伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

だからフェイクにだまされる 進化心理学から読み解く

2022-12-17 21:22:40 | 人文・社会科学系
 フェイクに惑わされてはいけないといっても、フェイクは人間の本性に由来する問題でありフェイク情報への対抗は容易ではないことを理解した上でフェイクに対抗する技術を磨いていく必要があると論じる本。
 人間が騙されやすいのは、人類が(地球の寒冷化により森林が縮小し)森林からサバンナ(草原)へと生活の拠点を移したおよそ300万年前から1万年前までの「狩猟採集時代」に、協力生活の必要上、周囲の人の言うことを信じた方が集団の協力が進み生存に有利であったことから、聞いた話はまず本当だと思う「真実バイアス」を抱くようになったが、現代では社会状況が変化しそれがミスマッチとなっているためということが、著者の主張・説明の根幹となっています(44~48ページ、53ページ、54~55ページ、175ページ等)。
 門外漢の素人がこういうことを言うのは恐れ多いことかとは思うのですが、私が基本的に疑問に思うのは、他人の言葉を信用するかとか、思想的な態度・傾向というのは、遺伝するのか、あるいは周囲の言葉に対応する行動パターンや思想傾向は遺伝子に組み込まれている「生来的」なものなのかということです。それが肯定されるのであれば、生存に有利な行動パターンや思想傾向を持つ者が多く生き延びて生殖の機会を持ち人類の多くを占めるに至ったという説明が可能でしょう。しかし、それが遺伝しない、行動パターンや思想傾向は成長の過程で形成される、遺伝との関係でいえば「獲得形質」であれば、それが有利な環境が続いている間は生存に有利な集団内の文化・伝承により構成員が後天的に学ぶことで継承されても、人類の生存環境が大きく変化すればその傾向は継承されないはずで、「ミスマッチ」は生じない(生じても広範囲・一般的にはならない)はずです。「進化心理学」では、他人の言うことを信じる傾向や他人との協力関係を優先する傾向は遺伝する、遺伝子に組み込まれた生来的なものだと考えているのでしょうか。


石川幹人 ちくま新書 2022年5月10日発行
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