伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

嗜好品の社会学 統計とインタビューからのアプローチ

2021-02-10 21:55:35 | 人文・社会科学系
 公益財団法人たばこ総合研究センターの委託研究として行われた2018年嗜好品と豊かさや幸福に関する調査(有効標本数2678、有効回収数1137の訪問面接調査)及びその回答者中のインタビュー調査同意者のうちの24名に対するインタビューに基づく、コーヒー、茶、スイーツ、酒、たばこの5種の嗜好品に関する日本人の摂取傾向、摂取目的、社交性や幸福感等の関係について論じた本。
 摂取頻度についての種別の関連性では、スイーツ・茶グループとコーヒー・酒・たばこグループに分かれ(1章)、男性では高学歴・高収入層に5種の嗜好品を幅広く摂取し、低学歴層に紙巻きたばことビールを好み、低収入層にコーヒー・茶・スイーツを好み酒・たばこを摂取しないクラスがそれぞれ存在することがわかった、女性ではやはり高学歴・高収入層に5種の嗜好品を幅広く摂取し、低収入層にコーヒー・茶・スイーツを好み酒・たばこを摂取しないクラスが存在することがわかった(2章)などとされています。統計を用いたあれこれの分析によるもので、私には計り知れないところですが、学歴・収入と嗜好品の相関については、本当かねという思いと、この調査とこの分析でそう判断していいのかねという疑問を、私は感じました。
 それぞれの章はそれぞれの執筆者がどこかに発表した論文なのでしょうか。この本のどこにもそういう紹介はないのですが。それぞれの章で、元にした2018年の調査とインタビューの概要の説明が繰り返され、同じ質問項目と結果が何度も掲載されたり、それ以外でも同じような議論が繰り返されています。学者さんの共同執筆にありがちではありますが(弁護士の共同執筆のQ&A形式の解説本にもありがちですが…(-_-; )、1冊の本として通し読みする読者の存在やその苦痛を全然考えていない自己満足ぶりがプンプンしています。編者が1章と8章を執筆していますが、同じ人物が1冊の本で書いた文章で、元にしたインタビューの概要について書いた箇所、1章の「2.3」(27~28ページ)と8章の「2.3」(195~196ページ)は8章で第1段落末尾の「その結果、質的データでありながら、代表性もある程度あるものとなっている。」の1文がカットされている、第2段落終わりから2文目末尾のインタビューが1人あたり90分から2時間「使用された」が「だった」に変えられている、第4段落の「典型的な2人に注目し」が「特徴的な2人にフォーカスし」に変えられている以外はまったく同文を掲載しています。もう少しなんとかならないものでしょうか。


小林盾編 東京大学出版会 2020年11月30日発行
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