文化逍遥。

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現代の作家

2012年06月01日 | 本と雑誌
いつの間にか6月。
このところ昼間は25度を超える夏日が続いているので、部屋を閉め切って楽器を弾くには冷房を入れなければならなくなってきた。なるべく電気を使いたくないので、最近はひたすら本を読んで過ごしている。

古典から読んでいって現代作家に至るようにしているのだが、読むのが遅いのでなかなか現代の作品に辿りつかない。
それでも、思うところあって、村上春樹氏の作品を読んでみることにした。
まず、近くの図書館に行って2冊借りてきた。初期の作品で『風の歌を聴け』(1979)と、比較的最近の短編集で『東京奇譚集』(2005)。予想していたよりずっと面白かった。独自の文体と、視点で読み飽きることが無かった。アナログ写真のネガとポジを巧みにひっくり返して、普段見えていない世界を描いて見せてくれたような作品で、新鮮な驚きがあった。
そこで、『ねじまき鳥クロニクル』新潮文庫(全3巻)を買ってきた。
実はこの作品、以前ある心理学の本を読んでいた中で取り上げられていたので、いつか読んでみたいと思っていたのだが、かなり長いこともあってなかなか手を出せずにいた。
全体の構成、心理描写、センスがいいなあ。
人間の持つ暗黒な部分をファンタジックというかシュールな世界として描いているので、好き嫌いがはっきりとしやすい作家かもしれない。が、個人的には読んでいて興味の尽きない作品だった。ただ、終わり方があっさりしすぎていて物足りない感じはあった。それも、「始まりも終わりもないストーリー」と考えれば、納得できなくもない。
このひとは、あるいは中井英夫の影響を受けているのではないだろうか。小説の構成方法が似ているような気がする。

こういう作品を読むと「文庫で3巻買っても2千円しないので本はやっぱり高くはない」と、思う。読書習慣は一生の宝。荷物にもならないし、誰もそれを奪うことは出来ない。


話かわって、昨日(5/31)午後のテレビ東京の映画『沈黙の断崖』(Fire Down Below1997)を何とはなしに見ていたら、ザ・バンドのメンバーでこの4月19日に71歳で亡くなったレヴォン・ヘルム(Levon Helm)が牧師役で出ていたのでビックリ。
映画の内容は例のスティーブン・セガールの勧善懲悪アクションものでどうでもいいのだが、冒頭でいきなりオールドタイムを想わせるピードモントの古い写真が出てきて、そのあとカントリーからブルースまでを映画の中で巧みに織り込んでいて興味深かった。あのライトニン・ホプキンスまでが挿入歌として使われていたのだ。
レヴォン・ヘルムの演技はあまり良いとは言えなかったが、この映画は米国の音楽を理解する一助になるかもしれない。ちなみに、音楽はニック・グレニー・スミスという人が担当している。

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