ウクライナ侵攻から2年。ロシア大統領選を控えるプーチンの思惑
ロシアがウクライナへ侵攻してからもうすぐ2年となる。ちょうど2年前ごろ、ロシア情勢や安全保障の専門家の間では、ロシアが侵攻するかしないかの議論が激しくなり、多くの専門家は侵攻によってロシアが被るダメージが大きすぎるので、さすがにプーチンも躊躇するだろうとの見方を示していた。しかし、それは見事に裏切られ、ロシアはウクライナ北部や東部から侵攻し、我々は覇権主義国家ロシアの姿をまざまざと見ることになった。
侵攻当初、プーチンは短期間のうちに首都キーウを掌握し、ゼレンスキー政権を崩壊させ、新たに親ロシアの傀儡政権を樹立することを目指していた。しかし、時間が経過するごとにロシア軍の劣勢が顕著になり、プーチンの描くロードマップが夢物語であることが鮮明になっていった。
そうさせたのが、米国や西欧諸国によるウクライナへの莫大な軍事、財政支援だった。ウクライナに対して高性能な武器や軍事品が提供され、それが戦闘の最前線で活用され、ウクライナ軍の攻勢にロシア軍は多くの兵士を失い、ウクライナ領土に何とか踏みとどまるのが精一杯となった。昨年秋にプーチン政権が国民の部分的動員を強化したのも、ロシア軍の軍事的劣勢を顕著に示すものだろう。
だが、昨年になって顕著になったのが、欧米諸国のウクライナへの支援疲れである。時間の経過とともにウクライナへの支援規模は縮小され、今日多くの国でウクライナ支援が国民から評価されるものではなくなってきている。ウクライナ軍は今年大規模な攻勢をロシア軍に仕掛けたが、期待されたような結果は出ておらず、ウクライナ自身の戦闘疲れ、ロシアの既成事実化が進んでいる。このような情勢の中、ロシア大統領選を控えるプーチンは自らに有利な環境が訪れていると自認している。その背景にはいくつかの理由がある。
まず、中国やインド、グローバルサウスの存在である。侵攻から2年が経つが、ロシアを非難し、対露制裁を実施しているのは欧米や日本など40カ国あまりに留まっており、制裁下でもロシアは安価なロシア産エネルギーに接近してくる途上国との関係を強化するなどし、その被害を最小化することに成功している。要は、侵攻しても欧米ができることには限界があり、政治的に孤立せず、経済的には非欧米諸国と関係を強化すればいいというのが、プーチンがこの2年で学んだ教訓だ。