古代マヤ文明について、幅広い時期と地域を対象としつつ、著者の専門領域の考古人骨研究の成果を中心に研究の現状を解説した本。
ストロンチウムの同位体が、ストロンチウム86は(全世界・全時代で)一定の割合で存在するが、ストロンチウム87は基盤岩中のルビジウム87によりその存在量が変化することに着目して、地域によるストロンチウム86とストロンチウム87の同位体比をマッピングし、発掘された人骨の第一大臼歯(乳児期に形成)の同位体比でおおよその出生地を、第三大臼歯(親知らず)の同位体比で幼少期に過ごした場所を特定して、人物の移動を推定する(68~71ページ)方法によって、古代マヤ文明の各都市/遺跡の建設・維持を担った人たちがどこから来たのかを推定し(73~84ページ)、考古学的な検討から言われてきた他の文明からの影響や征服などの諸説が覆されたという説明がなされています。さまざまな知見/技術が新たな知見/知識を生んでいく様子に驚かされます。
マヤ人の身長は古代から時代を追って小さくなっており、その原因は、社会格差の拡大にあり、それが集団としての栄養状態を低下させたと評価されています(128~129ページ)。文明の発達が、社会全体の利益につながらず、持たざる者の不幸を増大化させていることは、実に嘆かわしい。
まえがきでは、「21世紀の現在、古代マヤ文明はおそらくもう謎の古代文明ではない」「かつて神秘のヴェールを纏っていた謎のマヤ文字も、今や言語学に基づいた碑文学研究によって、その大半が読める歴史文書になっている」と書かれているのですが、本文を読み進んでも残された謎が多く、マヤ文字についても180~190ページで具体的な解説はあるのですが読んでもほとんど理解できなくて「お手上げ」感があり、今ひとつ、マヤ文明を理解できたという満足感を持ちにくく思えました。

鈴木真太郎 中公新書 2020年12月25日発行
ストロンチウムの同位体が、ストロンチウム86は(全世界・全時代で)一定の割合で存在するが、ストロンチウム87は基盤岩中のルビジウム87によりその存在量が変化することに着目して、地域によるストロンチウム86とストロンチウム87の同位体比をマッピングし、発掘された人骨の第一大臼歯(乳児期に形成)の同位体比でおおよその出生地を、第三大臼歯(親知らず)の同位体比で幼少期に過ごした場所を特定して、人物の移動を推定する(68~71ページ)方法によって、古代マヤ文明の各都市/遺跡の建設・維持を担った人たちがどこから来たのかを推定し(73~84ページ)、考古学的な検討から言われてきた他の文明からの影響や征服などの諸説が覆されたという説明がなされています。さまざまな知見/技術が新たな知見/知識を生んでいく様子に驚かされます。
マヤ人の身長は古代から時代を追って小さくなっており、その原因は、社会格差の拡大にあり、それが集団としての栄養状態を低下させたと評価されています(128~129ページ)。文明の発達が、社会全体の利益につながらず、持たざる者の不幸を増大化させていることは、実に嘆かわしい。
まえがきでは、「21世紀の現在、古代マヤ文明はおそらくもう謎の古代文明ではない」「かつて神秘のヴェールを纏っていた謎のマヤ文字も、今や言語学に基づいた碑文学研究によって、その大半が読める歴史文書になっている」と書かれているのですが、本文を読み進んでも残された謎が多く、マヤ文字についても180~190ページで具体的な解説はあるのですが読んでもほとんど理解できなくて「お手上げ」感があり、今ひとつ、マヤ文明を理解できたという満足感を持ちにくく思えました。

鈴木真太郎 中公新書 2020年12月25日発行