伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人

2022-12-25 23:40:15 | 小説
 自然堂紙パルプ商会という会社から独立して取引先と見込んだ出版社の社屋に近い西新宿に「渡部紙鑑定事務所」を名乗って事務所を構えたがその会社も移転してしまい、紙納品の仕事を探して外回り営業に明け暮れていた渡部圭が、「神探偵」と誤解した若い女性から同居中のカレシが作っている模型のジオラマをヒントに浮気調査を依頼され、その調査から派生して受けた別のジオラマの調査から失踪調査と殺人事件に巻き込まれて行くというミステリー小説。
 主人公の渡部圭の仕事は、ごく普通に考えて、紙類専門商社というべきもので、「紙鑑定」は商売にならないし、このミステリーでの調査にもほとんど役立ちません。余談・世間話的に紙についての蘊蓄が語られ、それ自体は興味深く読めますし、この作品の売りであろうとは思うのですが、主人公に「紙鑑定士」を名乗らせるのも、タイトルにそれを付けるのも場違いだと思います。タイトルは版元のマーケティング戦略によるところが大きいと作者が言い訳していることが解説で紹介されています(363ページ)が、作品の設定で「渡部紙鑑定事務所」「紙鑑定士」の名刺を持たせている(9ページ)のですから、出版社のせいとも言えないでしょう。
 なぜか次々ヒントが知らされるのを慌ただしく追っていく、例えばダン・ブラウンのラングドン教授シリーズのようなことを紙オタクと模型オタクがやる、みたいな印象です。
 前半から主人公の心情面で登場する(23ページ等)真理子と、主人公の真理子との関係も、後半に真理子が実際に登場すると、微笑ましくはありますが、前半でイメージさせたのとは違う感じです(読者の期待・予想とは異なっていると思います)。
 それらも含めて、ちょっと落ち着かない感じが残りました。


歌田年 宝島社文庫 2021年2月18日発行(単行本は2020年1月)
2019年このミステリーがすごい!大賞受賞作
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする