出版大手の薫風社が発行するカルチャー月刊誌「トリニティ」の編集長速水輝也が、編集局長からは黒字化しないと廃刊と脅しつけられ、大御所作家や新人の有望作家、社内の広告局やテレビ局、編集部内の仕事も気配りもできない副編集長、感情的なベテラン女性編集者、腕がいいがわがままで速水と愛人関係の若手編集者、家庭内別居状態の妻と小学生の娘などに挟まれ、せめぎ合いとさまざまな思惑の中を泳ぎ続ける出版業界内幕的なサラリーマン哀話小説。
最初から主人公を俳優大泉洋に設定して書かれ、そのとおりに大泉洋主演で映画化されました。映画の公開は、新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言等での客の減少を見込んですでに2回も延期されているという、観客ではなく、制作者の黒字化の欲望のみを考えた「薫風社」幹部と同じ思考に支配された状態ですが。
映画化されたために読んでみる気になったのですが、映画の予告編ラストの高野(松岡美優)の「人を騙してそんなに面白いですか」、速水(大泉洋)の「めちゃくちゃ面白いです」という決め台詞は原作にありませんし、原作は映画のキャッチの「騙し合いバトル」という性格ではないように思えます。原作が、速水の小説への愛情を基本線に置き、速水の術策も、無理を強いられ様々な利害・思惑・圧力の渦巻く中での生き残り策と位置づけているのに対して、映画は相当な書き換えをして臨むように見えます。登場人物も、クセの強い編集局長を亡き者とした(関西弁の適役がいなかったのか?)のをはじめ、いろいろ変更しているようです。見終わった後に、儲かれば、客が入れば何でもいいってことだよね、ではなくて、作品への愛とか、映画への愛が感じられたらいいのですが。
塩田武士 角川文庫 2019年11月25日発行(単行本は2017年8月)
最初から主人公を俳優大泉洋に設定して書かれ、そのとおりに大泉洋主演で映画化されました。映画の公開は、新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言等での客の減少を見込んですでに2回も延期されているという、観客ではなく、制作者の黒字化の欲望のみを考えた「薫風社」幹部と同じ思考に支配された状態ですが。
映画化されたために読んでみる気になったのですが、映画の予告編ラストの高野(松岡美優)の「人を騙してそんなに面白いですか」、速水(大泉洋)の「めちゃくちゃ面白いです」という決め台詞は原作にありませんし、原作は映画のキャッチの「騙し合いバトル」という性格ではないように思えます。原作が、速水の小説への愛情を基本線に置き、速水の術策も、無理を強いられ様々な利害・思惑・圧力の渦巻く中での生き残り策と位置づけているのに対して、映画は相当な書き換えをして臨むように見えます。登場人物も、クセの強い編集局長を亡き者とした(関西弁の適役がいなかったのか?)のをはじめ、いろいろ変更しているようです。見終わった後に、儲かれば、客が入れば何でもいいってことだよね、ではなくて、作品への愛とか、映画への愛が感じられたらいいのですが。
塩田武士 角川文庫 2019年11月25日発行(単行本は2017年8月)