伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ダメおじさんでも目からウロコ インターネット情報検索

2006-12-07 08:47:02 | 実用書・ビジネス書
 初心者向けのインターネット情報検索の解説書。
 この種の本では、どうしても技術的なことや専門的なことを書きたくなって結局初心者には難しく思えることがありがちですが、この本では高級なことは書かずに大胆に初心者向けに絞って書かれています。その意味で日常的にインターネットを利用している人には新情報はありませんが、初歩のところだけ押さえたい人には読みやすいでしょう。
 著者が参加している情報サイト「All About」への誘導が何度かあるのがちょっと目につきますが。


阿部信行 講談社 2006年11月13日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セブンパワーズ

2006-12-06 08:08:56 | 物語・ファンタジー・SF
 闇の王ヌルに奪われた伝説の聖剣アルボールとハノ王子を取り戻すために若き騎士が「運命の地」での冒険に挑むお話。

 騎士の前に立ちはだかるのは「失敗への衝動/恐怖」を体現したドラゴン、うぬぼれの霊薬を抱く魔女、欲望の玉座・・・そして騎士を導くのは知恵者のフクロウや「目的の泉」の守護者ダーム、信じる気持ちを持つ者を救うオオワシら。繰り返し語られるのは、チャレンジの大切さ。セブンパワー=7つの力とは、勇気、責任、目的、謙虚さ、信じる気持ち、愛、協調・・・。
 童話の形式を踏んではいますが、どう見ても自己啓発セミナーのテキストですね、これ。
 最後のシーンで王が協調の大事さを教えるのに、1本の矢なら折れるが40本の矢は折れないというのは、どこかで聞いたような・・・


原題:Seven Powers
アレックス・ロビラ 訳:田内志文
ポプラ社 2006年11月11日発行 (原書も2006年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏の魔法

2006-12-05 08:15:28 | 小説
 老化が異常に進行する「早老症」に罹患し末期癌患者の22歳の老婆早坂夏希が、中2の夏を恋人と過ごした想い出の島で最後を迎えようと旅行したところ、そこでかつての恋人と相手が気づかぬままに再会し、気づかれないようにしながら一夏を過ごすという設定の小説。

 冒頭から滅多に見れない伝説のグリーン・フラッシュ(夕陽が沈む瞬間に緑色に輝く現象だそうです)が、当然予期できたかのように登場するのに象徴されるように、ちょっとできすぎの設定が続きます。それを気にせずに楽しめば、前半はそれなりに楽しく読めます。
 ただ、それでも夏希の心の揺れの振幅が大きすぎて、人物像の把握にとまどいました。菩薩のような穏やかさと、ときおり噴出する若い女性への激しい憎悪。とんでもない病気だからなあと思いつつ読むのですが、終盤で、いろいろな意味で夏希の独りよがりが露わになり、話も暗くなってしまいます。エンディングでは病気も吹っ飛んでいますし、これで終わられると、病気の設定の意味は何だったのとも思えます。
 前半・中盤で積み上げてきたものが、終盤からラストで崩れるというかうまくつながらない感じで、暗くなることもあり、読後感は今ひとつ。


北國浩二 東京創元社 2006年10月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公園

2006-12-04 07:58:39 | 小説
 公園を雑多な人々が雑多なことをする世界の縮図と捉え(16頁とか)、近くの公園からたぶん公園的なものとしてのニューヨークへ行き、居住地の歌舞伎町へと戻るぼくの過去と旅行(河出のコピーでは「終わりなき移動」、「冒険」だそうですが、私の感覚では、そうは書きにくい)の小説。
 ぼくは、すぐにめんどうだなあと思うけど、流れに任せて動くしわりと話し好きの学生。ぼくは、高校生の頃の想い出では友人のバックにヤクザがいてしかも2人を相手に数十人でやる自分は絶対安全なリンチには参加する卑怯な高校生、学生の今は足を洗って映画オタクになり下田で遭遇したヤクザが運転手をリンチする場面からは走って逃げつつ警察に電話するというようにスタンスを変えています。それでラストは歌舞伎町に帰ってきて、やっぱり公園(象徴としての公園)が好きって印象でまとめていて、今ひとつ過去と現在のつながりをぼくがどう捉え消化しているのか読み取りにくく思いました。
 場面もニューヨークは象徴としての公園なんでしょうけど、そこではただ白人と話をするくらいですし、下田への展開は狙いも見えませんし、行かなかったけど行きそうなところでチベットなんて出てくるのも、公園というテーマとのつながりが見えません。なんか、取って付けたように場所を移すことでストーリーが展開しているような効果を狙っているのかなと感じました。
 文章でも、冒頭の1文が「で、ぼくは公園にいる。」であるように、前後の脈絡なく「で、」で始まるパラグラフが度々登場します。「で、」っていうのは順接の接続詞でそれ以前の展開を受けて用いられる言葉と思っていたのですが、この作者には、単に場面を切り替える言葉のようです。この「で、」があるとそれまでの展開はなかったように忘れられていくような使われ方です。その結果、ストーリーもぶつ切りになってただのエピソードの羅列のように読めてしまいました。

