文化逍遥。

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テレメンタリー2016

2016年11月30日 | 日記・エッセイ・コラム
 前回に続き、テレビ番組の話。11/27の日曜の午前4時半から30分間、テレビ朝日で放映された『テレメンタリー2016「山の上の診療所~元ハンセン病患者達の一年」』。
 静岡県御殿場市にある国立駿河療養所は、ハンセン病の専門病院。ハンセン病も、現在では特効薬も見つかり不治の病ではなくなっている。そのため、入院患者は減り続け、それに伴う医師不足により今では存続が危ぶまれている。今の入所者が全員亡くなったら、この療養所も閉鎖され、その歴史も埋もれてしまうのだ。そのため、その存続をかけて、入院施設や診療機器などを一般の患者にも開放し、診察・入院を可能にするという一般病院へ転換し、その存続を図ることになった。つまりは特別な病棟であった国立の入院施設から一般病院への変更を試みているという。過去に、このような例はないらしい。
 これは、そこに入所している元ハンセン病患者達の一年を追ったドキュメンタリーで、制作は静岡朝日テレビ、ナレーターは女優の南沢奈央さん。


 同じ静岡県にある私立の神山(こうやま)復生病院は、やはりハンセン病の専門病院だったが、すでに今では元ハンセン病患者の他に30人の一般患者が入院しているという。そこに暮らす、元ハンセン病患者の藤原登喜夫さん(83)という方の言葉が胸に沁みたので書いておきたい。


「人間というのはね 人から嫌なことをされると
何年たっても何十年たっても 覚えていて言うんですね

ところが その間に してもらったことの方が多いんですよ

嫌なことをされたことを言い合うよりも してもらったことを言い合う方が
家庭であっても 社会であっても 小さなグループであっても

もっともっといいものが できるんではないだろうかなぁと

わたしは そう思うんですね」


 厳しい差別を蒙ってきたであろう老人の「珠玉の言葉」。人間関係に苦しむ若い人たちに届けたい言葉だ。こういう優れたドキュメンタリーを、ほとんどの人が眠っている時間帯に放送するのは、あまりに惜しい。おそらく、番組制作に関わった人達も口惜しさを感じたことだろう。地元の静岡でも深夜の放映だったのだろうか。

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