幼いときに両親を失い、母の双子の弟にあたる叔父に育てられ、叔父が結婚する際に一人暮らしを始めたが、末期癌で余命幾ばくもなく33歳で死ぬことがわかり、叔父に知らせないままに、瀬戸内海の島にあるホスピス「ライオンの家」に入ることにした海野雫の日々の様子を描いた小説。
広い部屋、清潔なベッド、規則の制約はなし、優しいスタッフ、突然飛び込んできてなついた犬、おいしい食べ物…と、至福の思いをし、感激し幸福感に浸る主人公。難病もの、余命数か月ものの多くは、主人公が我が身に襲いかかった不条理を嘆き恨みふてくされる状況を描くことに紙幅を費やしますが、この作品はそれはわりとさらりと収めて、雫の幸福感を前面に出しています。こういうことなら、闘病など止めて緩和ケアのホスピス生活もいいかもと思えてしまいます。そういうところが新しい感覚でした。ホスピス業界の宣伝かもしれないし、実際にこんなことが期待できるものかには疑問がありますが。
後半は病状が悪化して衰弱していく様子が描かれるのですが、前半の幸福感が人生観を変えたということか、感謝の気持ちで語られます。衰弱と死がテーマなのですが、全体を通してどこか清々しい読み物です。叔父が述懐するように、雫がいい子過ぎると感じ(叔父はもちろん、雫の健気さに涙しているわけですが)、物足りなく思う向きもあるかもしれませんが。

小川糸 ポプラ社 2019年10月7日発行
2020年本屋大賞第2位
広い部屋、清潔なベッド、規則の制約はなし、優しいスタッフ、突然飛び込んできてなついた犬、おいしい食べ物…と、至福の思いをし、感激し幸福感に浸る主人公。難病もの、余命数か月ものの多くは、主人公が我が身に襲いかかった不条理を嘆き恨みふてくされる状況を描くことに紙幅を費やしますが、この作品はそれはわりとさらりと収めて、雫の幸福感を前面に出しています。こういうことなら、闘病など止めて緩和ケアのホスピス生活もいいかもと思えてしまいます。そういうところが新しい感覚でした。ホスピス業界の宣伝かもしれないし、実際にこんなことが期待できるものかには疑問がありますが。
後半は病状が悪化して衰弱していく様子が描かれるのですが、前半の幸福感が人生観を変えたということか、感謝の気持ちで語られます。衰弱と死がテーマなのですが、全体を通してどこか清々しい読み物です。叔父が述懐するように、雫がいい子過ぎると感じ(叔父はもちろん、雫の健気さに涙しているわけですが)、物足りなく思う向きもあるかもしれませんが。

小川糸 ポプラ社 2019年10月7日発行
2020年本屋大賞第2位