「さまざまなことに『コア』と呼びうるものがあり、努力をそこに集中すべきだ」ということを、全体の中でコアが占める比率は量的には2割程度であることが多く、他方で「コア」によって全体の成果や価値の8割程度が生み出される場合が多いという「2:8法則」を用いて論じる本。
著者は、類書では、コアはどうすれば見いだすことができるのか、コアが変化したときどのように対応したらよいのかを語っていないとして、「この問題に対して解を与えようというのが、本書の目的です」(4~5ページ)と述べています。
では、この本では、コアをどうやって見いだすかについてどのように述べているでしょうか。書類や資料のコアはよく使うもの、新しいもので、著者推奨の資料を封筒に入れて入手したときと使ったときに一番左側(端)に置くという「超」整理法で自動的に重要な資料は左側に集中すると論じています。これは正しくまた機能的な方法論だと思いますが、「超」整理法ですでに語り尽くした話で新味はありません。書籍では、目次で全体の位置づけを把握し、特に論文は結論から読み、索引で掲載ページ数が多いもの(キーワード)を見ると述べています。索引は、漫然と作ると、重要語の引用か所がやたらと多くなりますが、引用をきちんと定義部分や重要か所に絞り引用か所が多いキーワードは別の言葉と組み合わせて別項目にした方が実務的に使いやすいと思います(近年、私が編集責任者の第二東京弁護士会労働問題検討委員会編の「労働事件ハンドブック」とその追補ではそういう努力をしています)。そういう工夫をすると、著者の言う通りにはならないと思います。それに、この本の索引を見ると(索引のある本は手抜きをしていない本だということを「是非評価していただきたい」とまでおっしゃるので:112ページ)、別格の「コア」(6か所)、「2:8の法則」(5か所)を除けば、「べき乗分布」と並んで「グーグル」が堂々第3位の4か所、「ジップの法則」「フラクタル性」「ブラック・スワン」「分類」と並んで「アマゾン」「タレブ、ナシーム・ニコラス」が5位の3か所となっています。これがこの本の「コア」なのでしょうか。
そしてこの本が主たるテーマとしていると思われる「ビジネス」でのコアの見つけ方は、ビッグデータの利用とそのパーソナルデータ利用による「レコメンデーション(お勧め)」表示という一般人は使う側には回れないものの他は、歴史書を読み教養を深める、エスセルを駆使してグラフを書く、有能な人の名人芸を見習うというのでは、類書はコアの見つけ方を書いていない、この本はそれを書くと言い切った「はじめに」での読者との約束を果たしたと言えるでしょうか。
文章を書くときに「『これ以上削ったらまったく意味がとれなくなるか?』と考えてみましょう。そうでなければ、削りましょう。」(38ページ)とまで言っています。この本がかなりの紙幅を割いている「2:8法則」の説明なり「論証」は、ある意味でどこでも聞く話ですし、もともと厳密な数字でもないと断っているのですから、冗長な説明論証は不要だと思います。頑張って削っているというよりは、むしろだらだら膨らませているように見えます。「2:8法則」自体は数行で説明して、後は実践論に入ればいいのにと思いました。

野口悠紀雄 講談社現代新書 2015年9月20日発行
著者は、類書では、コアはどうすれば見いだすことができるのか、コアが変化したときどのように対応したらよいのかを語っていないとして、「この問題に対して解を与えようというのが、本書の目的です」(4~5ページ)と述べています。
では、この本では、コアをどうやって見いだすかについてどのように述べているでしょうか。書類や資料のコアはよく使うもの、新しいもので、著者推奨の資料を封筒に入れて入手したときと使ったときに一番左側(端)に置くという「超」整理法で自動的に重要な資料は左側に集中すると論じています。これは正しくまた機能的な方法論だと思いますが、「超」整理法ですでに語り尽くした話で新味はありません。書籍では、目次で全体の位置づけを把握し、特に論文は結論から読み、索引で掲載ページ数が多いもの(キーワード)を見ると述べています。索引は、漫然と作ると、重要語の引用か所がやたらと多くなりますが、引用をきちんと定義部分や重要か所に絞り引用か所が多いキーワードは別の言葉と組み合わせて別項目にした方が実務的に使いやすいと思います(近年、私が編集責任者の第二東京弁護士会労働問題検討委員会編の「労働事件ハンドブック」とその追補ではそういう努力をしています)。そういう工夫をすると、著者の言う通りにはならないと思います。それに、この本の索引を見ると(索引のある本は手抜きをしていない本だということを「是非評価していただきたい」とまでおっしゃるので:112ページ)、別格の「コア」(6か所)、「2:8の法則」(5か所)を除けば、「べき乗分布」と並んで「グーグル」が堂々第3位の4か所、「ジップの法則」「フラクタル性」「ブラック・スワン」「分類」と並んで「アマゾン」「タレブ、ナシーム・ニコラス」が5位の3か所となっています。これがこの本の「コア」なのでしょうか。
そしてこの本が主たるテーマとしていると思われる「ビジネス」でのコアの見つけ方は、ビッグデータの利用とそのパーソナルデータ利用による「レコメンデーション(お勧め)」表示という一般人は使う側には回れないものの他は、歴史書を読み教養を深める、エスセルを駆使してグラフを書く、有能な人の名人芸を見習うというのでは、類書はコアの見つけ方を書いていない、この本はそれを書くと言い切った「はじめに」での読者との約束を果たしたと言えるでしょうか。
文章を書くときに「『これ以上削ったらまったく意味がとれなくなるか?』と考えてみましょう。そうでなければ、削りましょう。」(38ページ)とまで言っています。この本がかなりの紙幅を割いている「2:8法則」の説明なり「論証」は、ある意味でどこでも聞く話ですし、もともと厳密な数字でもないと断っているのですから、冗長な説明論証は不要だと思います。頑張って削っているというよりは、むしろだらだら膨らませているように見えます。「2:8法則」自体は数行で説明して、後は実践論に入ればいいのにと思いました。

野口悠紀雄 講談社現代新書 2015年9月20日発行