以前、兵庫考古博物館へぷにょさんと訪れた時に、深井先生から教えて頂いた山形の鶴岡にある料亭、新茶屋のタイル。
6月にすでに見に行ったぷにょさんたちに遅れて、私はこの夏の旅のラストチャンスと、
タイルを観るため家族を置いて一人旅立つことにした。
そこそこ距離のある山形まで行くというのがハードル高かったが、往復夜行バスを使うことで、
費用節約&時間短縮化を図り、現地1泊2日で新茶屋を含む、鶴岡、酒田、そして山形の近代建築とタイルの完全制覇?!
目指してやって来た。
そして、事前にお電話でお願いしていた新茶屋へ。
最初、昼食を予約し、ついでに見せていただこうと思っていたのだけど、その日は夕方からのお客さんの準備のため
お昼はやっていないとのこと。しかし、見学はしてもらっても大丈夫、との有り難いお言葉を頂けた。
レンタサイクルを駅で借り、途中の物件を見つつ、新茶屋へ向かったが、なぜかスマホのナビが裏手の方を案内したため
住宅街の中をぐるぐる彷徨って、着いた時にはかなりぐったり。
気持ちばかりのお土産を渡し、「こちらのトイレです、自由に見て行ってください」と案内されたトイレの扉を開けると、
うぉおおおーーー
そこには写真では見ていたが、驚愕のタイルワールドが広がっていた。
男子用便所の一つ一つの仕切りにはマジョリカタイルがびっしり~
なんと優雅な衝立なのか・・
仕切りだけでなく便器の背面にもびっしり・・
トイレという汚染されても仕方がないような場所で、よくぞこのような状態で、ひとつの汚れもなくタイルが残っているなんて奇跡!
そして美し過ぎる!
仕切りの天辺には人造石研ぎ出し仕上げによる雲型の一捻り効かせたデザインが用いられていて、
タイルと石とのコラボも見事に決まってる。
そして最も驚くべき装飾は奥の壁面に描かれるタイルで作られた朝顔と蔓。
深井先生によると、この花などそのものの形を表すタイルは形象タイルと呼ぶのだとか。
竹の支柱にからみつく朝顔、そして蔓の様子はなんと風流なのであろう・・
ここがトイレ、という空間だということをすっかり忘れてしまうほど。
便器をなくせば、上質なカフェ空間だなあ。
ぶつぶつと細かな石が浮き出る洗い出し仕上げの壁面に鮮やかな紫の朝顔が映える。
レリーフ状に形作られた、朝顔と葉が可憐!
蔓の表現も秀逸・・
便器の下に敷かれたタイルもよく見ると、こんなに美しいマーブル模様をしている。
人造石研ぎ出し仕上げの床は格子状に赤いラインが入れられ、大小2種類のマジョリカタイルがポイント的に入れられている。
その床は寝そべってごろごろしても大丈夫そうなくらいピカピカなのだ。
マジョリカタイルだけでなく、対面する壁にはびっしりと本業タイルが貼られている。
そして天井を見上げると格天井という、豪華絢爛な空間。
細かいモザイクタイルが貼られた階段を上がると、
そこには個室が二つ並ぶ。
個室内にも抜かりなくタイルがびっしりと。
床はモノトーンの七宝繋ぎ紋のタイルが貼られ、
壁にはシンプルなアイボリー色のタイル、そしてその上にはボーダー状に巡らされた洗い出し仕上げの壁には
小さなサイズのマジョリカタイルに、朝顔、
そして桜の花をかたどった形象タイルが貼られてる。
これも可愛いタイルだなあ。男子トイレなので、この桜の花型タイルは控え目に?使われてるようだ。
ほんとうに何を見ても感嘆の声を上げずにはおれないすばらしい空間・・
トイレという小空間ながら、モザイクタイルからマジョリカタイル、形象タイル、そして本業タイルとさまざまなタイル
の濃密な競演が見られるという、正にタイルパラダイスな世界がそこに広がっていたのだった。
新茶屋のトイレ、おそるべし。。