 たまたま2006年の文藝賞(河出の新人文学賞)受賞作を連続して読みましたが、2作とも弁護士が登場した(ヘンリエッタの方は正確にはドラマで弁護士役を演じる俳優ですが)のは、若者(なんせ作者はヘンリエッタが高校生、公園が大学生ですからね)に印象がいい仕事だということなんでしょうね。


荻世いをら 河出書房新社 2006年11月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヘンリエッタ

2006-12-04 07:26:10 | 小説
 一方的に恋して恋した男の数だけ魚(金魚とか)を飼っている騒々しいみーさん、落ち着いているけど時々なぜか三輪車を盗んできたり子どもを拾ってくるあきえさんと一緒にあきえさんの家で暮らしている引きこもりの少女まなみが、3人で暮らすうちに少し外に出られるようになり前向きになる様子を日常生活の中で描いた小説。

 放浪癖のある父親と戻っておいでという母親のありがちな家族像と、あっけらかんとした女たちの微妙な距離感、牛乳配達の高校生を対比的に描いて、まなみに後者の居心地のよさを選ばせています。
 時代の雰囲気は、そうなんでしょうけど、なんだか最近はそういう話、小説以外でよく聞かされる感じがして、ちょっと食傷気味。

 家に「ヘンリエッタ」なんて名前をつけて、みんなが、「行ってきます、ヘンリエッタ」「ただいま、ヘンリエッタ」と挨拶しているのが、3人の生活に少し不思議な感覚を持たせています。また、それがなんとなくリズムを作っているような印象もあります。それを除くと引きこもりで幻視のあったまなみが立ち直っていく話を、日常生活のエピソードを交えながら少しほわっとさせたお話というところですね。


中山咲 河出書房新社 2006年11月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天と地の守り人 第1部

2006-12-03 13:43:41 | 物語・ファンタジー・SF
 「精霊の守り人」に始まる守り人シリーズの完結編と位置づけられた3部作の第1部。
 30代半ばとなった短槍使いの女用心棒バルサが、タルシュ帝国の侵略の危機を前に新ヨゴ皇国の危機を救うために隣国との同盟を求めて単身奔走する青年皇太子チャグムを追ってロタ王国内に潜入してチャグムの危機を助けつつ旅に同行するというストーリーです。
 これまでのシリーズが王家・政権内の諸グループの陰謀とそこに巻き込まれた皇族とさらに巻き込まれたバルサ(とその愛人のタンダや師匠のトロガイ)というような構図だったのですが、この作品では数カ国間の戦争とそれぞれの国の政権内の各グループの思惑が入り乱れ、より重層的な構造になっています。鎖国・籠城の戦争(迎撃)方針を固めた新ヨゴ皇国で防波堤役に徴兵される「草兵」たち(タンダも徴用されています)の姿も描かれ、戦争で犠牲になる庶民の様子も意識させています。全体として、シリーズの総決算という思いがあるのでしょう。かなり大きな構想で描かれている感じがします。
 主人公のバルサの強靱な肉体と精神力は相変わらずで、このシリーズの魅力はそこにあると私は感じていますが、同時にバルサももう30代半ばで次第に体の衰えを感じ、子供を産む体だとか腰を落ち着ける時期とか言われて少ししんみりとタンダのことを考えたりもしてしまいます(すぐにまた自分は用心棒稼業を辞めることはできないと考えるのですが)。このあたりのバルサの迷いにも、私は、作品の深みを感じています。若くて超人的な主人公ではなく、あえて30過ぎの女性を主人公にした以上は、強さと戦いだけでない人生のあり方を考えさせ・考えざるを得なくなります。作者がこの完結編でそれをどう描くのかも(もう原稿は書き終わっているようですが)見どころだと思います。
 第1部がバルサがチャグムと再会できたところまで書いているのは、読んでいてホッとします。3部作と決まっているわけですから、売りたい気持ちが前に出る作者・編集者だったらその直前で第1部を切る(例えば319頁で止める)なんてやり方だってあり得るわけです。それをしないのは作者の良心(自信かな)なんでしょうね。


