フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

2月24日(水) 晴れ

2010-02-25 10:50:13 | Weblog

  9時半、起床。寝坊だ。ジムに行った翌日はぐっすり眠って目が覚める。朝食はとらず、フィールドノートの更新をして、今夜の区民会議の資料を準備して、11時に家を出る。暖かい。帰りは夜遅くなるのでコートを来て出たが、結局、不要だった。
  12時から現代人間論系の教室会議。「たかはし」のお弁当を食べながら(これがあるので朝食は抜いてきたのだ)。冒頭、3月末で定年退職される織田先生からご挨拶があった。今日は議題が大小とりまぜて盛りだくさんだったが、個人的に一番重要な議題は、論系主任の交代の件であった。私はこの3月で論系主任を丸2年務めたことになる。主任は2年で交代する、というのは暗黙の合意事項である。ところが、次の主任の引き受け手がいないのである。もちろん積極的に「はい、やります!」と手をあげる人はいないであろうとは思っていた。故に、候補となる先生はあらかじめ絞り込んであった。教務在職中の先生、定年間近の先生、着任・移籍してまだ間もない先生、在外(3月末帰国)の先生、そうした方々を消去していくと、おのずと候補となる先生は1人2人に絞られていく。ジリジリと絞られていく。ABCD包囲網である(知らない人はネットで検索してね)。「わ、わかりました。お、お引き受けいたしましょう」という言葉が発せられる瞬間を私は待った。沈黙の時間は思いのほか長く感じられた。その沈黙を破ったのは意外にも安藤先生であった。安藤先生は教務在職中であるから、私の頭の中の候補者リストには載っていない。もしや、あと半年待ってもらえるならば(現教務の任期はあと半年である)、自分が論系主任を引き受ける、という提案をされるおつもりなのか、と私は思った。さすが安藤先生、任侠の人である。しかし、それは勘違いだった。安藤先生はまずこの2年間論系主任を務めた私に対する慰労の言葉を述べた。この難しい時期に主任を務められるのは大久保先生をおいてはいなかっと私を持ち上げた。いやな予感がした。人を持ち上げるのは何かやっかいな依頼をするときの大人の世界の作法である。案の定、安藤先生は、難しい時期はもう1年続くから(学部の完成年度後のカリキュラム再編という課題)、私に論系主任をもう1年続けてほしいということを言われた。間髪を入れず、大薮先生が、「私もそう提案しようと思っていたのです」と言った。他の先生方もうなずいておられる。ABCD包囲網が反転した瞬間である。妻の顔、小雀の顔、読まれる順番を待っている本たちの背表紙、ゼミの学生たちの顔が一瞬頭をよぎった。安藤先生がさらに言った。「幸い大久保先生は健康な毎日を送っていらっしゃるようですから」。彼は私のブログの愛読者なのだ。あのね、「フィールドノート」は自然主義文学の作品ではないのである。作者の日常を、内面を、ありのままに、赤裸々に描いているわけではないのである。辛いこと、悲しいこと、やり切れぬこと・・・そうしたものを濾過した後のうわずみ液で描いたスケッチ画のようなものである。しかし、いまは安藤先生と文学談義をしている場合ではない。それは新年度の「現代人間論系総合講座1 現代人の精神構造」(火曜4限)の授業の中でたっぷりと行うことにしよう。お楽しみに(番宣か)。安藤先生の提案に対して、憤然として席を立ち、会議室を出てゆくことはできた。しかし、私はそうはしなかった。少し考えてから、「わかりました。では、あと1年やらせていただきます」と返答した。メナード化粧品の薬用ビューネのCMに登場する「ビューネくん」(演じているのは松田翔太)が私の傍らでこう語りかけた、「大人じゃん」。
  2時から教授会。終了したのは4時。論系室に顔を出して、助手のAさんとS君をお茶に誘う。S君は『社会学年誌』の発送の作業があるとのことなので、Aさんと「カフェ・ゴトー」に行く。私がチーズケーキを注文すると、Aさんは洋梨のタルトを注文し、シェアーして両方食べたいですねと言って、店員さんにそのように注文した。私は洋梨はそれほど好物ではなかったが、3月末で退職するAさんの意向を尊重することにした。ビューネくんが再び現われて、さきほどと同じ言葉を囁いた。


はい、大人ですから。

  6時半から大田区役所で男女平等推進区民会議。今年度10回目、最後の会議である。報告書(中間)のとりまとめの段取りを決めてから、個々人がリサーチした東京都の他の区・市のプランの状況について報告してもらった。予定を30分ほどオーバーして、終ったのは9時過ぎ。新年度の初回の会議は5月末の予定。そのときは区長にも出席していただくことになっている。たんなる挨拶ではなく、少なくとも1時間は時間をとっていただいて、われわれの意見に耳を傾けていただきたい。そう担当の職員の方にお願いした。職員の方は困ったような顔をされたが、私は駄々っ子のようにくり返しお願いした。区長は立派な大人であるから、きっとわれわれの願いを聞き入れてくれるに違いないと思う。