人の人生は、理想の自分・本当の自分を追い求める必要はなく、悩み苦しむ今の自分のままでいい、人生は試行錯誤だ、なるべきようになるしなるようにしかならないなどを基調とした人生論。
どんな生き方をしようとも、それでいい。もし人よりすぐれた野心やエネルギー、才能などを持ち合わせたなら、それを十分に発揮して世のため人のために尽くせばいい。それはその人自身の幸せなのであって、他人に自慢することでもなく、周りが賞賛しなければならないことでもないというまえがき(1~4ページ)に、著者の姿勢が表されています。
人生は歓び上手でありたい(64~67ページ)。感情豊かにいろいろなことに敏感に反応し続けることは、そのまま人生の豊かさにつながるとして、成功に歓び、失敗に思い切り残念がり、感情を揺り動かすことが柔軟な心をつくりだすのではないかとも述べ(102~105ページ)、悲しみの効用をも説いています(76~79ページ)。もっとも、怒りは毒とも述べているのですが(72~75ページ)。
自分の力ではどうにもならない、そうしたことに気づくことは、他者への尊敬や他者の立場を慮るような想像力の豊かさにも転じるのではないか。20世紀から現代に至るまでに起こった問題の多くが、人間が傲慢になりすぎたことに起因しているのではないか。人間は偉大だ、他の動植物とは違う優越した存在だ、そう考えた人間の傲慢さが環境問題などの問題を引き起こしてきたのではないか。うつ病などのこころの病もそうした傲慢さから生まれたひずみではないか(136~141ページ)。大いなる力・自然の脅威への畏敬と他者への感謝…昨今、言葉としてはよく言われることですが、私たちはその内実をどれだけ噛みしめているのか、改めて考えさせられます。

五木寛之 PHP研究所 2017年3月8日発行
どんな生き方をしようとも、それでいい。もし人よりすぐれた野心やエネルギー、才能などを持ち合わせたなら、それを十分に発揮して世のため人のために尽くせばいい。それはその人自身の幸せなのであって、他人に自慢することでもなく、周りが賞賛しなければならないことでもないというまえがき(1~4ページ)に、著者の姿勢が表されています。
人生は歓び上手でありたい(64~67ページ)。感情豊かにいろいろなことに敏感に反応し続けることは、そのまま人生の豊かさにつながるとして、成功に歓び、失敗に思い切り残念がり、感情を揺り動かすことが柔軟な心をつくりだすのではないかとも述べ(102~105ページ)、悲しみの効用をも説いています(76~79ページ)。もっとも、怒りは毒とも述べているのですが(72~75ページ)。
自分の力ではどうにもならない、そうしたことに気づくことは、他者への尊敬や他者の立場を慮るような想像力の豊かさにも転じるのではないか。20世紀から現代に至るまでに起こった問題の多くが、人間が傲慢になりすぎたことに起因しているのではないか。人間は偉大だ、他の動植物とは違う優越した存在だ、そう考えた人間の傲慢さが環境問題などの問題を引き起こしてきたのではないか。うつ病などのこころの病もそうした傲慢さから生まれたひずみではないか(136~141ページ)。大いなる力・自然の脅威への畏敬と他者への感謝…昨今、言葉としてはよく言われることですが、私たちはその内実をどれだけ噛みしめているのか、改めて考えさせられます。

五木寛之 PHP研究所 2017年3月8日発行