9時半、起床。
朝食の支度をしながらネットTVで王将戦二日目の様子を観る。先手菅井の封じ手は「4七飛」の手待ちだった。これに対して後手藤井は8六歩、同歩と飛車先を付き捨ててから4五歩と開戦した。角をすぐに交換するわけにはいかない先手は6六銀と立った。AIの形勢判断では藤井がいくらか指しやすい。相穴熊だが、先手の穴熊が金銀3枚なのに対して、後手の穴熊は金銀4枚である。だから先手も強引にさばいていけばいいというわけにはいかない。後手の攻勢に対して慎重な対処が必要である。
チーズトーストと紅茶の朝食。
『福山雅治 福のラジオ』をタイムフリーで聴きながら(別のパソコンで盤面を観ながら)、昨日のブログを書く。プロ棋士の解説つきの有料放送ではなく、対局室の風景と盤面とAIの形成判断と次の指し手の予測のみの無料放送を観ているので静かでよい。まったくの無音ではなく、対局場の駒音は聞こえる。静寂な勝負の世界。
昼食休憩前、後手が7四歩と突いた。次に先手が5五歩と攻めてくるのが見えているだけに指しにくい一手かと思ったが(AIの予測・推奨手の中では5番目くらいだった)、「どうぞ攻めていらっしゃい」というメッセージである。菅井はすぐに5五歩とは指さず、そのまま昼食休憩に入った。
昨日のブログを書き上げて、私も昼食を食べに出る。外に食べに出るのは4日ぶりである。陽光がまぶしい。門松は昨日で外したが、正月休みの前半はとんでもない出来事があり、後半は体調を崩して伏していた。昨日までの一週間はなかったことにして、今日が元日であればいいのにと思ったりした。
「くらしの友」で線香を買う。支払いの時「会員の方でしょうか?」と聞かれたので、会員証は携帯していなかったが、(父母の葬儀は暮らしの友の会館でやっているので)たぶん会員だと思うと答えたら、会員割引にしてくれた。おおらかな対応である。
昼食は「寿々喜」で鰻丼でも食べようかと思う。
鰻丼のつもりで入ったのだが、メニューを見て、親子丼にすることにした。鰻丼の方が威勢がいいが、粥やうどんばかり食べていた者がいきなり鰻丼では胃腸がびっくりするかもしれないと思ったからである。
かなり甘い味付けの親子丼である。やっぱり鰻丼の方がよかったかな(笑)。
帰宅して、昼食休憩後の盤面を見ると、予想通り先手は5五歩と突いた。対しては後手は7五歩。同歩だと7六歩なので、先手は手抜きで3五歩。3か所で歩がぶつかり合っている局面。アマチュア向けの将棋の本などを読んでいると、「3か所で歩がぶつかっている将棋をさせるようになったら有段者」などと書いてあるが、プロ同士のタイトル戦であるから当然なのであろう。
手が進んで、先手が5七の銀を4八と引いて4枚の穴熊にした局面。局後、菅井はこの手を悔やんでいた。消極的だったと。5七の銀は6六に出るべきだったということだろう。
菅井が悔やんだのは、藤井にすかさず打たれた8七歩が厳しかったからである。
菅井は7七角で8八歩成を防げると勘違いしていたのかもしれない。しかし、8八歩成は同角とは取れない。取れば7五歩と打たれて困るからである。同飛は8六飛と走られるし、6六飛と寄れば5四金とされて飛車を圧迫される順が残る。もし4八銀と引かずに6六銀と出ていたら、この7五歩の筋はなかったのである。
不利を自覚した先手は8八歩成を放置して7三歩と打った。7二歩成を見せて、後手の攻めを催促した手である。7二歩成を防ぐだけなら7一歩打だが、藤井がそんな温い手を指すはずはなく、残り時間8分まで考えて(菅井はまだ1時間20分も残している)、取れる香や桂には手を出さず、8七と金と引いて角にあてた。以下、5五角、8六と金、7四飛、8五飛、6四角と進んでいった。
先手の6四角に対して後手は5七歩と打った。先手は粘るなら5九歩であり、AIもそれを推奨している。しかし、そうすると先手は5筋でと金作りができなくなる。5九歩と打てば戦いは長引くが楽しみがなくなる。藤井の残り時間が少ないことを考えればそう指すべきだったかもしれないが、先手は5九歩とは指さずに、5三角成、同金、5四歩と打って攻め合いに行った。
5四歩に後手は6三金と横にかわして飛車にあてたが、先手は飛車を逃げずに4四歩と打った。飛車を取られても、5三歩成、続く4三歩成で勝負形にもっていこうという手である。ここで後手は飛車は取らずに5八歩成。最短コースの勝を目指す。
5八歩成に対して、先手は4三歩成、同金に5二角と金の両取りに打った。ここから4八と、同金寄、7四金、4三角成と進む。
ここで後手の打った6四角が「盤上この一手」というべき攻防の一着だった。
後手が4七金と打った局面で先手は投了した。まだ一手の王手もかかっていないが、ここからは先手穴熊陣の崩壊を待つばかりであるから、投了はやむをえない。いわゆる「穴熊の姿焼き」というやつで、穴熊戦にはしばしばみられる投了図である。
AIの形勢判断の推移を見ると、先手は徐々に海の底に沈められ、一度も逆転の目が生じなかった様子がうかがえる。
将棋の戦型はまったく違うが、王位戦第一局での挑戦者伊藤匠七段の敗戦を思い出させる。大舞台での緊張からだろう、菅井らしさが出せなかった(封じられた)ように思われる。
終局直後は口惜しさ(あるいは自身の不甲斐なさ)を表情に出して無口な菅井だったが、感想戦では立会人の塚田九段も交えてよくしゃべっていた。第二局(1月20日・21日)は仕切り直しで頑張ってほしい。具体的に私ができるアドバイスは「対局中の昼食はゆっくり食べる」ことである。
夕食はうどん。
デザートにお汁粉。今回はカロリーオフではない(!)。
食事をしながら本来は元日に放送されるはずだったお笑い番組を観る。遅ればせのほろ苦い正月気分を味わう。
風呂から出て、『サンデー・ソングブック』をタイムフリーで聴きながら、今日の日記を付ける。
1時半、就寝。