フランスTGVに「大規模攻撃」 沿線で放火か 五輪開会前
【パリ=小川知世、鱸正人】フランス国鉄(SNCF)は26日、高速鉄道TGVに「鉄道網のまひを狙った大規模な攻撃」があったと発表した。複数の路線で設備が放火され、列車に遅れや運休が発生した。80万人以上に影響する見込み。パリ五輪の開会式を26日夜に控えて、混乱が広がった。
パリ五輪は26日に中心部を流れるセーヌ川を舞台に開会式が行われ、27日からは競技が本格的に始まる。競技場外での開会式は夏季五輪では初めて。テロを警戒して市内では18日から厳戒態勢が敷かれ、4万5000人の警備担当者が動員された
仏メディアフランスアンフォによるとTGV路線の5カ所で攻撃か攻撃未遂があった。犯行は26日午前1時から5時半の間に行われ、西部や北部、東部とパリを結ぶ3路線で被害が発生した。南東部と結ぶ1路線も標的になったが、阻止したという。
全面復旧は週明け29日以降になる見通し。ロンドンとパリなど欧州を結ぶ高速鉄道ユーロスターにも一部列車で運休や遅れが生じた。
AFP通信などによると、SNCFは鉄道施設を損傷させる目的で放火があったと説明した。複数の箇所でケーブルが切断されて燃やされたという。沿線で火災が起き、消防当局が消火にあたった。人的な被害は確認されていない
SNCFは乗車予定を延期し、駅に向かわないように呼びかけた。一部の列車が在来線へ迂回し、職員が数百人態勢で復旧にあたっている。ユーロスターも乗客にパリ発着便の利用を延期するように勧めた。
五輪開会式を前に、仏国内はテロ阻止の厳戒態勢が敷かれていた。鉄道設備が損傷した付近で不審な車両などが目撃されており、仏当局が捜査に着手した。ベルグリット交通担当相はX(旧ツイッター)で「組織的な悪意のある行為」と非難した
パリ市のイダルゴ市長は「市内の交通は通常通り運行しており、開会式に影響はない」と強調した。
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は26日、五輪への影響について「懸念していない」と述べた。「仏当局に全幅の信頼を寄せている」と話し、鉄道網の混乱が大会運営に波及しないとの見方を示した。
TGVはパリと国内の主要都市を東西南北につなぐ輸送の大動脈で、一部の列車はドイツなど他国に乗り入れている。SNCFによると26日だけで25万人、週末に80万人が利用する見込みだった
パリでの五輪開催は100年ぶり3度目。世界的な新型コロナウイルス禍が明けて2大会ぶりに祝祭感が戻る一方、ロシアのウクライナ侵略など世界の分断が影を落とす中での開催となった。
大会組織委員会によると、五輪史上最多の880万枚以上のチケットが既に販売されている。エッフェル塔近くやコンコルド広場、世界遺産のベルサイユ宮殿など観光名所も会場となる。
新競技のブレイキンを含む32競技329種目が行われ、204カ国・地域と難民選手団を合わせて約1万1000人が参加する。選手数は五輪史上初めて男女同数が実現した。
ロシアと同盟国ベラルーシの選手は国を代表しない「個人の中立選手」としてのみ参加を許可され、約30選手が出場する。日本からは海外開催の五輪では史上最多の409選手が参加する。