刑事雪平夏見シリーズ第5作。
第3作及びそれに続く第4作から4年後、警視庁警務部監察官室から新宿警察署組織犯罪対策課暴力犯捜査1係に異動になった雪平が、新宿署管内で発生しすでに解決していたはずのひき逃げ事件について目撃者から犯人は別人だと言われて掘り起こしを始め、その背景にあった新宿警察署と暴力団の癒着、権力の陰謀に巻き込まれていくというお話。
映画「アンフェア」が警察権力の陰謀をテーマとしているのに対し、原作はそれとは関係のない個人レベルの殺人鬼の話ばかりだったのが、映画に触発されたのか、この第5作では国家レベルの陰謀を初めて背景に選んでいます。タイトルは、これまでで一番ストレートで内容にフィットしているように思えます。
雪平、安藤、林堂、平岡の関係に変化が生じ、あるいは変化の兆しが見られます。シリーズを長く書こうとする作者が、そちらでの話題でもたせようとし始めたということかなと思います。第4作までで存在感を高めていた林堂、魅力を増してきた平岡を、あまり活躍させず、普通の駒にしてしまいかねない作者のやり方には、私はあまり賛同できないのですが。
また、第5作では、次作への続きを思わせる要素が入り込んできました。これまでは1話完結だったのが、未解決部分を残すようになりました。露骨に「次号に続く」とまでは書かれていませんが、せっかく作品の流れている間は上品になってきたのに、やはり品がないなぁという読後感になってしまいます。
ちなみに第3作で雪平が撃たれたのが1月4日、第4作で雪平の上司の島津が殺害されたのはその年の3月初めの日曜日なのですが、第5作では、雪平が撃たれたのが4年前(20ページ)で、島津が殺されたのが「もう3年も前の話になった」(25ページ)って…この場面は雪平の新宿署初出勤直前ですから、設定上、雪平が撃たれたのは4年3か月ちょっと前、島津が殺されたのは4年1か月ちょっと前になるはずなんですが。
秦建日子 河出書房新社 2015年8月20日発行
第3作及びそれに続く第4作から4年後、警視庁警務部監察官室から新宿警察署組織犯罪対策課暴力犯捜査1係に異動になった雪平が、新宿署管内で発生しすでに解決していたはずのひき逃げ事件について目撃者から犯人は別人だと言われて掘り起こしを始め、その背景にあった新宿警察署と暴力団の癒着、権力の陰謀に巻き込まれていくというお話。
映画「アンフェア」が警察権力の陰謀をテーマとしているのに対し、原作はそれとは関係のない個人レベルの殺人鬼の話ばかりだったのが、映画に触発されたのか、この第5作では国家レベルの陰謀を初めて背景に選んでいます。タイトルは、これまでで一番ストレートで内容にフィットしているように思えます。
雪平、安藤、林堂、平岡の関係に変化が生じ、あるいは変化の兆しが見られます。シリーズを長く書こうとする作者が、そちらでの話題でもたせようとし始めたということかなと思います。第4作までで存在感を高めていた林堂、魅力を増してきた平岡を、あまり活躍させず、普通の駒にしてしまいかねない作者のやり方には、私はあまり賛同できないのですが。
また、第5作では、次作への続きを思わせる要素が入り込んできました。これまでは1話完結だったのが、未解決部分を残すようになりました。露骨に「次号に続く」とまでは書かれていませんが、せっかく作品の流れている間は上品になってきたのに、やはり品がないなぁという読後感になってしまいます。
ちなみに第3作で雪平が撃たれたのが1月4日、第4作で雪平の上司の島津が殺害されたのはその年の3月初めの日曜日なのですが、第5作では、雪平が撃たれたのが4年前(20ページ)で、島津が殺されたのが「もう3年も前の話になった」(25ページ)って…この場面は雪平の新宿署初出勤直前ですから、設定上、雪平が撃たれたのは4年3か月ちょっと前、島津が殺されたのは4年1か月ちょっと前になるはずなんですが。
秦建日子 河出書房新社 2015年8月20日発行