伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

夜はおしまい

2021-02-15 23:45:28 | 小説
 人数集めで駆り出されたミスコンで自分より劣ると思っていた相手より低い最低点を付けられてプライドを傷つけられて、声をかけてきた軽薄なたかり男に貢ぐ神学部の学生琴子、小さな新興宗教団体の教祖となっている母葉子に反発し、複数の男の愛人となって男にたかり続けそれをホストクラブで吐き出す結衣、夫と子どもを持ちながら次々と男を作り長年の愛人を困惑させる作家の「私」、男性に興味が持てず女性に惹かれながらも体では受け容れられないもどかしさを引きずるカウンセラーの更紗が、性の悩みを持ち、神父の金井先生に告解し相談し語らう短編連作。
 バラバラのような、しかしどこかでつながっているような登場人物たちが、神父の金井先生と話すこと、父親かそれに近い関係の大人の男性による幼少期の性的虐待があるいは明示されあるいは暗示されていること、中国との軍事的緊張・戦争体制に向かう社会の暗示というあたりが、全体に漂っています。
 どの登場人物も、伸びやかさや楽しみ・喜びとは対極の悲しい苦しい性行為を持ち続けたり、性に絶望し悲しく虚しく思うさまが描かれています。その原因に思いを致し、またその悲しみを偲ぶ作品なのでしょう。
 「群像」の2014年から2015年にかけて掲載された作品が2019年になって単行本になったのはどういう事情なのでしょう。


島本理生 講談社 2019年10月23日発行
「群像」連載
コメント
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