2005年から2007年にかけて話題を巻き起こしたが作者スティーグ・ラーソンの死によって第3巻で発刊が途絶したスウェーデン発のサスペンス小説「ミレニアム」シリーズを、別の作者が書き継いだ続刊。
前巻から数年後、花形ジャーナリストミカエル・ブルムクヴィストはスクープを取れず衰退を感じさせ、雑誌「ミレニアム」は経営が苦しくなり大手メディア企業セルネル社の支援を受け方針について圧力を受けるようになり、天才ハッカーリスベット・サランデルは行方をくらませたままという中で、人工知能研究の世界的権威フランス・バルデルが暗殺され、目撃していた自閉症の息子アウグストをめぐり警察と殺し屋が奪い合いをしているところにリスベットが現れてアウグストを連れ去り…という展開を見せます。
キャラ設定や世界観、女性に対する虐待や差別者に対する抗議・憎しみといったところは、スティーグ・ラーソンの著作を引き継いでいます。リスベットのハッカーとしての能力、数学・物理等の知識(知識欲)がより向上し、神業の域に達しようとしているのも、傾向としては前作の延長と見ることもできるでしょう。他方において、敵対者として前作ではたいした存在ではなかったリスベットの妹カミラを大きな存在に描き上げたことが、この巻ではカミラと権力の関係が必ずしも明らかでないことからどこに向かうのか判然とはしませんが、敵対者を権力から一個人に移して全体の構図を「ザラチェンコ一族の紛争・抗争」、さらには「女の敵は女」というようなものにしてしまうとすれば、スティーグ・ラーソンが目指していたものとは大きく変質してしまうと思います。
スティーグ・ラーソン作のシリーズの愛読者には、継承されている部分と違うタッチや方向性を感じさせる部分が微妙に気になるところではありますが、ラストシーンは前作からの愛読者の心をくすぐっています。すでに第5巻、第6巻が出版されていますが、続きは、何かの折に読んでみようと思います。
原題:MILLENNIUM : DET SOM INTE DODAR OSS
ダヴィド・ラーゲルクランツ 訳:ヘレンハルメ美穂、羽根由
早川書房 2015年12月25日発行(原書は2015年8月)
前巻から数年後、花形ジャーナリストミカエル・ブルムクヴィストはスクープを取れず衰退を感じさせ、雑誌「ミレニアム」は経営が苦しくなり大手メディア企業セルネル社の支援を受け方針について圧力を受けるようになり、天才ハッカーリスベット・サランデルは行方をくらませたままという中で、人工知能研究の世界的権威フランス・バルデルが暗殺され、目撃していた自閉症の息子アウグストをめぐり警察と殺し屋が奪い合いをしているところにリスベットが現れてアウグストを連れ去り…という展開を見せます。
キャラ設定や世界観、女性に対する虐待や差別者に対する抗議・憎しみといったところは、スティーグ・ラーソンの著作を引き継いでいます。リスベットのハッカーとしての能力、数学・物理等の知識(知識欲)がより向上し、神業の域に達しようとしているのも、傾向としては前作の延長と見ることもできるでしょう。他方において、敵対者として前作ではたいした存在ではなかったリスベットの妹カミラを大きな存在に描き上げたことが、この巻ではカミラと権力の関係が必ずしも明らかでないことからどこに向かうのか判然とはしませんが、敵対者を権力から一個人に移して全体の構図を「ザラチェンコ一族の紛争・抗争」、さらには「女の敵は女」というようなものにしてしまうとすれば、スティーグ・ラーソンが目指していたものとは大きく変質してしまうと思います。
スティーグ・ラーソン作のシリーズの愛読者には、継承されている部分と違うタッチや方向性を感じさせる部分が微妙に気になるところではありますが、ラストシーンは前作からの愛読者の心をくすぐっています。すでに第5巻、第6巻が出版されていますが、続きは、何かの折に読んでみようと思います。
原題:MILLENNIUM : DET SOM INTE DODAR OSS
ダヴィド・ラーゲルクランツ 訳:ヘレンハルメ美穂、羽根由
早川書房 2015年12月25日発行(原書は2015年8月)