刑事雪平夏見シリーズ第3作。
第1作及びそれに続く第2作から2年後、雪平の元夫佐藤和夫が殺害され、その口に「殺人ビジネス、始めます」というチラシが差し込まれ、それから連続殺人事件が発生するという展開で、雪平が安藤、林堂、平岡を巻き込んで型破りな行動で犯人を追っていきます。
意外な結末を狙って、犯人像・犯行動機に無理をしている様子がありありで、読み終わってストンと落ちませんが、展開の妙とスリリングさは味わえると思います。
毎度、雪平に犯人を射殺させるか、雪平が殺されかけ、瀕死の重傷を負うというパターンには閉口します。この作者には、キャラ立ちさせ、作者を潤している雪平への愛はないのか、単なる消耗品なのかという疑問を感じます。
「どうしてマスコミは、連日こんな報道ばかりするのだろう。その報道が、第二、第三の類似の犯罪を生んでいるという自覚はないのだろうか。間接的に、自分たちも犯罪に手を貸しているという自覚はないのだろうか。」「何かしたくても、具体的に何をすればいいのか自分では思いつけない男は世の中にたくさんいる。そういう連中に、『方法』を教えているのが今のマスコミだ」(116ページ)…そういう面はあると思いますが、残虐な殺人事件の描写で商売しているミステリー作家に、それを言う資格があるのかと、より強く思います。
第1作、第2作についている(第4作、第5作にもついている)登場人物の一覧表が、この作品にはついていません。冒頭で、27ページまで名前を出さずに描写している雪平を、雪平と気づかせたくないためでしょうか。殺された男の名前が22ページで登場し、第1作、第2作を読んだ読者なら、それが雪平の元夫の名前だということは、登場人物の一覧表がなくてもわかると思うのですが。犯人周辺の者の紹介がしにくいからということなんでしょうか。通常の推理小説では、当たり障りのない紹介をして、問題なく登場人物の一覧表を作っているのですが。
第1作、第2作でフォントや組みを変えたり黒い背景に白抜きにしたりの仰々しいページが入れられていましたが、第3作ではそういうやり方は改め、一部のエピソードとグレーのページにしてあります。そこは、後で読み返したくなるところなので、色が違うことで探すのが楽になっていて、本として以前よりは上品になり読者サービスにもなっていると思いました。
秦建日子 河出文庫 2011年7月20日発行(単行本は2009年10月)
第1作及びそれに続く第2作から2年後、雪平の元夫佐藤和夫が殺害され、その口に「殺人ビジネス、始めます」というチラシが差し込まれ、それから連続殺人事件が発生するという展開で、雪平が安藤、林堂、平岡を巻き込んで型破りな行動で犯人を追っていきます。
意外な結末を狙って、犯人像・犯行動機に無理をしている様子がありありで、読み終わってストンと落ちませんが、展開の妙とスリリングさは味わえると思います。
毎度、雪平に犯人を射殺させるか、雪平が殺されかけ、瀕死の重傷を負うというパターンには閉口します。この作者には、キャラ立ちさせ、作者を潤している雪平への愛はないのか、単なる消耗品なのかという疑問を感じます。
「どうしてマスコミは、連日こんな報道ばかりするのだろう。その報道が、第二、第三の類似の犯罪を生んでいるという自覚はないのだろうか。間接的に、自分たちも犯罪に手を貸しているという自覚はないのだろうか。」「何かしたくても、具体的に何をすればいいのか自分では思いつけない男は世の中にたくさんいる。そういう連中に、『方法』を教えているのが今のマスコミだ」(116ページ)…そういう面はあると思いますが、残虐な殺人事件の描写で商売しているミステリー作家に、それを言う資格があるのかと、より強く思います。
第1作、第2作についている(第4作、第5作にもついている)登場人物の一覧表が、この作品にはついていません。冒頭で、27ページまで名前を出さずに描写している雪平を、雪平と気づかせたくないためでしょうか。殺された男の名前が22ページで登場し、第1作、第2作を読んだ読者なら、それが雪平の元夫の名前だということは、登場人物の一覧表がなくてもわかると思うのですが。犯人周辺の者の紹介がしにくいからということなんでしょうか。通常の推理小説では、当たり障りのない紹介をして、問題なく登場人物の一覧表を作っているのですが。
第1作、第2作でフォントや組みを変えたり黒い背景に白抜きにしたりの仰々しいページが入れられていましたが、第3作ではそういうやり方は改め、一部のエピソードとグレーのページにしてあります。そこは、後で読み返したくなるところなので、色が違うことで探すのが楽になっていて、本として以前よりは上品になり読者サービスにもなっていると思いました。
秦建日子 河出文庫 2011年7月20日発行(単行本は2009年10月)