上橋菜穂子 偕成社 2006年12月発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美の20世紀4 ミロ

2006-12-03 07:20:53 | 人文・社会科学系
 カタルーニャ生まれの抽象画家ジョアン・ミロの解説付き画集。

 抽象画家として知られるミロですが、抽象画を始める前の風景画も意外にいけますね。ヘミングウェイが買ったという「農園」(21頁)なんかわりと気に入りました。
 若い頃は極貧生活で、有名な「アルルカンのカーニバル」(15頁)のアイディアは飢えがもたらす妄想から着想したとか(35頁)。庶民の弁護士としては、親近感というか共感というか、同情してしまいます。スペイン内戦の際には共和政府支援のために絵を書いたりとかも。

 ミロの絵って抽象の中に喜びとより多くの哀しみを見やすいのですが、私は、意外に黒の使い方が巧みだなと感じます。「女の頭」(40頁)とか「古靴のある静物」(41頁)とかの黒が基調の作品はもちろん、全体が明るめの色調の絵でも黒が絵を引き締めているように感じます。


原題:Joan Miro
スーザン・タイラー・ヒッチコック 訳:鈴木勝雄
二玄社 2006年10月31日発行 (原書も2006年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夜遊の袖

2006-12-01 22:06:22 | 小説
 70歳近い信州出身で元国立博物館勤務で現在は京都で大学教授だけど売れない小説も書いている純一と幼なじみの芸妓まり子とその娘未緒が京都と過去の信州・東京で織りなす人間関係を中心とする小説。
 前半と最後で出てくる能と京都の風景・風俗の描写の雰囲気は、悪くなかったのですが。
 この主人公の設定が、まるっきり作者のプロフィールと一致していて、たぶん、自伝的作品なのでしょうけど、これが全編、自分は立派で正直で粋、他の男は皆無粋で傲慢と言い続けていて、とても見苦しい。
 しかも、敵と位置づけて貶めている大館の方が、私にははっきりと純一より器が大きく読めます。時々相談者が一方的に相手が悪いと言い続けているのにそれを聞いていてさえ相手の方がまともそうと思うときがありますが、そういう感じ。大館が悪者に見えるのは最後にまり子に手を出そうとしてまり子が嫌がるシーンが置かれていることによるのですが、それだってそれまでのまり子の態度とそぐわず、取って付けた感じ。
 この作品で登場する女性は、雅や侘びの雰囲気を出すためと、純一を慕わせ敬わせて純一が偉いという形を作るとともに他の男を嫌わせて貶めるためだけに存在するようです。まり子の態度もそうですし、未緒にしてもお話の前3分の1と後3分の1は未緒の視点から語られているにもかかわらず未緒の人物像や思想はほとんど見えません。純一への「父殺し」と「復讐」のために未緒は2度犯されるのに、怒りも悔しさも描かれません。ただ未緒の立場から純一を理解し、敬う心情が書き連ねられていきます。
 また、純一は父親を恨み続けますが、それも父親が脱走兵を追わせてその結果身の危険を生じたことが理由になっています。普通、そういう場合恨むのなら危害を加えた脱走兵でしょう。なんか、この人自分以外の権威ある人物を貶めたくてこじつける理由を探している感じがします。しかも、普通、父親との葛藤を描く小説は、成長した後どこかで父親を理解したり許すものですが、70近くなった純一がいまだに既に死んでいる父親を恨み続けているなんて、滑稽だし、かなり異常。作者はそういうふうに感じないんでしょうか。
 まあ、自分と同じプロフィールを設定して、それを慕う女の視点から純一は立派と語らせて恥ずかしく思わない感覚ですからね・・・純一の敵として貶めている宮脇を「自分なりの世盛りの錯覚を他人の是認の形で味わう仮構の舞台が欲しい。それを欲する資格は俺にもある筈だ」(233頁)なんて描いていますが、そのまま純一にこそ当てはまるように読めます。自己満足の色彩がかなり強い作品だと、私は思いました。
 なお、66頁に「名誉毀損は立派に傷害罪なのだ」とかいう法律的には意味不明の記載があります。言うまでもなく傷害罪は身体に傷を負わせる犯罪ですから、名誉毀損が傷害罪に当たることは概念上あり得ません。法律用語を使うのなら調べてから使って欲しいなあと思います。


吉野光 作品社 2006年10月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする