言葉足らずでした。

さて本日は引続き「官能美術史」の第3章「画家たちの愛」と第4章「かけひき」。第4章のかけひきの第3節「結婚のあるべき姿」と第4節「結婚の実体」は面白かった。特に第3節では、ピーテル・ブリューゲル(子)の有名な「農民の婚礼の踊り」から読み取れる、ヨーロッパ中世の農村の結婚の形態が興味深かった。
「主役の新郎新婦は画面中央にいる。‥画家の関心はすでにこのふたりを描くことには向けられていない。絵の主役たちは、結婚式にかこつけて踊りまわる農民たちである。‥画面右奥には、手に手をとって、いそいそと森の中に入っいく数組の男女がいる。性行為は当日の夜にさっそく行われる。‥もどかしくも甘い恋愛の手順や駆け引きはここにはない。ふたりは翌日から模擬的な結婚関係に入る。各ペアに与えられた期間はひと月。約一カ月の後、妊娠していれば正式に夫婦となるが、月経がくればペアは解消される。解消されたカップルは、次には違う相手とカップリングする。その方が妊娠確率が上がるからだ。なんとも即物的に思えるが、村全体で労働人口を増やすためには合理的な方法ではあるのだ。」
さらに高齢の男性と若い女性の「不釣り合いなカップル」についても、具体的な必然性に基づくものである点の説明、女性に課せられる「持参金」という習慣などの合理性なども、興味深く読んだ。
「女性側が持参金を用意する理由は明快である。当時の初婚年齢は、男性が30歳前後で‥女性は20歳に満たなかった。ギルドでの親方資格の‥せいで、男性はひとりだちするまでに年数がかかった。女性はひとりでも多くの子どもを産むことが求められた。初潮さえ来れば、女性ははやくも嫁入り準備が整ったことになる。そして生物学的には女性の方が寿命は長い。女性たちには長い寡婦生活が待っていた。持参金は収入を得る手段の無い女性たちの老後を支えるために、実家があらかじめもたせる年金だった」
「しかしヨーロッパでは長い間、ペストに次いで、女性の死因の第二位を産褥熱が占めていた。出産時に若くして世を去る妻たちはあとをたたなかった。遺された夫は、たいてい同じ年内に新しい妻を迎える。‥子を多くなすという目的のためだ。その妻がまた無くなると、三人目の妻を迎える。夫は年をとって行くが、新しく来る妻は皆16歳かそこらの年齢だ。‥一方で、資産金システムのせいで結婚できない娘たちがいる。当然ながら、それと同数の結婚できない男たちがいる。実際男性のおよそ4人に1人が独身のまま一生を終えていた。‥「不釣り合いなカップル」と呼ばれる主題が流行したのはこうした世相のためである。‥女性のほうは夫を愛しているわけではなく、経済的基盤として見ている‥。‥こうした風潮に対して警鐘を鳴らす真面目なモラル的動機がある。」
これらの指摘が正しいのか、今後も注目してみたい。
