文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2019年フランス・ドイツ映画『悪なき殺人』

2021年12月12日 | 映画
 12/6(月)千葉劇場にて。監督は、ドミニク・モル。フランス語の原題は「Seules les betes」で、英題は「Only The Animals」。
 ある殺人事件を巡るサスペンス映画、と言えるだろう。が、その事件を通してフランス社会、あるいはアフリカのコートジボワールからのネット犯罪を絡めて、現代社会の病理にも食い込んだ作品。

 フランスでは、女性の半数ほどが複数の男の子供を産む、と言われている。「自由恋愛」と言えば聞こえは良いが、その反面でドロドロとした人間の嫉妬や独占欲の中で、のたうち回るように苦しむ人も多いのだろう。英題の「 Animals」はTheが付いているので、単なる「動物」という意味ではなく、「獣性」を表していると思われる。ただ、獣は生殖目的以外に性行為に及ぶことは無い。エネルギーの無駄遣いだからだ。その意味では、人間は獣以上に「性」に苦しむ、とも言えるのかもしれない。この作品は、監督が意図している以上に「自由恋愛社会の不安と混迷」を垣間見せてくれている、と感じた。


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