大学院で日本語教育・日本語研究を指導する著者が、まえがきによれば「筆者の指導経験に基づき、発表レジュメの書き方、論文の書き方を中心に、テーマ決めから研究方法、論文のまとめ方などの論文・レポート執筆に当たっての注意点を紹介・説明し、また対照研究の観点から研究への取り組み方も事例を通して説明する」(2ページ)という本。
テーマ決め、文献探し、先行研究の扱い、引用、図・表・注、まとめ、参考文献・資料、謝辞については、論文・レポート一般に適用可能な記述になっていると思います(ただし、類書と比較してその充実度には不満があります)。他方、研究手段、研究資料、対照研究、記述研究の項目は、そのほとんどが著者の専門領域の日本語研究独特の内容で、しかも論文作成の技術というよりも日本語会話をめぐる著者の研究や見解に紙幅が割かれてテーマから外れた印象です。
著者はテーマ決めの項目(7~18ページ)で、タイトル(本題と副題)の付け方に言及し、本題が広すぎるときには副題で範囲を限定するように注意し、ドリルでは「現代の日本語と母語の対照研究」や「日本の茶道と禅宗について」などのタイトル例には、「解答」で副題を付けて限定すべきことを指摘しています。文科系一般に通じるとは思えない記述に満ち、作文技術とは言えない記述も多く、他方作文技術としては充実しているとも言いにくいこの著書に、副題なく「文科系の作文技術」というタイトルを付したことは、著者の指導内容と食い違っているように思えてなりません。
日本語研究のために論文・レポートを書こうとする読者にとっては、作文技術以外に着想の助けになることが予想できますが、それ以外の領域の研究や文書作成を志す者が、タイトルに惹かれて読んだ場合、思惑に外れた読後感を持つものと思います。
許夏玲 白帝社 2016年1月27日発行
テーマ決め、文献探し、先行研究の扱い、引用、図・表・注、まとめ、参考文献・資料、謝辞については、論文・レポート一般に適用可能な記述になっていると思います(ただし、類書と比較してその充実度には不満があります)。他方、研究手段、研究資料、対照研究、記述研究の項目は、そのほとんどが著者の専門領域の日本語研究独特の内容で、しかも論文作成の技術というよりも日本語会話をめぐる著者の研究や見解に紙幅が割かれてテーマから外れた印象です。
著者はテーマ決めの項目(7~18ページ)で、タイトル(本題と副題)の付け方に言及し、本題が広すぎるときには副題で範囲を限定するように注意し、ドリルでは「現代の日本語と母語の対照研究」や「日本の茶道と禅宗について」などのタイトル例には、「解答」で副題を付けて限定すべきことを指摘しています。文科系一般に通じるとは思えない記述に満ち、作文技術とは言えない記述も多く、他方作文技術としては充実しているとも言いにくいこの著書に、副題なく「文科系の作文技術」というタイトルを付したことは、著者の指導内容と食い違っているように思えてなりません。
日本語研究のために論文・レポートを書こうとする読者にとっては、作文技術以外に着想の助けになることが予想できますが、それ以外の領域の研究や文書作成を志す者が、タイトルに惹かれて読んだ場合、思惑に外れた読後感を持つものと思います。
許夏玲 白帝社 2016年1月27日発行