見てきました。続いて後編では、現生人類と、かつて存在した他のサピエンスとも比較して見てみます。
![](https://static.m3.com/clinical/news/2024/kodansha_bb/cm_wonder_of_the_skin.jpg)
*本記事は、『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ 最新科学でわかった万能性』の内容から、再編集・再構成してお送りします。
なぜヒトは裸のサルになったのか?
それにしても、なぜ私たちヒトは、ほかの類人猿のような体毛を持っていないのでしょうか?
体毛は、容赦なく降り注ぐ紫外線や熱帯の高温、寒冷地の寒さ、物理的な衝撃からも身を守ってくれます。実際、地球上に棲息する多くの生物はふさふさとした体毛に覆われており、近縁であるゴリラ、チンパンジー、オランウータンも同様です。
生存に有利な遺伝的形質が選択される「自然選択説」の観点から考えても、ヒトが「裸」になることは、生存にはあまり有利にならないように思えます。進化論を提唱したダーウィンをはじめとして多くの進化学者が、なぜ類人猿の中でヒトだけが体毛を持たなくなったのかについてさまざまな仮説を提唱していますが、いまだ定説が確立されるにいたっていません。
最も有力な説「サバンナ説」
現時点で最も有力とされるのが、樹上生活をしていたヒトの祖先が、生活範囲をバンナ(草原)に広げたことがきっかけで急速に無毛化が進んだとする「サバンナ説」です。
ヒトの祖先が生活したとされるアフリカ大陸のサバンナは、厳しい直射日光を遮る樹木がなく、高温で乾燥しています。こうした過酷な環境を生き抜くうえでは、体温が高温にならないように効率的にからだを冷やす必要があります。
ヒトは、水分を大量に含んだ汗を分泌するエクリン腺を全身に持っており、大量の汗を放出することで皮膚から気化熱を奪うことで体温を下げています。発汗による効率的な熱放出を考えると、汗腺が長い毛で覆われているより、薄い産毛で汗腺が外気に露出しているほうが有利です。なお、「サバンナ説」では、ヒトで頭髪が残っているのは、頭を紫外線や直射日光から防ぐためだと説明しています。
前編で申し上げたように、ヒトのように全身にエクリン腺を持っている哺乳類は、ウマぐらいしかいません。ウマもヒトと同様に体毛は薄いため、発汗することで体温を下げることができます。ウマが長距離を走ることができるのも、発汗により体温調節ができるからだといわれています。
さらに求められる「客観的な証拠」
「サバンナ説」はヒトの体毛が薄くなったことを合理的に説明するものですが、完全に立証されたわけではありません。科学的な証明には、ヒトがサバンナに進出した時期とヒトが体毛を失った時期とが合致することを示すなどの主張を裏付ける客観的な証拠を複数用意する必要がありますが、現時点ではまだそのようなエビデンスは得られていません。
「体毛が薄くなったから、サバンナへの進出が可能になったのか」「サバンナへ進出するようになってから、体毛が薄くなる自然選択が進んだのか」もわかっていません。
しかしながら、2021年に、米国のフィラデルフィアのグループが、エクリン腺に特異的に発現しているEN1という転写因子が、サルにくらべてヒトに多いことを発見し、それがヒトが汗をたくさんかける要因になったのではないかと報告しました。
ヒトが汗をたくさんかける要因を遺伝子から発見
私たちヒトと類人猿とは、その知性や風貌もまるで違いますが、ヒトに最も遺伝的に近いとされるチンパンジーとヒトのゲノムを比較すると、その違いはわずか1・4%しかなかったそうです。すなわち、このわずか1.4%のゲノムの違いが、ヒトをヒトたらしめているのです。
チンパンジーとヒトの遺伝子を比較して大きな差異があった箇所を調べてみると、中枢神経系、皮膚構造、免疫系にかかわるタンパク質をコードする遺伝子に大きな差がありました。
図「ヒトとチンパンジーをわけたゲノムの違い」はチンパンジーとヒトの遺伝子を比較して大きな差異があった遺伝子のリストです。この中でヒトとチンパンジーとの間で最も異なっていたのが、Epidermal differentiation complexという皮膚のバリア形成にかかわる遺伝子群でした。驚くべきことに、皮膚のバリア機能だけでなく、髪の毛のケラチンに関連する遺伝子群が2つも入っています。
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ヒトとチンパンジーをわけたゲノムの違い。その違いはわずか1.4%。その中で最も異なっていたのが皮膚のバリア形成にかかわる遺伝子だった
もしかすると、私たちヒトは「裸」になることで、サルからヒトになることができたのかもしれません。
では、かつてはホモサピエンス以外にも存在していた、ほかのヒトではどうでしょうか? 近年、現生人類の遺伝子にも受け継がれていることがわかってきたネアンデルタール人の研究から、大変興味深いことがわかってきたのです。
ネアンデルタール人の痕跡
同じヒトでも、私たち現生人類とは異なる特徴を持っていたのが、数万年前に絶滅したとされるネアンデルタール人です。
近年、ネアンデルタール人と現生人類との比較ゲノム解析が進んだ結果、私たちの先祖はネアンデルタール人と性的交渉を持ち、子孫を残してきたこと、そして彼らの遺伝子の一部が私たち現生人類に受け継がれていることがわかってきました。人種によって差がありますが、ヨーロッパ人のゲノムの1.5~2%がネアンデルタール人由来であるという研究報告もあります。
興味深いことに、皮膚や毛にかかわるケラチン遺伝子に高い頻度でネアンデルタール人の遺伝子が保持されていたのです。最新のゲノム解析では、ヒトと同様にネアンデルタール人に赤毛は極端に少なかったことがわかっています。
また、日焼けになりにくいという性質にもネアンデルタール人に由来する遺伝子が強く関与していることがわかってきました。このような最新の知見に基づき、最近のネアンデルタール人の想像図は、色白で金髪、青い目の人類として描かれるようになってきました。
もっともネアンデルタール人にもかなり人種差があり、赤毛で、日焼けしにくい種もいたようです。褐色から黒色のメラニンであるユーメラニンが発達していることが推測され、黒髪で色黒であるネアンデルタール人が存在したようです。
計算科学を駆使した比較ゲノム解析の進歩は著しく、今後は、私たちの皮膚の性質にかかわる遺伝子が、近縁の霊長類やネアンデルタール人のような旧人類からどのように受け継がれてきたのか、より詳細なことがわかってくるでしょう。