高校を中退して両親の提案でアメリカ留学しニューヨークに住む叔母夫婦の下で大学附属の語学学校に通う17歳の三浦逸佳が、従妹の14歳の木坂礼那とともに旅立ち、礼那の読む小説「ホテル・ニューハンプシャー」の舞台やボストン、湖水地方を経て西部を目指し、さまざまな人と出会いアクシデントがありながら旅していく中で、さまざまな経験をして気持ちが移ろいで行き、親たちの思い、関係にも変化を与えていくという小説。
人付き合いが苦手で内向きだが芯の強い逸佳とオープンで明るく人なつこい礼那の組み合わせがうまくかみ合い、シリアスで重くなりがちな局面を軽く流しています。礼那が「チーク!」と言って逸佳に頬を寄せ、逸佳に手を腕を絡める場面が度々出てくるのが微笑ましい。
やきもきする礼那の母理生那と焦り苛立つ父潤、娘を頼もしく想い密かに応援する逸佳の父新太郎と立ち位置がやや不明の妻(名前も出てこず語り手となる場面もない)の心情の変化も、変化したのは理生那だけかも知れませんが、サブテーマになっています。
逸佳(いつか)という名前(礼那の語りの場面ではいつも「いつか」とひらがなで表記されます)が、全然関係ないのですが、辻仁成の「サヨナライツカ」を連想させ、その語呂合わせで、小説の設定や進行と別に感傷的な心情を持ってしまいました。登場人物の名前を決めるとき、そういうことも考慮するのかなと、ちょっと思いました。

江國香織 集英社 2019年5月10日発行
「小説すばる」連載
人付き合いが苦手で内向きだが芯の強い逸佳とオープンで明るく人なつこい礼那の組み合わせがうまくかみ合い、シリアスで重くなりがちな局面を軽く流しています。礼那が「チーク!」と言って逸佳に頬を寄せ、逸佳に手を腕を絡める場面が度々出てくるのが微笑ましい。
やきもきする礼那の母理生那と焦り苛立つ父潤、娘を頼もしく想い密かに応援する逸佳の父新太郎と立ち位置がやや不明の妻(名前も出てこず語り手となる場面もない)の心情の変化も、変化したのは理生那だけかも知れませんが、サブテーマになっています。
逸佳(いつか)という名前(礼那の語りの場面ではいつも「いつか」とひらがなで表記されます)が、全然関係ないのですが、辻仁成の「サヨナライツカ」を連想させ、その語呂合わせで、小説の設定や進行と別に感傷的な心情を持ってしまいました。登場人物の名前を決めるとき、そういうことも考慮するのかなと、ちょっと思いました。

江國香織 集英社 2019年5月10日発行
「小説すばる」連載