最近読んだ本の中から、印象に残った一冊。
著者は1949年生まれの医師で、医療関係の著作も多い。同じ著者による、今年2月に刊行された『茅花(つばな)流しの診療所』を図書館で借りて読み、良く出来た小説だったのでこちらも読みたくなった。この本、何故か図書館には無くて、仕方ないのでアマゾンで探したところ新刊本は品切れ。古本で安く出ていたものを購入した。届いた本はピカピカで、読まれた形跡は無かった。最近そういうことが多い。流通の過程でこぼれ落ちた本が特価本として出回ることもあるが、近頃はネットに流れているのだろうか。あるいは、買っても読まずに売ってしまう人が多いのか。いずれにしろ、本を取り巻く状況が悪い方に変化しているようだ。
さて、本の内容。「医療小説」ということで、『高津川』は明治期に実在した右田アサという女性眼科医を題材にとった小説。『茅花(つばな)流しの診療所』は、やはり明治期に19歳で医師となった尾崎マサノという女医の生涯を描いている。差別と偏見に立ち向かわなければ女性が医師になれなかった明治期。そんな時代に生きた二人の女性医師を描いた「史実をもとにしたフィクション」と言えるだろう。二人とも夭逝しており、女性としての幸は薄かったようだ。にもかかわらず読後感が良いのは、主人公を暖かく見守るように描かれているからだろう。
お茶の水、ニコライ堂の坂の下にある「井上眼科病院」。JRお茶の水駅の聖橋口を出て数分、小川町方向のカワセ楽器に向かって坂を下りていく時いつも通る道筋にある。夏目漱石が通ったこともある古い病院であることは知っていたが、日本の眼科病院の嚆矢であり、眼科医の育成に貢献した程の医院だとは『高津川』を読むまで知らなかった。著者は、そこの名誉院長でもある。身近な所に、歴史は隠れているものだ。
著者は1949年生まれの医師で、医療関係の著作も多い。同じ著者による、今年2月に刊行された『茅花(つばな)流しの診療所』を図書館で借りて読み、良く出来た小説だったのでこちらも読みたくなった。この本、何故か図書館には無くて、仕方ないのでアマゾンで探したところ新刊本は品切れ。古本で安く出ていたものを購入した。届いた本はピカピカで、読まれた形跡は無かった。最近そういうことが多い。流通の過程でこぼれ落ちた本が特価本として出回ることもあるが、近頃はネットに流れているのだろうか。あるいは、買っても読まずに売ってしまう人が多いのか。いずれにしろ、本を取り巻く状況が悪い方に変化しているようだ。
さて、本の内容。「医療小説」ということで、『高津川』は明治期に実在した右田アサという女性眼科医を題材にとった小説。『茅花(つばな)流しの診療所』は、やはり明治期に19歳で医師となった尾崎マサノという女医の生涯を描いている。差別と偏見に立ち向かわなければ女性が医師になれなかった明治期。そんな時代に生きた二人の女性医師を描いた「史実をもとにしたフィクション」と言えるだろう。二人とも夭逝しており、女性としての幸は薄かったようだ。にもかかわらず読後感が良いのは、主人公を暖かく見守るように描かれているからだろう。
お茶の水、ニコライ堂の坂の下にある「井上眼科病院」。JRお茶の水駅の聖橋口を出て数分、小川町方向のカワセ楽器に向かって坂を下りていく時いつも通る道筋にある。夏目漱石が通ったこともある古い病院であることは知っていたが、日本の眼科病院の嚆矢であり、眼科医の育成に貢献した程の医院だとは『高津川』を読むまで知らなかった。著者は、そこの名誉院長でもある。身近な所に、歴史は隠れているものだ。