文化逍遥。

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映画『陽だまりハウスでマラソンを』2013年、ドイツ、

2015年04月26日 | 映画
 例によって、千葉劇場で4/23木曜に映画を観てきた。
2013年のドイツ映画で、『陽だまりハウスでマラソンを』。監督はキリアン・リートホーフ、主役のパウルを演じたのはディーター・ハラーフォルデンという人で元来は喜劇俳優だという。ドイツ語の映画だが原題は英語で「Back on Track」、そのまま訳すと「競技場へ戻ってこい」とでもなるだろうか。どうも、最近の邦題はひねくり過ぎに感じる。

 今は認知症初期の様相を呈し始めた元マラソンランナーの老人が、事なかれ主義の老人ホームに反発して、ベルリンマラソンを完走してハッピーエンド。と、基礎となるストーリーは単純だが、その間長年よりそった元コーチだった妻との死別や娘との葛藤があり、最後には感情をコントロールできなくなりベッドに拘束されてしまう、という展開。
 認知症状が出た老人を事故の無いように生活を見守るのは施設側の大切な職務だろうし、反面老いてなお希望を見つけて生き生きと過ごしたいと思う気持ちと可能性を信じたいのも又良く分かる。結末はハッピーエンドだが、自分の介護体験を踏まえて現実的に考えれば、安易な楽観はむしろ非現実的と考えざるを得ない。
 ロケは、実際のベルリンマラソンを撮影して行われたといい、最終の競技場シーンは迫力があった。全て、現実がこのようにうまく回転すれば良いのだが、死を前にした老人にとっての日々は鬱々としたものになりやすく、身近な者はそばに寄り添うことしかできずに、もどかしさを感じるばかりだ。主役の俳優さんの演技には圧倒されたが、「あんなに脂肪のついた体型でマラソンを完走できるのかなあ」、とも感じた。そこは、まあ映画の世界で夢を与えることも悪くはないだろう。

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